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出所者や非行少年の再犯防げ 静岡のNPO、就労支援態勢を強化

6/3(土) 8:12配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 刑務所の出所者や非行少年の就職をサポートし、活動8年目を迎えたNPO法人県就労支援事業者機構の取り組みが軌道に乗り、実績を伸ばしている。2017年度は、独自に支給する就職支度金の予算枠拡大やスタッフの増員で支援態勢強化を図り、就労実現の加速につなげる方針だ。さらに、偏りがある受け入れ業界の拡大にも知恵を絞っている。

 1月の夕方、所持金や住む場所もない50代男性が、静岡市内の同機構事務所を訪ねた。就労支援スタッフは希望の職種や地域などを聞き、「住み込み可能な会社しか紹介できない」と判断。男性が身元証明に欠かせない運転免許証を紛失していたため、再交付手続きに奔走した。採用姿勢を示してくれた経営者の厚意で、その日から働けることになった。

 犯罪数の約6割が再犯者の行為とされ、無職者の再犯率は有職者に比べ3倍以上とのデータもある。幅広い産業分野で就労の受け皿を確保することが再犯抑止には欠かせない。

 同機構は保護観察所の対象者選定を基に、ハローワークや地区協力雇用主会、保護司会などと連携して出所者らの就活を後押しする。法務省の委託を受け始めた15年度は21人の就職を実現させ、16年度は就職活動に臨んだ55人のうち、31人が新たな職に就いた。

 求職者の支援強化策で16年度に支給を始めた支度金は、作業着や備品の購入などの準備資金に充ててもらう。17年度は予算総額を倍増した。就労希望者への対応や協力雇用主との調整をより迅速にこなすため、4月から東部のスタッフを増員。東、中、西の3地区でそれぞれ2人態勢を整え、新規会員の発掘業務にも力を入れる。



 ■受け入れ業種に偏りも

 刑務所や少年院の出所者らへの就労あっせん実績が伸びつつある中、受け入れ企業・事業所は一部業種に限られているのが実情だ。

 県就労支援事業者機構によると、建設業が全体の約5割を占める。建設に加え製造、サービス業界を中心に人材不足が叫ばれているだけに、機構は「新規開拓に力を入れる好機」と認識する。ただ犯罪の高齢化に伴い、体力的に限界がある高齢の出所者も多い。

 県組織の県協力雇用主会が16年度末で統合・一元化されたことを受け、同機構は県内15地区の協力雇用主会と協議会を発足させ、課題や方策を議論している。雇用した出所者らが突然姿を消すなどの「リスク」は存在するため、同機構は身元保証制度など各種雇用促進策の周知も続ける。

 松林隆一会長は「受け入れ業界を広げ、就職後に定着してもらうには、関係機関との情報のやりとりを徹底する必要がある。各種施策を生かして連携を高めたい」と話した。



 <メモ>県就労支援事業者機構は、刑務所などを出所した人と雇用主の「つなぎ役」として活動する民間団体。就労支援のほか協力雇用主の開拓も担う。実際に受け入れる企業や個人事業者は「協力雇用主」と呼ばれ、4月時点で478社。2009年の活動開始から増加傾向が続いている。活動資金面で支える企業は「2種会員」といい、年会費など3万円を機構に支払う。従業員の規模や業種はさまざまで、09年度に10社で発足し、17年4月時点で185社まで増えた。

静岡新聞社