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リチウム二次電池の低コスト化へ、コバルト系に匹敵する鉄系正極材料の開発に成功

6/2(金) 11:10配信

スマートジャパン

■コバルト系材料に匹敵する3.8Vの電圧を実現

 高性能な充電式の電池に利用されるリチウム二次電池。正極材料にはレアメタルのコバルトが使用されたコバルト酸リチウム「LiCoO2」などが用いられているが、コバルトが不足することで材料コストの上昇が懸念されている。

【試作したコイン電池の電圧と放電深度】

 低炭素社会の実現に向けて開発が進められている電気自動車には、大容量のリチウム二次電池を必要とする。そのためコバルトに変わる構成元素として、地球上に豊富に存在する「鉄」を用いた材料が注目されているという。

 富士通研究所は2017年5月、従来のコバルト系材料に匹敵する高い電圧を持つ、リン酸鉄系リチウム二次電池用正極材料の開発に成功したと発表した。

 従来の鉄系材料を用いたリチウム二次電池はコバルト系の材料を用いたものと比べ、エネルギー密度の点で及ばないという課題があった。エネルギー密度は容量密度と電圧の積で表されるが、コバルト系材料の持つ電圧が3.75~4.1Vなのに対して、鉄系材料の持つ電圧は2.8~3.5Vと低い。電圧の高い鉄系材料の開発が求められていた。

 鉄系正極材料の高圧は、結晶中の鉄や酸素などの原子位置に大きく影響される。富士通研究所は材料の結晶構造と電気化学特性の相関を分析したことで、鉄原子周囲の酸素の配置をゆがんだ構造とすることが、電圧の向上につながることを発見した。

 また原料の配合と材料形成を精密に制御する独自の技術により、新しいリン酸鉄系の材料であるピロリン酸鉄リチウム「Li5.33Fe5.33(P2O7)4」の合成に成功した。新材料を用いてコイン型電池を試作し、電気化学特性を評価した結果、コバルト系材料に匹敵する3.8Vの電圧が実現できることを確認したとする。従来のリン酸鉄リチウム「LiFePO4」に代表されるリン酸鉄系材料よりも高い電圧を持っているという。

 開発した鉄系正極材料は、エネルギー密度でみると従来のコバルト系材料と同等の電圧には至っていないが、富士通研究所は「難関とされている鉄系材料の電圧向上に対して解決の道筋をつけた」とコメントした。コバルト系材料と同等のエネルギー密度を持つ正極材料を実現した場合、リチウム二次電池の低コスト化が期待できる。

 今後は得られた知見を基に、コバルト系材料に匹敵する電圧を、より長く維持できるような結晶構造の改良に取り組むことで、高エネルギー密度を目指すとした。