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なぜ広まらない? 手で腰痛を治す「AKA-博田法」のいま

6/1(木) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 注射も手術も不要の腰痛治療として開発された「AKA(関節運動学的アプローチ)-博田法」。指の一部で仙腸関節のひっかかりやねじれ、拘縮などの機能異常を正し、腰痛やその関連痛である肩凝りや首の痛みなどを解消する。10年ほど前までは盛んにメディアに登場した画期的な徒手療法だが、最近はとんと聞かなくなった。「仙腸関節を1ミリ動かせば、腰痛は消える」(光文社)の著者で、「岡田理学クリニック」(横浜市青葉区)の岡田征彦院長に理由を聞いた。

 整形外科の教科書には、腰痛や座骨神経痛は「椎間板ヘルニアが神経を圧迫することで起きる」と書いてある。しかし、椎間板ヘルニアが原因の痛みやしびれはマレ。最新の画像装置で椎間板ヘルニアが確認されても、50%の人は症状がない。これは国内外の複数の医学論文が報告している事実だ。

「しかも、腰痛の85%は原因不明なのです。それなのに、画像資料を眺めながら対症療法として投薬や外科手術などの治療が行われているのが現状です。一方、AKA法を開発した博田節夫先生は腰痛の原因を明言しています。その多くは、脊椎の一番下の骨である仙骨と、骨盤を構成する骨のひとつである腸骨をつなぐ仙腸関節の異常です。仙腸関節はビルの免震構造と同じで、脊椎の根元にあって数ミリ動くことで脊椎の負担を軽減します。これが何かの拍子に列車の車輪がレールから外れたような状態になり、痛みが出るというのです」

 同様な見解は海外の研究論文でも報告されている。ぎっくり腰や出産後の腰痛が、痛みの受容体が多い仙腸関節の障害で起きることもわかっている。

 その理論に基づいたAKA-博田法の効果は抜群で、手術や薬で治らなかった慢性腰痛や急性腰痛が、仙腸関節を軽く引っ張ったり滑らしたりするだけですぐに完治する例が続出しているという。

■資格試験は医師ですら合格困難

「AKA-博田法」が解消するのは腰痛だけではない。関連痛も抑えることができる。

「関連痛とは病気の原因部位とかけ離れたところに表れる痛みをいい、仙腸関節からの関連痛は下肢や肩や首などの痛みやしびれとして表れることがあります。腰痛はなくてもこういう症状がある人は、この治療法で症状が解消したり、改善することがあります」

 最近では、AKA-博田法の理論と治療法を学ぶ大学病院の整形外科チームも複数あるという。

 実はこの「仙腸関節に“遊び”がなくなることが腰痛の原因」という主張が、この手法が広まらない原因のひとつだという。

「整形外科医は仙腸関節は絶対に動かない、重機を持ってしても動かない、と教わっていますから、腰痛の仙腸関節説が認められないのです」

 仙腸関節は、今の整形外科医が頼る画像診断装置では見えにくいことも理由だ。

「徒手治療法に対する整形外科医の無理解・無関心、抵抗感も普及の妨げになっています。彼らは“徒手療法は科学的でない”と思い込んでいるのです。そもそもAKAの基本である関節運動学の講義が日本で行われておらず、仙腸関節自体が馴染みのない関節なのです」

 患者側の受け止め方にも問題がある。整体や整骨など強い徒手療法に慣れている患者にとって、腰をさするようなこの治療法は物足りないかもしれない。

「この治療法の効果は、『医師が患者に触ることによるプラセボ効果で気分的な問題ではないか』と言う人もいますが、施術後に足上げなど運動機能が回復しているので、関節機能が改善しているのは間違いありません」

 しかし、治療法が広まらない最大の理由はAKA-博田法を正式に標榜できるのは、「日本AKA博田法医学会」が正式に認定した医師らに限られていることだ。

「合格のハードルがとにかく高いのです。過去6年間で90人以上が受験し、合格者はわずか5人。徒手療法は公的保険の対象でないため、苦労して技術を習得しても金銭的メリットはない。ならば、初めからやらないか、途中でやめてしまう医師も多いのです」

 かつては医者以外にも治療法を学ぶ機会を設け、研修を受けてもらったこともあったが、認可も受けていないのに勝手に「AKA-博田療法」の看板を掲げる人が続出。受験資格は今、医師と理学療法士、作業療法士のみになった。

 岡田院長は日本整形外科学会認定専門医として長年、治療に携わってきた腰痛治療のプロ。そのプロが最後にたどり着いた腰痛治療がこの治療法だという。肉体的にも金銭的にも“痛みの少ない”こんな治療法があることは、知っておいた方がいい。