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妻の老後不安「夫の先立ち」で年金はいくら減る?

6/1(木) 17:20配信

ZUU online

50代に入ると老後の生活が現実味を帯びてきて、毎年誕生月に送られて来る「ねんきん定期便」の受給額変化が気になりはじめる。また、この年代の女性は、夫の扶養範囲を意識して働いている人が多いため、自身の老齢厚生年金がないか、少額となってしまっている。

厚生労働省が発表する夫婦2人(夫、厚生年金40年加入・平均年収480万円、妻、専業主婦・40年間国民年金納付済)世帯の年金モデルケースでは、65歳以降世帯合計月額22万円となっており、何とか最低限の生活はしていける金額ではある。しかし、もしも夫が先だってしまったら、妻は年金だけで暮らしていけるのだろうか?

■2種類の遺族年金 遺族基礎年金と遺族厚生年金の違いとは?

遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類がある。

遺族基礎年金を受給できるのは、「子」または「子のいる妻」(この場合の「子」とは、原則18歳の年度が終わるまでなので、高校生までの子をいう)に限られているため、成人した子どものみの妻の場合には受給資格はない。

一方、遺族厚生年金の受給資格者には配偶者が第一順位となっており、妻が受給資格者の場合年齢は制限がないため、子がいなくても妻は遺族厚生年金を受給する資格がある。遺族厚生年金の金額は、夫が受給していた年金額の4分の3となっている。

■妻の遺族年金額はいくらか?

以下の夫婦のモデルケースを元にみていこう。

老齢年金:世帯合計月額25万円
夫:67歳 22歳~62歳厚生年金加入 老齢年金月額18万5000円
妻:65歳 20歳~60歳国民年金加入 老齢年金月額6万5000円
※子どもは成人しており、結婚して別居している

夫の年金の4分の3が妻の年金に上乗せされるとすると、

夫の年金月額「18万5000円×4分の3=13万8750円」が遺族年金となり、自分の老齢年金月額「6万5000円」と合計して、月々20万円以上の年金が受給できると考えている人が非常に多いが、これは間違っている。

先ほども書いたように、この妻が受給できるのは遺族厚生年金である。遺族基礎年金は受給できない。対象となるのは夫の老齢厚生年金部分のみで、夫の老齢基礎年金部分は対象とはならないのだ。

具体的に、夫の老齢年金を基礎年金と厚生年金に分けて考える。
夫の老齢厚生年金は12万円で、遺族厚生年金はその4分の3であるから9万円となり、夫がもらっていた老齢年金合計の4分の3ではなく、半分以下になってしまう。

つまり、残された妻は自分の老齢年金と併せて、15万5000円で生活をしていかなければならないということになる。

■65歳以上単身の支出は月約15万円

自分の世帯の家計支出はいくらかをわかっているだろうか?

総務省家計調査から、65歳以上単身女性の平均支出合計が約15万円なので、一般的にはなんとか生活だけはしていけるのかもしれない。しかし、一人身となった不安と大幅な収入の減少から、精神的に大きなダメージを受けてしまうだろう。

■「自分名義の老後資金」を確保しておく必要

そこで筆者が提案したいのが、「自分名義の年金」の確保だ。

配偶者の死亡だけでなく、離婚ということも考えれば、早くから準備しておくに越したことはない。被扶養配偶者(第3号被保険者)として、自分名義の年金を用意できる方法を以下に示そう。

1. 個人型確定拠出年金(iDeCo)
2017年1月から専業主婦(夫)も加入できるようになった。掛金の所得税・住民税の控除を世帯としては受けることができないが、運用益に対して税金がかからない上に、60歳以降の受給時には、一時金受給部分は退職金として退職所得控除を、年金として受け取るなら雑所得として公的年金等控除の対象となる。

拠出は60歳までとなっているため、50代から始めると積み立てる期間は短くなるが、自分の老後資金の確保という点では有効な方法だ。

専業主婦の妻の分を夫が出すことになると考えられるが、年間110万円までは贈与税が非課税のため、 110万円に達するまでの期間分は暦年贈与として非課税枠が活用できる。

2. 個人年金保険

民間の生命保険会社などの商品で、契約者を妻とし、実際の保険料の支払いは夫、年金受取人は妻とする。

所定の要件を満たせば支払保険料は夫の所得税・住民税の生命保険料控除の対象となる。個人年金も50代からの加入となると、期間は短くなってしまうが、妻の私的年金を増やすことができ、世帯の節税効果も考えると選択したい手段だ。

■年金繋がりで……離婚した場合の年金分割「3号分割」

離婚した場合請求によって、婚姻期間中(平成20年4月1日以降)の夫の厚生年金部分の2分の1を、第3号被保険者期間であった妻に分割させるものである。夫婦での合意は必要なく、第3号被保険者からだけの請求で認められ、第3号被保険者の老齢厚生年金が分割された分増加する。

離婚後2年以内に請求しなければならないことと、請求月の翌月分からとなるので、すでに年金受給中なら少しでも早く手続きすることだ。

まずは、現状を知ることから始めたい。遺族年金の金額を知るには妻の年金額と夫の年金額、そしてその内訳を理解する必要がある。夫の年金額は夫本人の承諾がなければ知ることはできない。年金事務所に相談に行くときには夫の委任状が必要となるので注意したい。

不足の事態を考えて備えておくことが、将来の安心に繋がることは間違いない。早くからの準備が何よりも重要なのである。

小野みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー・年金マスター
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社勤務を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆、家計・年金・労務相談などを中心に活躍中。FP Cafe登録パートナー(https://fpcafe.jp/)

最終更新:6/1(木) 17:20
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