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動画広告に最適な「尺」「デザイン」「メッセージ」他、ヒトクセ 宮崎 航氏が語る実践的ノウハウ

5/31(水) 8:33配信

ITmedia マーケティング

 2017年5月10~12日、東京ビッグサイトで「Web & デジタル マーケティング EXPO 春」が開催された。展示会と並行して開催されたセミナーでは、業界のトップランナーが最新の技術トレンドや事例などを紹介するセミナーが多数開催された。

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 ITmedia マーケティングでは、テクノロジーを駆使した広告領域で存在感を増すベンチャー企業、ヒトクセ 代表取締役社長CEO 宮崎 航氏のセッションに注目。「動画広告の効果的な活用方法」と題して語られた講演のポイントを紹介する。300案件以上の配信実績から得られたという実践的なノウハウをつかみ取ってほしい。

●動画広告市場はスマートフォンがけん引

 2016年に842億円とされた動画広告の市場規模は、2020年には3倍近い2309億円まで成長することが見込まれている(※)。2011年の東京大学在学中に起業して以来、スマートフォンアプリやWeb広告の分野において最前線を走り続ける宮崎氏も、動画広告市場の伸びを肌で感じているという。動画広告が注目を集める背景として宮崎氏は以下の5点を挙げた。


1. 配信環境の整備
2. 動画制作費の低下
3. テレビCMの補完的役割
4. ブランディングへの活用
5. 詳細なターゲティング

※サイバーエージェント オンラインビデオ総研とデジタルインファクトの調査より。

 1番目の配信環境の整備とはもちろん、スマートフォンの爆発的な普及と動画配信に耐えるだけの高速なモバイル通信網が整備されたことを指す。  

 次にコスト。テレビCMを制作し放映するとなると、数千万円から数億円の費用が当たり前のように発生する。一方、動画広告を制作したり配信したりするためにかかるコストは、テレビCMに比べれば概して安価だ。クラウドソーシングによるサービスを利用することもできるし、機材そのものも大掛かりなものを必要とせず、スマートフォン1つで撮影から編集まで済ませてしまうことさえできる。内容にもよるが、数十万円もあればコンテンツを用意することは十分に可能だ。

 また、既にテレビCMを打っているクライアントが同じ素材を使って補完的に動画広告を実施する事例も増えているという。

 ブランドの認知にも効果的だ。情報量が多くわかりやすい動画広告は、テレビCM同様に「低関心層」「潜在層」に効果的なアプローチとなる。

 そして何より、動画広告はターゲティングに優れている。リーチの大きいテレビCMは料金が高い割に、それがどのくらい効果があったか、具体的にどれだけ購買行動につながったかを測定するのは困難だ。片やインターネット動画広告配信の場合は、年齢や性別など属性を指定して配信でき、閲覧したユーザーの行動追跡や態度変容も確認できる。

●動画広告最適化に欠かせない視点とは

 動画広告にもさまざまなフォーマットがあり、商品特性やプロモーション方法によって最適な広告フォーマットを選ぶことが重要になってくる。

 例えば動画広告の代表的なフォーマットとして、YouTubeやVimeoなどの動画視聴サービスにおいて動画の前後や合間に再生される広告領域である「インストリーム広告」と、Webサイトのさまざまな場所に設置される「インバナー広告」ある。前者は認知効果が高く確実に視聴される一方で、配信枠が限られるためボリュームを見込めないという特徴がある。後者は広告枠が大量にあるため広くリーチが可能で高いクリック率も期待できる一方でインパクトに欠けるという短所もあるという。

 宮崎氏は、ヒトクセが手掛けて成果を上げた動画広告の改善事例を紹介し、それぞれのポイントを解説した。以下がその内容だ。

インパクトの最大化:短尺動画

 ヒトクセの調査によると、ユーザーがスマートフォンで動画を視聴してくれる時間は5.5秒と、思いの外短い。ちなみに静止画であるバナー広告だと2.7秒だという。動画広告というと、30秒や60秒といったテレビCMより長い時間のコンテンツを届けられることがメリットという印象があるが、実際には視聴されていない可能性も高いのだ。そこで、長い動画の中でインパクトのある部分だけを切り抜き、集約して5秒以下に再構成してアドネットワークで配信したところ、静止画と比較してCVRは2~3倍と大幅に上がったという。

