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キリオスの“怒りの発作“に対戦相手たちは勝機を見出す [全仏テニス]

6/3(土) 12:03配信

THE TENNIS DAILY

 フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコート)の大会5日目、男子シングルス2回戦。

マレー、モンフィスらが3回戦へ、キリオスはアンダーソンに敗退 [全仏オープン]

 ニック・キリオス(オーストラリア)の才能は否定し難いものだ。そして彼の荒い気性も同様に否定し難い。

 ラケットを叩き折ることで罰として1ポイントを失った第18シードのキリオスは、第1セット先取後、先にワンブレークを果たして優位な立場にいながら、2回戦負けへと、あっという間に移行した。彼は最後の19ゲームのうち16ゲームを落とし、ケビン・アンダーソン(南アフリカ)に7-5 4-6 1-6 2-6で敗れた。

 男子テニス界が次世代----いつの日か、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、アンディ・マレー(イギリス)のような選手たちが残す席を埋める誰か----の顔を探し求めている中、22歳のキリオスこそが、その役にふさわしい華々しいプレースタイルと、人を惹きつけるキャラクターを持っていると信じる者は少なくない。

 それでも、あるスポーツをリードするにはコートでの成功が必要であり、試合中のキリオスのムラのある振る舞いは、あっという間に彼を脱線させかねない。それが、この木曜日に起きたことだった。そして、世界ランク56位で、グランドスラム大会に31回出場しながら一度しか準々決勝に進んだことのない31歳のアンダーソンも、それに気づいていた。

「彼が自分自身の頭の中に入り込み、彼自身の戦いの中で苦しんでいる間」と、アンダーソンは表現した。「僕は彼に、試合に戻る道を与えなかった」。

 世界1位のマレー、3位のスタン・ワウリンカ(スイス)が3回戦進出を決めたこの日、敗れたシードは数人いた。しかし、キリオスほど破壊的な形で去ったものはひとりもいない。フェデラーやナダルを倒す能力を持っているところを、すでに証明しているキリオスだが、ここ7つのグランドスラム大会のうち6大会で、4回戦前に負けていることを別にしても、彼は頻繁に衝動的な怒りの発作にとらわれる傾向があった。

 セットを先取し、第2セットでも一時4-2とリードしながら、キリオスはばらばらになって崩れ去った。

 4-5で迎えた自分のサービスゲームで、彼は時速219kmのエースを叩き込み、5-5まであと1ポイントと迫った。しかしそれから、お粗末なドロップショットがネットにかかり、その次のダブルフォールトがアンダーソンにセットポイントを与えることに。これによってカッとなったキリオスは、ラケットを地面に叩きつけ、折れて歪んだラケットはバウンドして遠くまで飛び、ベースラインのラインジャッジの足元に着地した。

 この行為により、主審は彼にラケットの不当な扱いのかどで警告を与えた。しかしキリオスの怒りは、まだ治まっていなかった。2度目のダブルフォールトでアンダーソンに第2セットを献上したあと、キリオスは頭を下げ、サイドラインに向かってとぼとぼと歩いて行くと、腰を下ろし、ラケットを、水を入れておくコンテナに6度叩きつけた。ベンチに座ったアンダーソンが、何が起こったのか自分の右側を覗き込んだほど、大きな反響音が響き渡る。これで彼はペナルティ・ポイントを科せられ、第3セットを劣勢から始めることになった。

「あれが、君たちが望む最良のお手本かどうかはわからない」

 コート3の最前列にいた少年たちが、この行為を間近に見ていたことを記者に指摘されたあと、キリオスは微笑を浮かべつつこう言った。

「でも、僕はそれを誰かに見せようとしてやっているわけじゃない。自分のフラストレーションゆえなんだ。僕はただ自分のためにやっているんだよ」

 彼はまた「キャリアを通し、ずっとやってきたんだ。今やもうただの習慣だと思うね」と、悪びれもせずに言っている。

 試合中に自分の行く手を阻んでしまうことも、ある種の習慣になっている。そして対戦相手たちは、そのことを知っているのだ。

 第3セットに入ったときのアンダーソンの考え方は以下のようなものだった。

「第3セットの出だしで優勢を保ち続ければ、彼がそこここで、僕にゲームを献上してくれるチャンスがあると感じていた」

 まだセットオールだったにも関わらず、癇癪が原因で自爆したように見えるその顛末についてのキリオス自身の説明は、部分的には故障のせいで、ロラン・ギャロス(全仏)前にしっかり練習し、準備することができなかったためだ、というものだった。

 彼は最初の2セットで12本のサービスエースを奪ったが、最後の2セットでのエースはわずか4本にとどまった。しかし彼は肉体的問題を抱えているわけではなかったという。

「驚くべきことは、僕が今日、勝てる立場にいたということだ」とキリオスは言った。「そして勝つこともできたはずだった」

 言うまでもなく本当に肝心なのは、彼がそうできなかったことのほうなのだ。(C)AP (テニスマガジン/テニスデイリー)

Photo: 2017 French Open Tennis Tournament - Day Five. Nick Kyrgios of Australia during his loss to Kevin Anderson of South Africa during the Men's Singles second round match match at the 2017 French Open Tennis Tournament at Roland Garros on June 1st, 2017 in Paris, France. (Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)

最終更新:6/3(土) 12:03
THE TENNIS DAILY