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画像認識技術がスポーツを変える!アマチュアチームのレベルを上げるSPLYZA

6/2(金) 7:00配信

アスキー

高度な技術力を背景に独特なアプリを開発し、2020年に向けて盛り上がりを見せるスポーツ分野での飛躍を狙うスタートアップに、その展望を訊いてみた。
 『アマチュアスポーツマンの「もっと上手くなりたい」を叶える』というポリシーを掲げて、サービスを開発・提供しているのが株式会社SPLYZA(スプライザ)。静岡県浜松市に拠点を構えるベンチャーで、今年で6期目。代表取締役の土井寛之氏によれば、その社名の由来は、スポーツとアナライズを組み合わせた造語だという。
 
 高度な技術力を背景に独特なアプリを開発し、2020年に向けて盛り上がりを見せるスポーツ分野での飛躍を狙うスタートアップに、その展望を訊いてみた。
 

AppStore1位獲得のスポーツ関連アプリ「Clipstro」とは
 「Clipstro」は、スポーツなどの動きの残像を自動で合成してくれるアプリ。スノーボードやトランポリン、スケート、スケボーなどの一瞬を切り取り、パノラマ合成して連続写真として見せてくれるのだ。フォームなどをチェックでき、改善に活かせる。
 
 「Clipstro」のすごいところは、手持ち撮影でいいということ。三脚不要なので、同行者がいれば気軽に撮れる。スノーボードやスキーのフリースタイル系、クロスカントリーのジャンプ、ゴルフならスイングや弾道も確認でき、レッスンにも活用されているという。土井氏の想定外の使い方としては、野球のピッチャーを後ろから撮ってフォームをチェックするものもあった。
 
 「2014年のリリース当時は、スマホで動作する類似の製品がほとんどなく、日中英のAppStoreで1位(最終的には「Clipstro」は5ヵ国、「Clipstro Golf」は17ヵ国で1位を獲得)を獲得した。動画アプリなので口コミが広がりやすく、TwitterやInstagramに投稿されたりとか、AppStoreでフィーチャーいただいたりして。おかげで、アスキーやYahooニュースに載って、たまにテレビで紹介されたりと続いた」(土井氏)
 
 「Clipstro」で話題になったSPLYZAだが、実は2013年末にウェブサービスを1回出している。ユーザー同士がお互いのプレーを撮影しあい、動画を共有し合うコミュニケーションサービスだった。
 
 「そちらは全然うまくいかなかった。そもそも僕らは、製造業のCAD/CATのソフトウェアエンジニア出身の企業。プロダクトは作れるが、コンシューマー系のスポーツとは分野が違いすぎて、さらにマーケティングや営業のバックグラウンドもなかった」(土井氏)
 
 SPLYZAは、製造業に強い静岡県浜松市に居を置くスタートアップだ。エンジニアであった土井氏だがウィンドサーフィンの趣味を持っており、20代は平日でもウェイトトレーニングをばりばりしていたそう。
 
 とはいえ、スポーツ業界に知り合いがいるわけでもなく、最初のサービスを作っても認知が広がらず、次に開発したのが「Clipstro」だった。浜松では、スポーツのネットワークが構築できないと判断した土井氏は外に目を向ける。「セミナー参加ひとつでも費用がかかるが、それをしないと何も始まらないということでやってみようとなり、そこから2年かけてスポーツ関係者のネットワークを構築した。そこでようやく、現場のニーズが見えてきた」(土井氏)
 
 「Clipstro」と「Clipstro Golf」はそれぞれ基本的に売り切りのアプリで、価格は480円だが、現在は合計で8万人を超えるユーザーがいるという。
 
スポーツ関係者の意見を取り入れて生まれた動画分析サービス「Spoch」
 「Clipstro」を広めていく中で、スポーツ関係者と多く話すようになった土井氏。個人よりもチームでやっている人と出会うことが多く、その中で最初に失敗したコミュニケーションサービスのことに触れた。すると、いくつものチームが「これチーム向けにしてくれれば使いたい」と言ってくれたという。
 
 たとえば、既存のウェブサービスを使っている小学生のスポーツチームでは、LINEだとすぐに投稿内容が消えてしまう問題があった。またYouTubeを使うと全世界に公開されるのでセキュリティー的に問題がある。しかし、非公開にすると、検索できず活用できない。
 
 そこでSPLYZAでは、Google+のような既存のSNSでの個人間の仕組みから、チームを作って管理者が招待するという構造に変えた「Spoch」というサービスを2016年10月にリリースした。現在、会社としてはこちらのサービスにかかりっきりだという。
 
 「Spoch」は、いわゆるチーム向けのクローズドSNSで、動画の共有や分析、管理ができる。SPLYZAならではの強みは分析・管理にあり、動画内の時間にタグ付けできる機能を備えている。イメージとしては、映像内にチャプターを自由に作って、そこにメタタグを埋められるような感じだ。何分何秒で一時停止し、誰がシュートしたとかを登録しておくと、後からそのシーンだけ共有できる。動画はスマホで撮影してもいいし、ほかのカメラで撮影したファイルをアップロードしてもいい。
 
