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治療にメリットも…陽子線がん治療施設の利用低迷

5/31(水) 17:43配信

福井新聞ONLINE

 福井県立病院陽子線がん治療センター(福井市)を2016年度に利用した患者数は123人と15年度から5人減り、2年連続で前年度実績を下回った。公的保険の適用対象が小児がんしかなく、医療費負担が高額になるのが主な要因。県は保険適用の対象拡大を国に働き掛けるのと同時に、体を切らずに治療できるメリットを北陸3県や中国でPRして利用を呼び掛ける。

 同センターは11年3月に開設した。県地域医療課などによると、当時は全てのがんが公的保険の適用外だったが、利用者数は順調に推移し、14年度には187人とピークに達した。だが15年度は128人と初めて前年割れ。16年度は小児がんが保険適用となり、200人の利用を目標に掲げたものの一層落ち込んだ。

 同課は「全国の類似施設も同様の傾向にある」と指摘する。同センター以外の陽子線を含む粒子線治療施設15施設を調査した結果、回答のあった5施設と同センターの6施設全体で16年度利用者が15年度に比べて13%減った。この要因について、同課は「保険適用のエックス線治療の技術が向上したことが大きいのではないか」と分析する。

 陽子線はエックス線に比べ、正常な組織を避けて患部にピンポイントで照射できる。ただ、近年はエックス線でも徐々に高精度な照射が可能になってきたという。同課は、効果は陽子線治療に及ばないものの、治療費が安いため、エックス線治療に利用者が流れているとみる。

 対策として、同課は「陽子線治療の保険適用の対象を広げたい」と強調。小児がんに続き、症例が多く治療実績がある前立腺がんや肝がん、肺がんについて、18年度の診療報酬改定に合わせて保険適用の対象とするよう国などに働き掛けている。16日には、全国自治体病院開設者協議会長を務める西川一誠知事が、厚生労働省などに要望した。

 17年度の利用者数目標は150人。「日本海側唯一の陽子線がん治療施設として、センターの認知度を高めて達成に努めたい」と同課。講演会などで、県内のほか石川県や富山県からの利用者の掘り起こしを図る。さらに、中国・浙江省から県立病院に受け入れていた医師らを通じ「中国からの利用を働き掛ける」とする。これまで海外からの利用実績はないが「中国は人口規模が大きいのに、陽子線治療施設は数カ所しかない。利用は見込めると思う」として可能性を探っていく。

 ■陽子線がん治療 

 陽子線を照射し、がん細胞を破壊する方法。陽子線は放射線のうち、水素の原子核を利用して得られる「粒子線」の一種で、体を切らずに治療できるために痛みや副作用はほとんどない。県立病院陽子線がん治療センターの治療費は照射21~25回で250万円で、小児がん以外は公的医療保険の対象外。

福井新聞社