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《ブラジル》記者の目=「先達て会館」、宮城なのに「宮崎」=大丈夫か、日本移民110周年委員会

6/3(土) 7:53配信

ニッケイ新聞

 「サンパウロ日伯援護協会の会長を長く務めた菊地さんが、こんな雑なことをするなんて信じられない」――。元県連会長で、現在は宮城県人会会長の中沢宏一氏は苦言を呈する。
 中沢氏が問題視するのは、ブラジル日本移民110周年実行委員会(菊地義治実行委員長)が作成した宮城県知事宛の文書だ。菊地氏は現在、110周年記念祭典の広報のため訪日し、関係各所を訪問している。
 10以上の県庁を訪問する予定で、宮城県庁もそのうちの一つ。実行委員会は各県人会に、訪問の事前案内として当該文書を県知事に送付するよう依頼した。
 しかし、中沢氏が文書を見てみると、「宮城県」宛てなのに、宛名には「宮崎県知事」の名が。中沢氏は「送っていたら取り返しがつかなかった。文中の日本語も酷い」と話す。結局、自ら県庁に連絡を取り、菊地氏が訪問する旨を伝えたという。また「まさかこんな文書だと疑わずにそのまま送ってしまった県人会のあるのでは…」と懸念を示す。
 問題はそれだけでない。菊地氏が日本で訪問先に手渡すために作成したパンフレット。こちらの文章は輪をかけて不安を呼ぶものだ。
 「ブラジル日本移民110周年記念祭典は大きな二つの大きなイベントの間に行われます、即ち2020年東京に於いて行われますオリンピック及びパラ・オリンピックと、先達て会館(編集部注「先だって開館」か)されたサンパウロに於ける世界でこの種の始めての試みであるジャパン・ハウスです」(菊地氏挨拶文より抜粋)
 文章の意味が不明瞭なうえ、誤字脱字も目立つ。それにジャパン・ハウスはイベント(行事)ではなく、施設だ。
 よくみると、名前すら菊地が菊「池」になっている。きわめつけは「式典には皇室の何方(どなた)かの御臨席を頂き祭典をより有意義に盛り上げたいと存じます」という箇所だ。コロニアが心から敬愛する皇室を、「盛り上げる」ための手段と認識しているかのような、礼を欠くニュアンスを感じる文章ではないか。
 記念すべき110周年を初めて日本に広報してまわる際に配る文章としては、不適当だといえそうだ。県知事ら政治家や地方自治体の代表者に渡すような大事な公的文書なのに、なぜそのようなことが起きたのか。チェック体制はどうなっているのか――。
 さっそく、パンフレット製作の経緯を委員会事務局に確認すると、原文はポルトガル語で「日本語が分かる方にボランティアで翻訳してもらった」とのこと。
 文協事務局長の中島エドアルド剛氏は、「菊地実行委員長が日本に経つまで時間がなかった。プロに頼むと時間がかかる」と弁明。「なぜ翻訳後の内容を確認しなかったのですか」と尋ねると、「私のところに確認依頼が来たのが、菊地実行委員長が日本に立つ二日前。しっかり見ている時間はなかった」と伏し目がちに話した。
 今回のパンフレットの印刷数は30部で、取り急ぎ今回の日本訪問のために準備した。中島氏は「8月にも菊地実行委員長が日本に行くことが決まっている。早急に改定をする」と話す。
 ただ今回露呈したのは、公式な日本語文書が書ける人材がいないこと。宮城県人会会長の中沢氏は「事務局の人材を見直す必要がある。でないと今後も同じようなことが起きる」と断言する。指摘を受けた箇所だけ修正したからといって、根本的な問題解決にはならない。
 菊地さんが1月末に実行委員長に選任されてもう5カ月がたった。自費で訪日して10県以上をまわるという強い志をもった頼もしい実行委員長なだけに、このパンフレットのできは残念。ちゃんとチェックできる人がいなかったことが悔やまれる。大事な110周年、これからが本番だ。(陸)

最終更新:6/3(土) 7:53
ニッケイ新聞