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「戦う」集団へと進化を遂げる川崎フロンターレ…主将・小林悠の心に芽生えたものとは?/コラム

6/2(金) 19:24配信

GOAL

川崎フロンターレが「上手い」集団から「戦う」集団に変わりつつある。

5月30日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ラウンド16第2戦で、ムアントン・ユナイテッド(タイ)に4-1で快勝した川崎Fは、2試合合計7-2でベスト8進出を決めた。目下、公式戦6連勝中で、5月を負けなしで終えた。

今季よりキャプテンを務める小林悠に好調の理由を聞けば、語気を強めてこう語った。

「(もともと)Jリーグの中でも(技術的に)うまい選手がいるチームだと思っていますけど、足りなかったのは気持ちの部分であったり、戦う姿勢だと感じていた。それが足りないからタイトルに手が届かないということは、僕自身も思っていた」

チームに欠けていた“戦う姿勢”を植え付けたのは、今季よりチームを率いる鬼木達監督である。再び小林に聞けば、鬼木監督が必ずといっていいほどミーティングで発する言葉があるという。それこそが、新生・川崎Fを象徴するキーワードである。

「球際」「戦う」「走る」

小林が続ける。

「この3つの言葉は、100%と言っていいくらいミーティングで出てくる。特に気持ちの部分に関しては、毎回言ってくれているので、自分たちの中にも自然と擦り込まれてくる。それが僕らのプレーにもうまく出てきているのかなと思います」

今季に限らず、以前から「上手さ」は際立っていた。リーグ屈指の攻撃力、リーグ随一のパスワーク。川崎Fを形容する際に用いられる言葉である。ただ、それだけでは相手を圧倒することはできても、勝ち切る、もしくは勝ち続けることはできなかった。大一番と言われる試合やここぞという試合で、何度も悔し涙を流してきたからこそ、小林は「戦う姿勢」に辿り着き、それはすなわち「勝つ」というこだわりに変わった。

「今までのフロンターレは勝負弱いと言われても仕方がないというか。実際、そういう実績でしたからね。そこをどう変えていけばいいかというのを自分も一番考えてきた。今はまだ途中の段階ですけど、難しい試合を勝っていくことで、勝ち方が分かってきている感じはある。チームが変わろうとしているというか、タイトルが獲れるチームに変わろうとしている途中なのかなって感じています」

異なるスタイルのチームと対戦するACLを勝ち進むことで、勝つ術を身につけてきた。明治安田生命J1第12節では、昨季苦汁を嘗めた鹿島アントラーズに3-0と勝利したことで、戦う集団としての自信を深めた。

「とにかく勝ちたいんですよね。前までは自分が絶対に得点したいと思っていましたけど、今は他の選手が決めて試合に勝てれば、それでもいい。ゴールしてリードしているのであれば、自分は守備に徹してもいいとすら思っています」

穏やかに話す表情の中に、執着にも近い勝利への執念を感じた。

「たくさんの選手が得点を取れるというのが、今のフロンターレの良さ。ちょっと前までは、本当に自分しか得点が取れる感じがしなかったので、自分が自分がって思っていましたけど、今季はキャプテンをやらせてもらって、何よりチームが勝つことが大事だということを思いながらプレーしています。すごく勝つことに貪欲になれているので、それがアシストだったり、守備につながっているのかもしれない。だから、キャプテンとして黒子としての役割もできるようになっているのかなって思います」

勝ちにこだわるからこそ、ACLとの連戦がようやく落ち着く、最後の横浜F・マリノス戦は重要となる。

「ここはすごく重要ですね。勝たなければいけない試合を勝ってきて、チームがすごく力をつけてきている段階で負けてしまうと、築いてきたものが崩れてしまう可能性もある。だからこそ、気持ちを引き締めて、勝ちにこだわって、泥臭く戦っていきたい。それに、休みに入る前に負けてしまうと、僕の場合は特に悔しさが残ってしまって、うまくリフレッシュできないと思うので(笑)。やっぱり勝って休みに入りたいですよね」

チームが勝利できるのであれば、自分が得点を決めなくても構わない。キャプテンとして、誰よりも、何よりも勝利にこだわっている。ただし、自分が取らなければ勝てないのであれば、自分がゴールを狙っていく。エースとしての矜持も、ストライカーとしての牙も、決してなくしたわけではない。第1戦を3-1で勝利したムアントンとの第2戦がまさにそうだった。1点奪えば、ほぼACLのベスト8進出が決まる状況で迎えた31分、中央でパスを受けた小林は、相手DFをかわすと、右足で鮮やかにゴールネットを揺らした。

「ボールを持てていてもうまく崩し切れていなくて、何となくうまくいっていないなって思っていたので、ちょうど中でボールを受けようと考えて、センターフォワードの位置に入ったんですよね。悪くはなかったけど、この流れを断ち切るためにも、自分で決めてやろうと思って。そうしたら、ちょうど良いボールが来たので、良い時間帯に得点することができましたよね」

チームのためならば、アシスト役にも、おとりにもなる。ただし、自分が決めなければ勝てないのであれば、自ら奪いに行く。ストライカーとしての牙を持つキャプテンは、迎える横浜FMとの神奈川ダービーにおいても90分の中で、その姿を変えることだろう。その優先順位は、己ではなく、チームの勝利にある。「戦う」集団であることを証明し続けるために、川崎Fは勝利にこだわる。

文=原田大輔

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最終更新:6/2(金) 20:02
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