ここから本文です

シェアードオフィスならぬシェアードスクール!? 不況下のブラジルで新業態

6/2(金) 16:47配信

MEGABRASIL

「とりあえずやってみる精神」が“ブラジル力”!?

景気の底は打ったといわれるものの、消費者の行動に景気の力強い回復を感じるまでには至っていない様子のブラジル。現在の政界スキャンダルが、経済の回復にとって重しになる可能性も指摘されている。

表面的にはあまり明るいニュースが聞こえてこない近頃のブラジルだが、長い厳しい不況の中ではぐくまれてきた知恵や技術が様々な場面で実を結びつつある。

TVグローボが5月21日、経済情報番組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランヂス・ネゴーシオス」で伝えたところによると、同国では、経営資源の共有によりコスト削減・合理的経営をはかる起業家が増えているという。

サンパウロ市の歴史ある小学校は、構内の一部教室に英語学校の看板を掲げた。英語学校による、いわば“シェアドスクール”だ。

サンパウロで展開するフランチャイズ英語学校「ピングーズ・イングリッシュ」にとって、教室をシェアードスクール形式にするメリットは大きい。

同校のフランチャイザー、ホジェーリオ・ガブリエウさんいわく、最も大きなメリットは言うまでもなくコスト削減とのことだ。通常の、自前で教室を構える形式のフランチャイズ校と比べて小学校の一室を借りる場合は、インフラ投資額は3割以下になるという。自前で整える場合は1校につきだいたい9万~16万レアル(約340~600万円)かかる。

「シェアード方式のビジネスモデルは単なる流行ではなく、世界的にも定着しつつあります。家、車などあらゆるところでいろいろなものがシェアされています。学校だってシェアの対象になりうるのです」(ホジェーリオさん)

別の小学校の教室では、別のフランチャイズ英語学校、コレジオ・サン・ジョゼー・ド・マラニョンが入っている。このチェーンを経営するマウリシオ・カスチーラ・ガルシアさんの初期投資額は2~3万レアル(約75万~約114万円)だったという。

初期投資だけでなく、運営コストも下げられる。受付担当、管理スタッフなどもすべて小学校側に払う賃料に含まれているため、余分に払う必要がないのだ。自前で教室を整えている教室に比べて月額運営コストは2万レアル(約75万円)ほど節約できているとのことだ。

そして、これは学校ならではのメリットだが、生徒を集めるための宣伝・マーケティング費用が掛からない点も大きい。顧客(生徒)がすでにいる場所に、自分が出ていくのだ。フランチャイズ校は英語教師を一人送り込めばそれでよいのだ。

シェアドスクール方式で恩恵を受けるのは英語学校側だけではない。生徒やその家族にとってもメリットは大きい。

英語学校の生徒、ジュリアさん(9歳)は英語を習うことが生活の中に取り込めるようになったという。小学校の授業が終わったらほんの数歩で英語学校にたどり着けるのだ。

「家を出て、(小学校の)授業を全部受け終わって、そのあとここで英語を習うの。ベリーグッド!」(ジュリアさん)

生徒の親も自分の子どもを英語を習わせる場所に移動をさせる必要がないため、時間が節約できる。

「英語学校が普通の学校と同じ場所にあるのは、送り迎えをする私たちにとっても非常にメリットがあります。送り迎えが1往復で済むのです。朝学校に連れて行って、英語が終わる時間に迎えに来ればいいのですから」(ジュリアさんの父、ドグラスさん)

ブラジルの大都市圏は人口の割に公共交通機関が少ない。そのため移動は基本的に自家用車だ。また、治安の問題もあるので子どもが一人で街を歩くこともまずない。子どもが移動するときは常に保護者がついていなくてはならないという、働く親にとっては厳しい事情がある。

そういった、働く親たちにとっても小学校の空き教室を使った英語のシェアードスクールはとてもありがたい存在だ。

また、低コスト経営は顧客へのサービス対価にも反映される。月謝は他行に比べ安く設定でき、それがまた顧客を呼ぶ。

「我々は平均して10~15%の利益率を保っています。これはこの業界ではとても競争力があるという指標になります」(マウリシオさん)

FIAP技術大学教授のマルコス・クリヴェラーロさんによると、このようなシェアードビジネスはあらゆる分野に広がりつつあるという。

「美容院、ネイルサロン、カフェなどが一緒になったり、軽食堂がスペースを一部貸し出していることもあります。自動車点検所では、車の点検をしている間に音響設備や、洗車、エアコンの掃除なども一緒にできます。点検所に車を持ってくるだけで後は全部1か所で終わるのです」(マルコスさん)

美容院や車両点検所はまだしも、小学校が民間企業の営業に場所を貸すという状況は日本ではなかなか想像しがたいが、ブラジル人の「とりあえずやってみる精神」が切り開いた業態と言えそうだ。続けられるものは定番化させ、ダメそうなら他の道を探る、というブラジル人の試行錯誤好きな国民性が垣間見られる。

不況のコスト削減圧力、交通渋滞、物価上昇に伴う共働き夫婦の増加など、さまざまな制約の中で生まれてきた創意工夫の数々。この政治のドタバタによってしぼんでしまわないことを祈るばかりだ。

(文/原田 侑)

最終更新:6/2(金) 16:47
MEGABRASIL