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米、パリ協定脱退 知っておきたい5つのこと

6/1(木) 16:26配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 ドナルド・トランプ米大統領は1日、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から米国が離脱することを明らかにした。

 パリ協定が崩壊すれば長期的には環境に壊滅的な影響が生じると環境活動家たちは警告する。一方で削減目標に反対する勢力は協定から脱退し、CO2排出に関する規制を撤廃することで、米国は今後数十年にわたり数百億ドル規模のエネルギーコストを削減できると主張している。

 米政府がパリ協定から脱退した場合の影響を、以下に5つまとめた。

トランプ氏の支持層は熱烈に歓迎か

 トランプ氏は、パリ協定と同じくバラク・オバマ前政権時代に結ばれた 環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を決め、北米自由貿易協定(NAFTA)から撤退することも検討している。国を縛り付ける国際的な決め事から抜けることができれば、トランプ氏を支持する層からは熱烈な歓迎を受けるだろう。その中には米国が単独で繁栄できるとする「経済ナショナリズム」を掲げる勢力も含まれる。また環境保護の交渉を主導する国連のような国際組織に対し、懐疑的な意見を持つ保守層や労働階級の有権者からも支持されるはずだ。ドラマチックな形でパリ協定から脱退すれば、国内問題で政治的圧力を受けているトランプ氏から有権者の注意をそらす効果もある上、脱退しても短期的に経済面で生じる大きな影響はそう多くない。

国内世論との距離は拡大

 意見が割れている共和党内の保守派を除き、地球温暖化はCO2排出が引き起こしているとする科学的コンセンサスは米国民にも広く受け入れられるようになってきた。11月に実施された調査によると、登録済み有権者の10人中ほぼ7人が、米国は国際的な環境保護条約に参加するべきだと考えている。環境問題に関する科学的な結論に真っ向から反対すれば、トランプ氏や他の共和党議員は選挙で不利になるかもしれない。一方の民主党は共和党内の分裂を好機として受け止めている。

他国からの圧力を回避

 パリ協定は拘束力がないため、2025年まで目標通りにCO2排出量を削減しなくても法的強制力のある制裁を受けることはない。だがトランプ氏やその次の米国大統領が国内の石炭発電所や自動車の排ガス規制を緩和すれば、公約を守らない国としてパリ協定に参加する他国から名指しで批判される可能性もある。そのため協定から脱退すれば、削減目標を達成すべきだとする圧力を受けなくてすむ。もちろん、米国が最初からパリ協定に加わっていなかったとしても批判は受け続けていただろうが。

米政府の信用度低下も

 トランプ氏は中国に対し、投資や貿易面で市場を開放するように圧力をかけている。だがつい最近まで米政府が最重要事案としていた協定から早々と脱退すれば、中国だけでなく他の国々も米国と長期的な合意を結ぶことにちゅうちょし始めるだろう。米中両国が排出量削減で合意する画期的なパリ協定を実現させるため、バラク・オバマ前大統領は他の重要な議題を脇に置いて習近平国家主席と交渉した背景もある。

 次の政権になるまで米政府とは連携をしない方が得策ではないのかーー。海外政府関係者からは早くも不安の声が聞かれる。仮に米国がパリ協定から脱退すれば、欧州の国々は一斉に批判を展開するはずだ。

 ビジネスにとっては予測困難に

 原油や石炭事業関連の企業を除く多くのビジネスが、将来的な展望を立てやすい環境保護政策を支持する。先行きが予測できればそれに沿ってグリーンエネルギーに投資し、環境保全の責任を果たしているとして多くの消費者にアピールもできるからだ。

 米国は環境変動を引き起こすとされる温暖化ガスの排出量が世界で2番目に多い。政府が突如方針を転換すれば、これまでの投資計画を危険にさらし、投資家からは不満の声があがるだろう。また、パリ協定から脱退したとしても自動的に原油や石炭に関連する米国内の産業が潤うわけでもない。そもそも協定では各国が独自に国内の削減目標を決め、国内法や規制を使ってそれを達成すべきだとしているからだ。

By William Mauldin