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抗がん剤の副作用緩和、漢方医学の大いなる可能性と課題

6/3(土) 12:28配信

ニュースイッチ

試される認知度向上、カギは「科学的根拠」

 日本の伝統医学である漢方医学を現代医療の課題解決に役立てようとする機運が高まってきた。医学者などで構成された研究会が、抗がん剤の副作用緩和や高齢者医療で漢方の活用を推進すべきだなどとする提言書を作成。漢方薬大手のツムラは日本漢方医学教育振興財団を設立した。一方、生活者だけでなく医師も漢方への理解が不十分との指摘もある。認知度向上へ向けた関係者の努力が試される。

 「西洋薬では十分な対応ができない抗がん剤の副作用である、しびれなど末梢(まっしょう)神経障害、口内炎、食欲不振、全身倦怠(けんたい)感、皮膚障害等に対しては漢方製剤によるエビデンス(科学的根拠)が報告されている」。これは日本医学会の高久史麿会長が率いる「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」が3月にまとめた提言書の一節だ。

 2015年12月に厚生労働省が公表した「がん対策加速化プラン」では、“がんとの共生”がうたわれた。がんによる死亡率は減少傾向だが、化学療法などによる副作用に悩む患者は多い。同研究会はこうした動向を踏まえ、「漢方製剤によるエビデンス構築をさらに加速すべきである」と提言した。

 このためには当然ながら、ヒト・モノ・カネが必要だ。同研究会は「国や日本医療研究開発機構(AMED)と協力して研究費の獲得や(課題解決までの)時間短縮を考えている」(代表世話人の北島政樹国際医療福祉大学名誉学長)。同研究会の事務局を務める日本漢方生薬製剤協会(日漢協)が提言書の内容を国会議員や行政機関などへ説明し、理解を促進していく。

 人材育成や研究振興の観点では、ツムラが同社元社長の風間八左衛門氏と共同で日本漢方医学教育振興財団を設立。4月に活動を始めた。代表理事の加藤照和ツムラ社長は「他メーカーにもご賛同頂きたい」と意欲的だ。

危機感の裏返し

 ただ、こうした動きは危機感の裏返しでもある。提言書では「一般国民は漢方製剤等に関してほとんど認知していない、医療関係者においてもエビデンスの現状に関して十分理解されていない」との厳しい現状分析がされた。また、企業からすると「提言の内容はあくまで一般論。個社の事業への即効性はない」(中堅漢方薬メーカー幹部)。

 この幹部は、提言書に「一般用医薬品(の漢方薬)に関する内容が少ない」とも指摘した。身近な一般薬を通じて生活者が漢方への理解を深めていく可能性はある。日漢協をはじめとする関係者は、多面的かつ柔軟な啓発活動を続けていけるかが問われそうだ。

日刊工業新聞第ニ産業部・斎藤弘和

最終更新:6/3(土) 12:28
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