 「これまではサッカーの試合なら何十分っていう映像から、セットプレーとか失点シーンといった問題点を集めて動画編集するのにすごい手間を掛けていた。ミーティングのために5分くらいの動画にまとめるのもとても大変。しかも、ミーティングで再生しても、選手はノートを取ってなければ、右から左へとおざなりな扱いとなる」(土井氏)
 
 そこで、時間に選手をタグ付けすれば、特定ユーザーのアカウントとも自動的に紐付く。選手側からは、自分やチームに関連したプレー動画が一覧で見られる。試合直前ではモチベーションを上げるためにいいプレイを見せてもいいし、試合直後のミーティングですぐに失点などの悪いところを振り返ってもいい。シーンごとに、Good/Badタグを付けておけば検索も簡単だ。
 
 Spochは2017年3月からサッカーのアマチュアチーム全国リーグに採用され、大日本印刷と協業することになった。大日本印刷はもともと、リーグから全試合の選手データ管理と公式記録の集計、および試合映像の管理を受託している。昨日の試合は○対○、何分何秒に誰が何をしたというのをすべて記録し、映像と合わせて参加チームに共有している。しかし、従来はこの記録データと映像データはリンクしておらず、映像閲覧時の利便性が悪かった。
 
 「僕らと連携すればデータ付きの映像を直接配信できます、と持ちかけた。3月から、前日の試合がデータ付きで配信されるようになっている」(土井氏)
 
 映像とその中のデータが管理されている大会やリーグであれば、「Spoch」でのタグ付けがそもそも不要だ。とても簡単に、映像の分析機能を利用できるようになるのだ。
 
 「Clipstro」はコンシューマー向けだったが、「Spoch」はBtoBでの展開を見込む。こちらは月額課金制で、1チーム当たり月額3000円/6000円/1万2000円といった形でSaaS型のサービスになる。
 
 「Clipstroのような買いきりのアプリよりも、ビジネスでの可能性がある。選手の映像が紐付くので、ゆくゆくはスカウトに動画を簡単に見せるようなリクルーティングにもつなげていきたい。もしくは、スポーツ選手だけではなく、その周りの親やOB、サポーターのような方達もサービス対象となる広がりもある」
 
技術力には自信あり! 最初は仕事をもらってきてスキルアップ
 「Clipstroを作ろうとしたきっかけは、テレビでフィギュアスケートの連続写真を見て、自分でも使ってみたいと思ったこと。ウィンドサーフィンのトリック系の映像を自分で撮って、確認したかった。しかし調べてみると、類似ソフトは100万円くらいしたうえ、手作業が必要だった。弊社CTOとこれは絶対ニーズがあると言ってスタートしたのが2011年ごろ」(土井氏)
 
 そこから開発をして「Clipstro」がブレイク。なんと言っても、誰でも綺麗な連続写真が撮れるので、口コミで広まった。土井氏によればこの「誰でも」というのがキモだそう。
 
 「類似アプリはあるが、フリーハンドで撮影して、ここまでの精度が出るのは僕らだけだと思っている」
 
 この自信を支えるのは、SPLYZAの技術力だ。元々、同社CTOは3次元点群を扱うプロフェッショナルだった。特定の物体をデジタルデータに取り込む際、レーザーを当てて座標を取る。レーザーは複数の方向から当てるので、それぞれの座標系が異なる。それを点群として扱い、うまくぴったり合わせる必要があるのだ。この技術を「Clipstro」に応用し、複数の画像を組み合わせて、綺麗なパノラマ映像を作成している。
 
 スマホに搭載されているカメラにもパノラマ合成機能はあるが、線に沿って指定された速度でキレイに動かす必要がある。しかし、「Clipstro」では手持ちで適当に動かしてもOK。遠くにある背景をきっちり合わせて合成してくれるのだ。
 
 じつは起業時点では同社に画像認識技術の蓄積はなかったが、土井氏はスキルを上げるために、画像認識関係の研究開発の仕事を受諾。資金力のないスタートアップの裏技のような形で開発力を高めていった。
 
 だが結果的に、ウィンドサーフィンでは使えなかったと土井氏は笑う。画像を合成する際の座標を決めるためには、静止している背景が前提となる。競艇場の湖面くらいキレイに止まっている水面なら合成可能だが、海では無理だったようだ。その代わり、「Clipstro」はそのほかの幅広いスポーツのプレイヤーに受け入れられていった。
 
 現在開発しているのは、画像認識の技術を活用した「Spoch」での新しい解析機能だ。プロトタイプを見せてもらったところ、サッカーの試合映像が再生され、いっぽうで俯瞰映像が表示されている。映像と合わせて俯瞰で動いている人物がわかる仕組みだ。
 
 現在、15種目のスポーツチームに「Spoch」を利用してもらっているが、この機能はサッカーから開発している。サッカーで完成すれば、ラグビーやホッケー、バスケットボールなどの同じ陣取りゲームに横展開できる。後は、テニスやバレーボールのようなラリー系、その他の個人種目、という分類で進めればいい。
 
