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海を渡って大手術 元捨て犬を介護しながら、共に生きる島人

5/31(水) 11:10配信

sippo

 愛犬が大ケガを負い、介護が必要になったとしたら、どうするだろうか……。犬猫専門の病院がない島で事故に遭い「安楽死」を迫られた元捨て犬と、“共に生きる”道を選んだ飼い主の生き様が、一冊のノンフィクションになった。愛犬の名は「ラッキー」。筆者の心をゆさぶった島人と犬の物語とは――。

【写真特集】車いす犬ラッキー

 舞台は、九州の南の海に浮かぶ鹿児島県の徳之島。奄美群島の島の一つで、人口は約2万6000人。周囲約84キロのサンゴ礁の海に浮かぶ。名物は大島紬、島唄、黒糖焼酎、ハブ、闘牛……ここに住む4歳の雑種犬のラッキー(オス)は、毎朝、飼い主の島田須尚さん(67歳)と軽トラックで漁港に出向く。島田さんが海辺でゴミを拾う間、ラッキーは散歩をするのだが、速足で歩くたび、ガラガラと音が鳴る。車いすをつけているからだ。

 本書「車いす犬ラッキー」(毎日新聞出版)の著者で、大宅賞作家の小林照幸さんが、初めてその犬の姿を見たのは2年前のことだ。

「大学在学中にハブの疫学調査をしたり、島の伝統文化である闘牛に興味をもって本を書いたり、縁があって今も徳之島通いを続けています。2015年の5月5日、東京に戻るため空港に向かう道すがら、車いすの犬を見かけたのです」

 一瞬見えた犬の姿が目に焼き付いた。「ハブに咬まれた後遺症か?」と思ったという。半年後、再び徳之島を訪れた時、車いすの犬をまた目撃し、島の友人に「あの犬は?」と尋ねた。ハブではなく、事故で後ろ足が麻痺したと聞いた。

「島の人々には知られた犬で、電器店を営む飼い主の島田さん所へ連れていってくれました。足元で走り回るラッキーを見て心が動き、さらに、島田さんから事故の様子や介護について聞き、胸に迫るものがありました。抱き起こして排泄をさせ、体や寝具が汚れたらその都度洗う。それをほぼつきっきりでされているのです」

 小林さんはかつて、「飼うのに飽きた」とか「引っ越し先がペット不可」などの理由で、飼い主が健康な犬や猫を手放し、保健所や動物愛護センターなどで殺処分される現場を取材し、本にまとめた経験もある。病気やケガや老いにより「介護」が必要になった犬や猫の安楽死を飼い主が希望する現実も、その時に知ったという。

「2003年には1年間に全国で犬猫合わせて40万匹以上が殺処分されていました。2013年には全国の犬猫の殺処分は約3分の1まで減りましたが、まだまだ多い。ペット大国ニッポンの一面という現実を考えさせられてきただけに、捨て犬という生い立ちであっても愛情を存分に注がれているラッキーと、寄り添って世話をする島田さんの姿に感銘を覚え、本を書きたいと思ったのです」

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最終更新:5/31(水) 11:10
sippo