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工事中に作業員が転落死、自宅が「事故物件」に…会社に賠償を求めることは可能?

6/1(木) 9:41配信

弁護士ドットコム

北海道千歳市で4月、住宅の屋根を塗装中の作業員男性(26)が転落。頭などを強く打ち、死亡する事故があった。

北海道文化放送によると、男性はヘルメットや命綱を装着せず、ハシゴを使って1人で作業していたという。ネットではこの事故について、住人に同情する声もあがっている。自宅が「事故物件」になってしまったからだ。

一般論として、住宅の工事などで死者が出た場合、従業員の所属先には責任が生じるのだろうか。また、事故物件になったことを理由に、住人が何らかの請求をすることはできるのだろうか。鈴木軌士弁護士に聞いた。

●会社の安全配慮義務への要求はかなり高い

ーーヘルメットなどの未装着で、会社が責任を負うことはある?

従業員の所属先が負う安全配慮義務については、少なくとも「命綱」や「ヘルメット」の着用を各作業員に義務付け、規律などにより使用法を周知・徹底させる、という内容は最低限求められます。

「規律」は作っておくだけでは足りず、例えば毎朝や休憩後には、必ず着用を実際に「点呼」で確認させるなど、個別具体的な(安全に対する)「配慮」義務まで負われていると考えられるのが通常です。

たとえば、作業員がうっかり着用を失念した末の事故だった場合でも、このような「失念」を招く可能性があり得たこと自体について、安全配慮義務違反を問われる可能性が高いです。遺族は違反を理由に、会社に損害賠償などを求めることもできます。

ーー従業員が面倒臭がって、着用していなかった場合は?

会社側に安全配慮義務があるという前提で、作業員側の「過失相殺」の問題として、認定される「賠償額」が過失割合分だけ減額されるというのが最もあり得る考え方と思われます。

●事故物件化したことは?

ーー今回のような場合でも事故物件と言える?

物理的な意味では直接の瑕疵(=欠陥)はありませんが、敷地内で人が不慮の事故で亡くなった場合、現実の不動産取引にあたっては不動産価格の形成、賃貸物件なら契約当事者の契約継続の意思などに大きな影響を与える可能性があります。

いわゆる「心理的瑕疵」として、建物のオーナーなら売却の際の値落ち分や、賃料の差額分などの損害賠償請求が認められ得ます。賃貸の住人の場合は、契約解除が認められる可能性がありますが、金銭面では10~100万円程度の慰謝料請求が可能となるのがせいぜいではないかと思われます。

ーー損害賠償や慰謝料が認められた場合、誰が支払うことになるの?

通常は事故物件にした人、つまり亡くなった人(の遺族)になると考えられます。従業員本人の落ち度(過失)が著しい場合には、損害賠償請求が認められる可能性が十分あるからです。この場合、従業員の「遺族」は、相続放棄をしない限り、責任を負うことになります。

会社が従業員に対する「安全配慮義務」の履行を怠った結果、発生した事故であることが明らかな場合、義務違反と損害との間の「相当因果関係」が認められれば、大家や住人に対する会社の損害賠償責任が肯定される可能性はあり得ます。

しかし、従業員の死に対する会社の責任は直接的ですが、事故物件化したことに対する会社の責任は間接的と言えます。相当因果関係が認められるかは非常に微妙です。むしろ通常は、損害賠償請求が難しいと判断される場合が多くなるものと思われます。

【取材協力弁護士】
鈴木 軌士(すずき・のりし)弁護士
専門は不動産だが、不動産等が関係する相続や離婚等も得意としており、扱い事件等も多い。「依頼者の心からの満足」を業務目標として掲げているため、金銭的に解決することはもちろん、メンタル面でのフォローにも最大限努めている。
事務所名:弁護士法人タウン&シティ法律事務所
事務所URL:http://www.townandcitylawoffice.com/

弁護士ドットコムニュース編集部

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