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プレミアムフライデーは何がいけなかったのか

6/2(金) 7:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 「プレミアムフライデー」とつぶやいてみていただきたい。SNSへの投稿ではなく、ちゃんと口に出してみよう。なんだろう、この恥ずかしい語感は。最近、西日本限定での販売に移行したスナック菓子「カール」を食べた後のような食感だ。歯にモノがつまり、さらにはチーズ味が口中に広がっているかのような。

【プレミアムフライデーの前に、改革すべきこととは】

 「あれ、そういえば、今日ってプレミアムフライデーだったんですね」

 5月26日(金)の夕方、私は全国紙の記者から取材を受けていた。その記者はこう言った。すっかり忘れていたようだった。あくまでサンプル数1の話ではあるものの、情報で食べている人が忘れるくらいだから、この施策の白けっぷりがよく分かるこの施策の白けっぷりがよく分かる(ちなみに、本コラムの担当編集S氏は、当日18時に社内会議があったそうだ)。

 その晩、私はセミナーで講演した後、AbemaTVのニュース・バラエティ番組「AbemaPrime」のプレミアムフライデー特集に出演した。この施策の偽善っぷりに怒りがこみ上げてきて、机を叩いて暴れてしまった。

 プレミアムフライデー(笑)。今となっては、口にするのも恥ずかしくなっていないか。SNSなどに「今日はプレミアムフライデー」などと投稿する様子に、何かこう意識高い系の臭いというか、香ばしさを感じてしまうのである。

 いや、遠慮して投稿していない人もいるだろう。「プレミアムフライデーだぞ」などと言って、ビールを飲んでいる写真を載せると、「もっと働けよ」とか「金持っているんだなあ」なんてツッコミがきそうだ。

 本来はプレミアムフライデーは、「早めに帰って遊びましょう!」というコンセプトであり、休むこと、消費をすることを推奨する企画のはずだ。人を動かすためには、何かムーブメントが必要だという話になるわけで、その一環だったわけだ。しかし、これほど皆がノッてこれないのは筋が悪かったからではないだろうか。

 月末の金曜日というのも理解できない。営業の追い込みだ、締め日だと忙しいのは明らかである。1週間前倒しした方が給料日前後で消費しようという気にもなるのではないか。

 なんといっても、効果測定の指標が明確ではない。いや、もっというと、測定が困難なのだ。仮に消費が上がった風に見えても、さまざまな指標を見ないと正確には判断できない。何に対してお金と時間が流れたのかを検証しなくてはならない。

●プレミアムフライデーはムリゲー

 プレミアムフライデーはムリゲーだったというのが、私の見解である。最初から筋が悪かったのではないか、と。消費の喚起策なのか、長時間労働是正策なのか、いまいち明確ではなかった。いや、当初は消費喚起策だったはずだが、働き方改革の流れなどに合わせ、長時間労働是正の要素を取り込む風になっていったのだろう。

 私は、「そもそも論」の部分について怒っている。これは長時間労働是正の根本的な問題とも重なっている。それは、「なぜ、日本人は定時に帰れないか?」「なぜ、残業はなくならないのか?」「なぜ、休みを取りにくいのか?」という問いである。

 この手の話をすると、ダラダラ働くのが当たり前になっているから、会議が長いからなど、もっともらしい理由が連呼されるし、終いには社畜礼賛社会だとか、グローバル競争に生き残るためなど、そんな意見まで出て来るわけだが……。

 答えはシンプルだ。残業は合理的だからだ。

 日本の今の雇用慣行、労働市場から考えると、残業は必然的に生まれてしまう。仕事の絶対量が多く、突発的な仕事も多く、さらには仕事に高い質を求めるからだ。1人の仕事の範囲が明確ではないうえに、内容もどんどん書き換えられる。このあたりは私の書いた最新作『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)を読んでいただきたい。例えば、6月30日(金)のプレミアムな時間に読書をするのはいかがだろうか。

●格差社会であることが、より可視化される

 長時間労働是正の話をしたが、消費促進策に関しても給料を上げるという施策を打たない限り、意味がないのだ。

 この根本を解決しない限り、プレミアムフライデーの成功は難しい。このことを経済産業省の役人は分かっているのか役人は分かっているのか(たくさんの給与をもらっているので、そのへんの勘が鈍っているだけなのか)。

 そもそも、厚生労働省でも「ゆう活」(夕方のうちに仕事を終わらせ、プライベートを楽しむこと)なる施策を数年前から打ち出している。これぞ、縦割り行政の弊害ではないか。われわれの血税を使って、何をやっているのか。

 もともと「花金」という言葉がある通り、金曜日の消費促進施策は昔から行われていた。デパートなどでは4半期に1回、イベントを行っていたりもした。

 この施策にのれる人、のれない人、さらにはどんな過ごし方をするかにおいて、格差社会であることがより可視化されるのではないか。つまり、プレミアムフライデーに派手に消費する層と、コンビニの酒でちょい飲みする層である。いや、もうそういう時代になっているが。

 最後にちゃぶ台をひっくり返すが、休む奴はもう既に月末金曜どころか、毎日午後3時から飲んでいるのだよ。仕掛けた経産省の役人よ、今からでもいい。午後3時からの“せんべろ”飲みを1カ月続け、改善策を考えよ!


(常見陽平)