 「仕組みとしては、動画をアップロードしてもらうだけなので話が早い。とにかく、編集作業をゼロにしたいというのが目標。このような画像認識機能はユーザーの想像を超えていると思うので、マネタイズでの価値につながる。2017年7月末にはプロトタイプのファーストバージョンをユーザーに触ってもらいたい」
 
アマチュアスポーツ界に、役立つことをしたい
 技術的な目新しさがあるとはいえ、Clipstro もSpochもアマチュアスポーツが対象のため、投資家などのリアクションは悪かったようだ。
 
 「このビジネスに関してアイディアを出している時、99%がアマチュアスポーツなので、ニーズは絶対にあると確信してした。そもそも、スポーツメーカーはプロからではなくアマチュアから稼いでいる。プロスポーツから稼いでいるのはメディアだけなので。IT利用がなかったアマチュアスポーツ界に、役立つことをしたいと考えた」(土井氏)
 
 アマチュアもプロと同じようにサポーターがいて、現役選手の10倍はOBがいる。そのほとんどが、運用資金に困っているという。そんな人たちが「Spoch」を通じて状況を配信できれば、OB会費を回収しやすくなるという話も出ているそうだ。
 
 「プロとアマチュアではコストのレベルがまったく異なる。たとえば、Jリーグで実際に使っている俯瞰映像は、レンズが3つ付いているカメラを2台設置して、全方向から撮っているうえに、人力でのトラッキングもしている。だが、アマチュアではここまでやる必要はないし、精度が100%でなくてもいい。今まで得られなかった情報が8割でも得られれば便利になる」
 
直近の目標はチーム数を増やすこと
 SPLYZAが提供するものはプロユースではないが、2020年に向けて、マイナーなアマチュアスポーツ界でもぜひおさえてほしいサービスだ。
 
 創業者のスポーツ中の気づきというのはGoProを想起させるが、こちらはもともと眠っていた技術力をベースに、地道にサービスとして立ち上げてきた部分が印象深い。インタビューではあまり触れられなかったが、これまでITの手が伸びず眠っていたアマチュアスポーツ界でのソーシャルな関係地盤作りの点でも見逃せない。
 
 特に気になるのは、スマホでもできる画像認識から生まれる俯瞰での解析機能だ。このような分析機能の提供で、アマチュアスポーツ界の基礎力自体が向上する世界観が非常に楽しみなスタートアップだ。
 
 現在、SPLYZAは7人体制で5人がエンジニア。そのうち4人までが外国籍だ。そもそも、創業メンバー3人のうちひとりもアメリカのエンジニアで、日本語があまり話せなかった。これは、浜松で募集しても、人が集まらなかったため。ウォンテッドリーで募集をかけても難しかったそうだ。
 
 「僕もオーストラリアにウィンドサーフィンの修行で1年間いたし、創業メンバーにアメリカ人もいるし、では外国人チームにしようということで、LinkedInなどの求人サイトで採用した」(土井氏)
 
 外国人のエンジニアがメインで作っているため、実はアプリは英語で作ってから日本語化しているという。それなら、いきなりグローバル展開できそうだが、「今は難しい」とのこと。スポーツ業界は、指導者同士の横のつながりが強いそうで、外国のチームを紹介してくれるという話はよくあるが、マンパワーの部分が不足しているという。
 
 「競合製品としては、アメリカに「Hudl(ハドル)」という10万チームくらいの導入があるビデオ共有・分析ツールがある。去年70億ドルくらい調達して、スポーツITベンチャー周辺を買収して力を伸ばしている。彼らの主力はアメリカだが、アメリカのスポーツ業界は特殊で、大きすぎてほかとカルチャーが合わない。Hudlは日本やヨーロッパでほとんど使われていないので、これは僕らのチャンスだと思っている」(土井氏)
 
 「Spoch」の直近の目標は、まずはチーム数を増やすこと。次に、アマチュアスポーツの映像をしっかり集めることだ。このようなコンテンツを集めているところはほかにないそうで、今後「Spoch」の機能が向上して自動化できるようになれば、動画のアップロードも増える。そうすれば、さらにできることが増えてくる。
 
 これからも「Spoch」の開発をがんがんと進め、日本のアマチュアスポーツ界を元気にしてくれそうなSPLYZA。活躍を大いに期待したい。
 
●株式会社SPLYZA
2011年5月2日設立。アマチュアスポーツプレイヤーのためのアプリ「Clipstro」や「Spoch」を展開。
調達関連では、2017年2月に株式会社ベンチャーラボインベスメントや静岡キャピタル株式会社、大和企業投資株式会社、PE&HR株式会社を引受先とした第三者割当増資により、総額約6千万円の資金調達を実施。
社員数は2017年6月現在7名。現在、UX/UIデザイナーを募集中。
 
 
文● 柳谷智宣 聞き手・編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

最終更新:6/9(金) 9:05
アスキー

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