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埼玉大、“至上最強”の「マルチパラメータフェーズドアレイ気象レーダ」設置へ

6/2(金) 17:59配信

日刊工業新聞電子版

■雨粒サイズや形状も判別

 情報通信研究機構や東芝、大阪大学、名古屋大学が開発を進める気象用の高精度レーダーが10月にも埼玉大学に設置される。広い範囲で目標を見つけられる既存の「フェーズドアレイレーダー」と同じ、30秒の時間分解能を持ちながら、より降水量を高精度に推定できるため、研究者から「最強の気象レーダー」と呼ばれている。首都圏のゲリラ豪雨の予測などへの活用が期待できる。

 埼玉大からは都内を俯瞰できる上、近隣に高層ビルが少なく、電波環境がよいことから設置を決めた。

 設置するのは、雨粒の大きさや形まで分かる「マルチパラメータフェーズドアレイ気象レーダ」(MP-PAWR)。半径約60キロメートルの範囲の雲をきめ細かく観測することで、ゲリラ豪雨を引き起こす可能性がある積乱雲を即時に捉えられる。

 雨量を定量的に観測するため、MP-PAWRは「二重偏波」を採用。水平と垂直の偏波を使い、雨粒を立体的に観測できる。雨粒は空から地面に降る際、空気抵抗で扁平(へんぺい)な形状になる。二重偏波を使えばそういった雨粒の形状も観測できるため、正確な雨量の推定につながる。

 従来、気象予測にはパラボラ型のレーダーを活用していた。一方向の狭い範囲でしか電波の送受信ができないため、正確な予測にはアンテナを角度を変えながら20回近く回転する必要があり、予測との時間の開きが課題だった。

 フェーズドアレイ気象レーダーは、板状のアンテナに多数の位相変換素子が配置されているため、1度の回転で全天の素早い観測が可能となる。茨城県つくば市の気象研究所や、大阪府吹田市の大阪大などに設置されている。

 ただ、既存のフェーズドアレイ気象レーダーは、いずれも「単偏波」を採用。そのため、雨粒の形状といった精度の高い情報は観測できなかった。

 研究責任者を務める情通機構電磁波研究所の高橋暢宏統括は、「東京五輪・パラリンピックの会場予定地をほぼカバーできるため、屋外競技の実施判断などにも役立てたい」としている。

 MP-PAWRは内閣府の大型産学連携プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として、研究を進めてきた。