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佐藤浩市と父・三國から受け継がれる無言の“会話“出演「花戦さ」3日公開

6/2(金) 11:03配信

スポーツ報知

 俳優・佐藤浩市(56)が千利休役で出演している映画「花戦さ」(篠原哲雄監督)が3日、公開される。今作に出るにあたり、佐藤を突き動かした2つの大きな理由があったという。37年目に入った俳優生活。3月には息子が寛一郎(20)の芸名で俳優デビューすることも発表されたが、名実ともに邦画界を牽引する立場にあるいま、新たな思いを抱えている。

 取材前、どのタイミングで親子の話を聞くか正直、悩んでいた。佐藤が千利休役、と聞けば、父の三國連太郎さん(享年90)の「利休」(89年、勅使河原宏監督)を思い出す人は多い。カンの鋭い佐藤は記者の迷いを見透かしたように、自ら切り出した。

 「僕は三國の『利休』を見ていなかったんですよ。だから違うものができるかな、と。ただ、撮影中に、京都にあった大映撮影所の現場を訪ねています。三國は、ちょうど朝顔を切るシーンでした」。秀吉に一輪の朝顔の美しさを伝えるため、咲いていた多くの朝顔を摘み取って迎える名場面。実際、佐藤はこれまで見せたことのないような味わいある“枯れ方”に挑んでいる。

 秀吉が、政治の天下人なら利休は芸術面での天下人。対照的な2人。最後は秀吉に自害を命じられる。「利休は茶の道だけを考えたが故に、秀吉の人格を置いてきぼりにした後悔がある。そう解釈しています」。同時に「人間誰にも起こり得る部分もあるんじゃないですか。その道を研さんするほど人を上から見たり変にトガったり。見誤ってしまうことが」。

 茶道の作法にも徹底してこだわった。「『あれは吹き替え?』と思ってもらえれば大成功。利休がそこにいる、流れるような動きを出す上で、違和感を出したくなかったですからね」。

 佐藤を今作に向かわせたもうひとつの理由は、時代劇再考のためだ。狂言の野村萬斎(51)、歌舞伎の市川猿之助(41)との共演を通し、その思いはより強くなった。「伝統芸能のお二人が生き生きとおもしろそうにやっておられた。本来、僕らがもっと大事に残そうとしてこなくてはならなかったものなのに」。

 時代劇のおもしろさに目覚めたのは40歳。「それまでは従来のやり方を打ち破り、いかに新しいものを見せられるかに重点があった。時代劇は小さな知識ひとつで芝居がガラリと変わることも多い。自分の体験や知っていることを伝えていきたい」。名実ともに、邦画界を引っ張っていく立場だけに、考えることは増えていきそうだ。

 息子の寛一郎9月デビュー

 この春には息子の寛一郎が映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(廣木隆一監督、9月公開)で俳優デビューすることが発表。親子3代で同じ道を歩むことが話題になった。

 「まだ彼の芝居をまったく見てないのでね。カメラの前で一体どんな立ち居振る舞いをしているのか。実際問題、見るのがこわいんですよ」と父親の顔をのぞかせる。

 三國と佐藤、佐藤と寛一郎。時代も映画界も、親子関係もずいぶん異なる。が、しっかり受け継がれてきたことがある。それは幼いころから自分の撮影現場を見せるようにしてきたこと。「花戦さ」の出演決意の背景に父の“朝顔シーン”見学の記憶が、色あせず残っているように。

 「(顔の知られた)父親が一体何者なのか。何をしようとしているのかを確認すること。(役によって)世間が何か言われたとしても考えられるのでは」といい、「家で始終、ソファに横になって酒飲んでるだけでないオヤジを知る場。彼の将来にどう生きるかは分かりませんが」と語った。

 ワンポイント

 出てくるすべてのいけばな作品の製作・監修をしたのが華道家元池坊。花に詳しくなくても思わず見入ってしまう。中でも岐阜城の大座敷で専好が織田信長に献上する大砂物「昇龍の松」は迫力十分。高さ3メートル、幅4・5メートルで10人がかりで2週間かけて完成した。

 利休に苦しい胸の内を打ち明け、落ち着きを取り戻したときに専好がいける“一輪のカキツバタ”など役者の芝居同様、花で描かれる世界も見逃せない。

 ◆佐藤 浩市(さとう・こういち)1960年12月10日、東京都生まれ。56歳。80年NHK「続・続事件 月の景色」で俳優デビュー。81年映画デビュー作「青春の門」でブルーリボン新人賞。02年「KT」他でブルーリボン主演男優賞。16年「起終点駅 ターミナル」「愛を積むひと」で報知映画賞主演男優賞。「64―ロクヨン―」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞するなど代表作は多い。

最終更新:6/2(金) 22:33
スポーツ報知