 そうなると、長い動画のどこを切り出すかが課題になる。ヒトクセでは複数の広告素材を用意してA/Bテストを繰り返し、PDCAを回しながらクリエイティブの改善を図るようにしている。一方で、CTRについては、動画は静止画の8割ほどに下がる傾向にあるという。これは、動画がクリックできるということが認識されにくいことが原因と考えられる。分かりやすいアクションボタンを設置することも重要になってくる。

訴求メッセージの最適化:動画+メッセージ

 スマートフォンでは短尺動画が有効とはいえ、基となる長時間の動画が、その構成や権利の都合上、短く編集できない場合もある。こうしたケースで有効になるのが、動画広告にテキストでメッセージを付加することだ。ポイントは、訴求するメッセージを対象ユーザーにとって最適なものにすること。具体的には、検索ワードごとに表示するメッセージを変え、A/Bテストで効果を検証していく。動画再生枠の上部に訴求メッセージを表示し、下部には「購入はこちら」といったアクションボタンを設置する。ヒートマップを活用することで、メッセージ部分やアクションボタン、再生ボタンや音量ボタンなどユーザーがどんなアクションを取ったかも分かる。宮崎氏によると、スマートフォンでは右側がタップされやすいので、右側にアクションボタンを設置するのが有効だという。

デザインの最適化:ネイティブ動画

 ヒトクセでは、Webサイトのデザイン情報をシステム解析して、それぞれのWebサイトのデザインに最適化したネイティブアドを生成、配信するサービス「カメレオン」を提供している。カメレオンを導入し、Webサイトのデザインになじむ動画広告を配信したことで、自然に視聴してもらえメッセージ訴求も可能になる。その結果、CPVやCVCも低く抑えられる上、商品への理解が深まることからCVR向上が期待できる。また、Webサイトのデザインに動画広告が溶け込むことでユーザー負荷を軽減でき、広告が悪目立ちすることがない。適切なメディアを選択することで、ブランドの評価を守ることにもつながるだろう。

体験させる動画:360度動画

 新しい技術に敏感なネットユーザーに対しては、動画広告でも新しい手法を取り入れていくことが重要になる。その代表的なものが360度動画だ。これは、360度カメラで撮影した映像を広告として配信するもので、テーマパークや旅行業など体験型の業態で活用されている。再生時にはデバイスを傾けることで360度回転する。ある高級車のブランディング広告において15秒の360度動画をインバナーで配信した際、スマートフォンの回転率のデータを90度ごとに「広告の回転率」として計測してみたところ、90度回転時では静止画像と比べて10%以上、270度回転時でもの約5%多くデバイスが回転されていることが分かった。広告手法の進化に合わせて、こうした新しい効果測定指標を取り入れることも重要になってくる。

環境の変化に応じた配信:FIT AD

 雪が降っている、空気が乾燥している、花粉が多く飛散しているというような、天候や環境の変化に応じた配信タイミングの最適化も効果的だ。ヒトクセでは、ニュースキーワードや検索トレンド、テレビ番組情報、天候など生活者を取り巻くあらゆるアンビエント(環境)データを取り入れ、その環境に最適な動画広告を自動で出し分ける動画広告サービス「FIT AD」を提供している。このサービスを用いて、環境変化に応じた動画広告を配信したところ、視聴完了率や平均視聴時間、CTRといった視聴結果や広告効果の指標に改善が見られたという。商材に合わせて適切な環境要因を選択することは、広告効果を高めることにつながるというわけだ。

 「短時間の動画を活用してPDCAを回し、ターゲットに合わせて訴求メッセージを変えることが重要」。動画広告の最適化について、宮崎氏はこうまとめた。新しいフォーマットを積極的に活用し、データを有効に使って、必要に応じて新たな効果指標も定義する。こうした地道な試行錯誤が、ユーザーの興味を引き、アクションを促すことにつながるのだろう。