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社説[子ども貧困調査]進路選択広げる支援を

6/3(土) 11:25配信

沖縄タイムス

 学力格差、健康格差、経験格差、希望格差…。「沖縄子ども調査」「高校生調査」が可視化したのは、困窮ゆえに構造的に不利な立場に立たされている子どもの姿である。

 沖縄の子どもの貧困率が29・9%と深刻であることが分かった昨年来、県を中心に貧困解消に向けた取り組みが進んでいる。民間の支援を受けて子ども食堂や無料学習塾などが広がったが、対策は緒に就いたばかりだ。今回まとまった報告書を、貧困の世代間連鎖を断ち切る実践へとつなげてもらいたい。

 小中高校生を網羅した調査で注目したいのは「学童期の入り口の不利」を映す小1の保護者の声である。

 保護者の14・2%が「経済的に大学教育は受けさせられない」と回答するなど、小学校進学時点で既に子どもが将来大学を希望しても難しいと考えている。

 もちろん奨学金などを受けて進学する子はいるだろう。しかし最初から大学への道が閉ざされているとしたら、勉強にも力が入りにくい。

 学校外の活動でも、習い事は23%、学習塾は28%、年に1度の家族旅行は49%が「経済的にできない」と答えている。経験の不利が浮き上がる。

 実際に子どもに大学進学の希望を聞いたところ、小5、中2、高2で困窮世帯は非困窮世帯より10ポイント以上低いという結果だった。

 学力や生きる力、文化的資源にも影響するさまざまな経験の積みにくさが、進路選択を狭めているのではないか。

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 昨年、子ども調査の中間報告で困窮世帯の半数が就学援助制度を利用していなかったことが分かり、情報提供の在り方が問題となった。

 今回の高校生調査でも就学援助と似た「高校生等奨学給付金」についての認知度が低かった。交通費や学用品にも使うことができる給付金だが、授業料に充てる「高等学校等就学支援金」と混同したり、周知の不徹底が指摘されている。

 一方で困窮世帯の高校生がアルバイトで生活費や学校にかかる経費を稼ぐ姿も浮き彫りになった。

 低所得世帯を対象にした高校生等奨学給付金は、苦しいからこそ使ってほしい制度である。漏れがないよう、県には積極的かつ丁寧な説明を求めたい。

 高校進学では通学交通費負担の重さも明らかになっており、施策提言に盛り込まれた「通学時限定パス」などの導入は急務である。

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 子どもの貧困は保護者の就労状況と密接な関係にあるが、調査では父親が正社員でも半数近くが困窮に陥っていた。子の成長とともに教育費支出は増えるのに、雇用状況の改善が見られないのだ。

 「子どもの貧困対策元年」と位置付けられた昨年は、無料塾など居場所をつくる対策が中心だった。始まった給付型奨学金も県外難関大学に限ったものである。

 正規でも困窮から抜け出せないのは沖縄の厳しい雇用環境と自助努力の限界を示すものだ。子育て世帯の収入を増やす具体的な施策が求められる。

最終更新:6/3(土) 11:25
沖縄タイムス

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