ここから本文です

「神宿る島」の甘夏はイノシシも好物? 潮風で味濃く、食害に苦悩する農家

5/31(水) 13:43配信

qBiz 西日本新聞経済電子版

 特産の甘夏が出荷の最盛期を迎えている福岡県宗像市の離島・大島で、イノシシがミカン畑に侵入し、枝ごとへし折って実を食べる被害が相次いでいる。潮風に育まれる島の甘夏は味が濃く、根強いファンが多いが「イノシシまでも好物にするとは…」。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産登録で注目が集まる島での、イノシシ騒動記-。

⇒沖ノ島の世界遺産一括登録目指す 政府、除外4資産も不可分

 大島は対馬暖流の影響で冬に霜がおりない温暖な気候で、ミカン栽培に適している。甘夏80本、蓬莱柑(ほうらいかん)20本の収穫に忙しい山口國一さん(68)は「潮風がミカンをうまくする。焼いた海藻やウニの殻を畑に入れたりもしている」と話す。甘いだけでなく、はっきりした酸味が大島甘夏の特徴で、島外から箱買いに訪れるファンも少なくない。

 熟した実を狙って招かれざる客も来る。カラスやヒヨドリ、中でも困りものがイノシシだ。畑を見せてもらうと皮だけ残して実をきれいに食べた跡があちこちにある。「落ちているものだけでなく、低い枝を折って実を食べていく。木が傷んでしまう」と山口さん。畑ののり面も踏み崩され、根がむき出しになっている。

 山口さん以外のミカン農家でも、柵を倒されたり出荷前の実を食べられる被害が大島では何年も続く。隣の地島には海を泳いで上陸するイノシシが確認されている。

■被害を逆手にブランド化?

 宗像市農業振興課によると、イノシシによる果樹などの被害額は年間約1300万円だが、これには崩された畑や柵の修繕費は含まれていない。市は電気柵の設置補助のほか、鳥獣が食べないレモンへの品種転換などを勧めるが、根本的解決には至らない。

 同市は市内各地で駆除したイノシシを精肉にして「むなっ猪(ちょ)」のブランド名で販売している。猟師によると大島のイノシシは甘夏効果なのか、味わいも脂の乗りもいいという。同市職員は「『甘夏イノシシ』などブランド化できないだろうか…」と腕を組む。

西日本新聞社