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平野美宇“改造計画”の全貌 卓球最年少王者のコーチに聞く

6/1(木) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 アジア王者として、29日にドイツ・デュッセルドルフで開幕した世界卓球に臨む、日本の平野美宇(17)。今年1月の全日本卓球を史上最年少で制覇すると、続く4月のアジア選手権では日本人として21年ぶりの頂点に立った。15年10月から平野を指導するようになった中澤鋭コーチ(38)の存在なくしては語れない平野の躍進。コーチに具体的な指導法を聞いた。

「中国のトップ選手に勝って東京五輪で金メダルを取る」

 この目標を実現するべく、平野を「攻め」のプレースタイルへと大きく転換させた中澤氏。そのためにまず、重心の入り方に着目したという。

「フォーム自体は変えていません。変えたのは力を入れる順番。重心を移動させる流れですね。まず足から入って腰に連動させ、それを手に伝えて最大のパワーを出せるように改善しました。これまでどちらかというと威力がなかった。そのままでは中国の強い選手には勝てない。平野が高速ラリーができるようになったのも、足の重心の乗り方と使い方を優先に考えさせるようにしたから。卓球はスピードが速い。人間の体は、最も器用な手が最初に反応してしまう。そうなると、どうしても足への意識がゆるくなってしまう。すべてのパワーは足から上に伝わっていく。腰のひねりも足があるからこそできる。どんなプレーでも常に足に重心を意識してからプレーするようにさせました。そうしたら、バランスも取りやすくなって連続で得点できるようになった」

 重心を低くすることで力の爆発力が増す。そのために、足を鍛える練習メニューを増やした。

「主にフットワークの練習を増やしたんですが、(自分が教える)前もやってはいました。ただ、しっかりと全力でやっていなかった。フットワークは練習の中でたぶん一番疲れる練習。10分間もやればヘトヘトになります。でも、最初の頃は10分、15分経っても顔色が変わらない。ちょっと、おかしいなと思ったんです。全力でやっていなかった。(前後の動きやフォアとバックの動きなど)全部をちゃんと重心を乗せてから100%を出して、全力を出して15分間やるようにと注意しました」

■中国トップ選手と日本選手の違い

 中澤コーチが日本に来たのは15年前。1年半前から平野の担当になって驚いたのは、中国のトップ選手と比べて練習の時間が長いことだった。

「平野は(全体メニューの)練習が終わった後、必ず僕のところへ来て『一緒にやろう』と言ってくる。熱心で良いことだけど、逆に考えると、とりあえず時間だけ長くやって、『たくさんやった』という充実感を得るだけという側面もあります。中国に帰って、中国人と日本人の練習の違いを見ると、中国の選手は時間は短いけど質が非常に高い。今の平野は確かに中国選手に近づいている。試合に勝つと『私って中国人じゃないですか』と自慢していましたから(笑い)」

 すでに中国の強豪選手たちからマークされている平野。相手の対策に対応していくには、いろいろなタイプの選手と対戦する経験が必要になる。18年秋に始動する、プロアマ混合卓球リーグ「Tリーグ」への参戦もそのひとつだという。

「Tリーグは出たいですね。アマ混合でもレベルは高いですから。いろんな戦型(ドライブ型、カット型、前陣速攻型など)の選手と対戦するのが彼女にとってもプラスになる。五輪が近くなれば、どうしても国際大会を優先することもあるけど、それ以外であれば国内にも出たいので、たくさん経験を積んでもらいたい」

▽なかざわ・るい 1978年、中国出身。24歳まで河北省のチームで卓球選手としてプレー。現役引退後に来日し、2008年に日本国籍を取得。「ミキハウス」のコーチに就任し、石川佳純を6年間、平野早矢香を1年半指導。15年4月から日本卓球協会に所属し、「JOCエリートアカデミー」のコーチに。現在は女子監督を務める。