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面会交流のあり方は子どもが決めること…支援団体の光本さん、自身の体験踏まえ語る

6/3(土) 10:01配信

弁護士ドットコム

中学2年の時に両親が離婚し、母と離れて家族3人で暮らすようになった光本歩さん(28)。現在、親の離婚・再婚・別居など家庭環境に悩む子どもたちを支援するNPO法人「ウィーズ」の副理事長として、「子どものための面会交流」支援にあたっている。離れて住む親と子どもが面会することにどんな意味があるのか。光本さんは自身の体験を踏まえて、面会交流のあり方を語る。

●「嬉しくはなかったが、会ってよかった」。3年ぶりの母との再会

2002年7月、中学2年の夏だった。母の借金が原因で、大阪府から伯母が住んでいた静岡県に父と妹と3人で夜逃げした。父は当時小学2年生だった妹には、「お母さんは後から来る」と話した。借金があることに気づいてから、父と母はいつも喧嘩が耐えなかった。自分は「もう母とはもう会えない」と状況を理解していたが、妹に「母はもう来ないよ」とは言えなかった。

新しい家で、父は度々「あいつのせいで人生めちゃくちゃだ」と母を非難した。そんな父の前では、「会いたい」とも言えなかったし、そもそも静岡県と大阪府の距離では会えるとも思っていなかった。

「会いたいという感情よりも、何しているんだろうなと気になっていた」。当時持っていたプリペイド式の携帯に、母の携帯番号を登録していたが、連絡することはなかった。 手紙は新しい家に届いたこともあったが、父は私に中身を見せることなく捨てた。

住民票を移さずに夜逃げしたので、転校手続きもしていないまま。父には家の手伝いを命じられ、気づけば学校には4ヶ月間行っていなかった。そんな中でも、美術の教師になるという夢が諦められなかった。

「そろそろ学校行かないと、やばいんじゃないの」。父を説得し、教育委員会に学校にいく手続きをしてもらった。父は中学を卒業したら働くように言ってきたが、反対を押し切って公立の進学校に進学。友人が部活や塾に通う中、土日を含んだ週5日イタリアンレストランで働き、年間11万円の学費と隣町までの通学費、携帯代の支払いに加え、毎月家に2万円を入れた。とにかく必死だった。

母に再会したのは高校2年の夏休みだった。アルバイトで貯めたお金もあるし、会いにいける。「色々と今の話を聞いてくれるかな」と、どこか期待していた。もちろん母の暮らしぶりも気になっていた。「ご飯を食べられているのだろうか」、「借金をしたのには、何か理由があったんじゃないか」。

いつしか母と自分を重ね合わせていた。片道7千円の夜行バスに乗って待ち合わせ場所の新大阪駅に着くと、そこには知らない男の人と一緒にいる母がいた。「今の彼氏」だった。

母はなに不自由なく生きていた。自分は週5で働いてお金を貯め、誰にも頼らずに大学進学を目指している。「こんなに大変なのは、そもそも誰のせい?」。そこで目が覚めたように、母を客観視できた。

今思えば再会は「最悪の形」だったが、「親と自分は違うんだ」と割り切れた。だからこそ、嬉しくはなかったが会って良かったと思っている。「それまで父からはとにかく『(母は)最悪だ』と言われていて、そのフィルターがかかっていた。面会交流は内容の良い悪いだけでなく、親がどんな人間か知るために必要」。自身の経験から、そう実感している。

●「交流のあり方は親が決めるのではなく、子どもが決めること」

政府が今年まとめた「我が国の人口動態」によると、2015年の離婚件数のうち「妻が親権をもつ」ケースが11万1428組と全体の84.3%を占める。離婚して関係がより一層こじれる中、面会交流を巡っても意見は対立しがちだ。光本さんによると、別居親は「宿泊面会や面会時間を伸ばしたい」といい、同居親は「子どもが会いたくないと言っている」と主張し、平行線をたどるケースが多いという。

支援に携わる中で、「子どもが振り回されている」と感じることは多いという。子どもにも、幼稚園や学校、友人との遊びや習い事、部活動など「子どもの生活」がある。光本さんは「子ども自身は面会の形態について細かく考えていないことが多い。それよりも子どもは両親が争っていることを見ていて、その空気が伝わってしまう。それは本当に子どものためなのでしょうか」と指摘する。

さらに、支援活動では最初から「子どもは会いたいだろう」、「子どもは会いたくないと言っているからそうだろう」と決めつけない。光本さんは「子どもは親に会いたいに決まっているかというと、そうでもないんです」という。

会いたいという感情ではなく、気になるという気持ちであったり、子ども自身本音がわからなかったりするケースも多い。円満離婚に見えるケースでも、会いたくないと子どもが主張するようであれば、子どもと面会を重ねて、まずは子どもと支援者間の関係作りを大切にする。

超党派の議員連盟は、未成年の子どもがいる夫婦が、離婚後も継続的な親子関係を維持することを促す「親子断絶防止法案」の国会提出を目指している。光本さんは「この法案が成立するメリットは、『親が離婚した後も、子にとって親であることは変わらない』ということを社会に広く周知できる点です」と話す。「紙切れ1枚で離婚ができる日本においても、両親の男女の関係と親子の関係は別物であり、離婚は子どもにとっての「縁切り」であってはならない。それを決めるのはあくまで子どもである」。法案により大人側の意識が変わることを期待している。

ただ法案の「継続的な親子交流こそが、子の最前の利益に適う」という点には違和感がある。光本さんの場合、最終的に母と縁を切りたいと思ったからだ。「交流のあり方は親が決めるのではなく、子どもが決めること」と切に感じている。

厚生労働省が2016年に行った人口動態統計によると、2015年の離婚件数は22万6215組で、うち未成年の子がいる離婚は13万2166組と全体の58.4%にも上る。にもかかわらず、「面会交流」という言葉の認知度も低く、民間の支援団体のガイドラインも策定されていない。「こういう問題があるんだと知ってもらい、正しく理解してもらうきっかけになって欲しい」。そう願っている。

弁護士ドットコムニュース編集部