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将棋のはなし(9)愛情は道具にも及ぶ

6/1(木) 8:03配信

カナロコ by 神奈川新聞

【2017年5月28日紙面掲載】

 卓球をする選手の向こうで将棋盤を持って走る人がいる。当然、盤上の駒は派手にこぼれ落ちる。少し前に見たテレビCMの一コマだ。

 最後はピンポン球を盤に置いて終了。どうやら両方の競技で同時に勝ったということらしい。斬新なコラボなのかもしれないが、私には不快感しか残らなかった。

 盤も駒もそれなりに立派な物を使っているように見え、それが腹立たしさを助長した。職人が誇りを持って作り、棋士が心血を注いで戦う道具をないがしろにされたと感じるのは、私の度量が狭いからだろうか。

 小学生時代、サッカーをやっていた。今でも記憶に残るのは、うっかりボールに座ると監督やコーチが激怒したことだ。

 ボランティアで子どもを指導するような人たちだから、間違いなくサッカーが大好きである。その愛情は少年少女だけでなくボールにも及ぶ。怒るのは当然。今思えばありがたい指導だった。

 バラエティー番組などで、いろいろな言葉が書かれた駒を使うシーンはよくある。将棋を愛する人にとって神聖な盤上なのだから、そのぐらいにしてもらいたかった。

 怒ってばかりでもいけないから余談を。15年以上前、カップラーメンのCMで「ラ王」と書かれた駒を盤に打ちつけたのは私である。でもテレビに映ったのは手だけ。誰にも気付かれなかった。

 「ラ王」は立派な盛り上げ駒で、駒師に特注したそうだ。その「本気」がうれしかった。

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