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不調だった香川真司が日本代表メンバーに選ばれた理由

6/1(木) 7:01配信

AbemaTIMES

 動かない方が良い場合もある。5月25日、日本サッカー協会は、キリンチャレンジカップ2017のシリア戦(6月7日)及び、2018FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選のイラク戦(同13日)に向けて、日本代表メンバー25名を発表した。

 ブルガリアのベロエ・スタラ・ザゴラでプレーする“謎の新参者”加藤恒平が初選出され、カンプ・ノウでFCバルセロナから2ゴールを奪ったエイバル所属MF乾貴士も復帰した。他にもGK中村航輔、DF宇賀神友弥、DF三浦弦太らフレッシュな顔ぶれが目立った今回の選考。現在グループBで首位に立っていることで、日本代表監督ヴァイッド・ハリルホジッチ氏にも、どこか余裕が生まれているのかもしれない。

 そんなサプライズに周囲が目を見張る中、ボルシア・ドルトムントに所属する香川真司も、順当にメンバーに名を連ねた。今回の2連戦に香川が選ばれたことを“順当”と言い切って、異論を挟む余地はないだろう。

 ブンデスリーガが佳境を迎える中、5月6日のホッフェンハイム戦では80分からの途中出場となったが、13日のアウクスブルク戦、20日のブレーメン戦では先発の座を確保する。それだけでなく2戦ともフル出場し、それぞれの試合でアシストを記録。今季最後のリーグ2試合で結果を残し、充実している香川。後は今シーズン最後の公式戦、27日のドイツカップ決勝アイントラハト・フランクフルト戦を残すだけだ。相手との力関係を考えれば、マンチェスターから帰還して初のタイトルは、ほぼ間違いないだろう。

 昨秋には、所属先のドルトムントでもアジア最終予選サウジアラビア戦でも先発の座を失った香川。ハリルホジッチ氏も「先発を獲るか、獲れるクラブに行くように」と“忠告”したが、輝きを失っていた日本代表の10番は、ドルトムントで「先発を獲る」ことを選んだ。冬の移籍市場では動かず、クラブのスペイン合宿に参加。黄色のユニフォームに袖を通したまま、右足首の治療を続けながら、ブンデスリーガの後半戦を戦い始めた。

 あくまで香川の場合だが、現状を見て分かるように、結果的に「動かないこと」が正解だったということになる。もちろん動こうにも、理想にぴったりの新天地が良いタイミングで現れるとは限らない。出場機会を確約し、移籍金と年棒を支払ってくれるクラブが、欧州でそう簡単に見つかるはずもない。仮に先方の監督が獲得を熱望したとしても、その後の監督交代や新戦力の獲得などで状況が一変してしまうことは、香川もマンチェスターで経験済みである。とにかくフットボールの世界に“保証”の2文字は存在しないのだ。

 もちろんこの世界で“転社”は当たり前なので、出場機会になかなか恵まれない選手が、レンタルも含め移籍を志願することは珍しいことではない。しかしそうした決断が成功に繋がるかどうかは、また別の問題である。やはり移籍は“水物”なのだ。監督の志向するサッカーやライバルの存在、国や街も含めたクラブの環境など、様々な要素を考慮に入れた上で、より成功確率の高い方を選び、人知を尽くして天命を待つ。その選手に圧倒的な地力があれば別かもしれないが、それでも怪我のリスクは、リオネル・メッシにもクリスティアーノ・ロナウドにも付いて回る。

 こうした移籍の一連の流れを“運”と言ってしまえばそれまでだが、その意味ではここに来て追い風が吹いている香川。シリア戦は日本代表に合流したばかりでベンチスタートかもしれない。しかしイラク戦では、ドイツカップのタイトルを手土産に、先発を飾って勝利に貢献したいところだ。

文・大友壮一郎

最終更新:6/1(木) 7:01
AbemaTIMES