ここから本文です

新しい旧型客車「35系」完成…JR西日本『SLやまぐち号』に導入

6/5(月) 19:34配信

レスポンス

JR西日本の広島支社は6月4日、山口線の『SLやまぐち号』に導入する新型客車「35系」を新山口駅(山口市)で報道陣に公開した。戦前に製造された旧型客車をモチーフにデザインしたのが特徴。9月から営業運用に入る。

[関連写真]

『やまぐち号』は国鉄時代の1979年、山口線の新山口~津和野(島根県津和野町)間で運行を開始したSL列車。通常はC57形蒸気機関車1号機(C57 1)が、1971年製の12系客車5両をけん引している。JR西日本は2015年3月、『やまぐち号』の持続的な運転を図るため、新しい客車の導入を発表した。

■「昔のデザイン」と「新しい技術」が混在

今回公開されたのは、新山口方の1号車から津和野方の5号車までの35系5両編成。このうち1~3号車は車内の一部も公開された。

35系は設計最高速度が110km/h、減速性能が4.9km/h/s。蒸気機関車のC57形とD51形のほか、電気機関車とディーゼル機関車、キヤ143形気動車のけん引に対応する。

蒸気機関車が全盛だった頃の雰囲気を乗客に体感してもらうため、オハ35形(旧)など戦前製の旧型客車をモチーフにデザインした鋼製車体を採用。塗装もかつての旧型客車と同じ茶色(ぶどう色2号)だ。屋根上の通風器(ベンチレーター)は昔ながらの十文字タイプ(ガーランド型)を採用。側面の窓の上部と下部に補助板(ウィンド・シル/ヘッダー)を設置するなど、昔の客車の姿を余すところなく再現している。

その一方でボルスタレス式台車を採用するなど、走行装置は現在の鉄道車両の標準的な仕様にあわせた。各車両の連結部には転落防止ホロを設置。旧型客車のドアは手動の開き戸だったが、35系のドアは旧型客車風のデザインでまとめつつ、安全確保のため引き戸の自動ドアにした。脇にはドアを開けるための押しボタンが設置された。ステップは設けていない。

サービス水準も現在の車両に合わせ、冷房装置を搭載。屋根上はガーランド型ベンチレーターの脇に冷房装置の箱が並ぶという、やや特異な外観になった。報道陣からの質問に対応していた車両設計室の城戸宏之担当課長らは「冷房装置を床下に設置することも考えたが、床下には(照明や冷房で使用する電気の)発電機などを搭載していて余裕がない」として、屋根上に設置したという。このほか、「乗客がたくさん写真を撮ってバッテリーが不足する」(関係者)ことを想定し、各座席にはコンセントを設置。全ての車両にベビーカーを置ける荷物置場を設けた。

各車両固有の番号は全て「4001」で統一されており、35系の4000番台に区分されていることになる。「番号がかぶらないよう、オハ35形(旧)の最終製造車両の追い番にした。ただしオハ35形(旧)の増備扱いというわけではない。あくまで新車」(城戸担当課長)という。

各車両の概要は以下の通り。

●1号車

1938年に製造された1等展望客車のマイテ49形をモチーフにしたグリーン車(定員23人)。車両形式・番号は「オロテ35 4001」になる。マイテ49形の台車は3軸ボギーだったが、1号車は一般的な2軸ボギーだ。

新山口方の車両端部にはマイテ49形と同様、開放式の展望デッキとソファを設けた展望室を設置。1等車であることを示す白帯も窓下に入れられた。ただし営業上はグリーン車のため、ドア付近にはグリーン車マークが小さく入れられている。

客室は2人用と1人用の回転式リクライニングシートを中心に設置。一部に4人用と2人用のボックス風リクライニングシートも設けた。このほか、洗面所と洋式トイレ、乗務員室、業務用室を設置した。

●2号車

2~4号車は、1939年から製造が始まった3等客車のオハ35形(旧)をモチーフにデザインした普通車になる。客室内は昔ながらの4人用ボックスシートが並ぶが、シートピッチを1700mmにしてテーブルを設けた。

2号車の車両形式・番号は「スハ35 4001」(定員64人)。大型荷物スペースと洗面所・小トイレ・洋式トイレも設置した。床下には発電機を搭載し、照明やエアコンなどで使う電気を供給する。

●3号車

車両形式・番号は「ナハ35 4001」(定員40人)。津和野方は4人用ボックスシートが並ぶ客室だが、新山口方は「蒸気機関車の仕組みを学べるスペース」とし、蒸気機関車の運転体験シミュレーターとカマたき体験ゲームを設置した。SL列車の車内に蒸気機関車の運転体験シミュレーターを設けるのは、全国でも初めてという。このほか、販売スペースも設けられた。

●4号車

車両形式・番号は「オハ35 4001」(定員72人)。4人用ボックスシートと洗面所・小トイレ・洋式トイレが設置された。

●5号車

2~4号車と同じ普通車だが、モチーフになったのは1927年から製造されたオハ31形3等客車。車両形式・番号は「スハテ35 4001」(定員46人)になる。オハ35形(旧)モチーフの2~4号車は丸屋根構造を採用したが、5号車はオハ31形と同じ二重屋根構造(ダブルルーフ)を採用。窓の大きさもオハ31形にあわせて小さくしている。

オハ31形は車両の長さが約17mだったが、5号車は他の車両と同じ約20mに統一。オハ31形にはなかった開放式の展望デッキを津和野方の車両端部に設けた。客室内の座席は4人用ボックスシートだが、一部の座席は車椅子対応に。このほか、洗面所と多目的室、バリアフリー対応トイレ、乗務員室、業務用室を設置。2号車と同じく発電機を搭載した。

35系は9月から現在の12系に代わり、『やまぐち号』の客車として運用される予定。広島支社総務課(広報)の安藤拓馬さんは「レトロな雰囲気の新型客車で山口線の車窓を楽しんでいただければと思う」と話した。

《レスポンス 草町義和》

最終更新:6/5(月) 19:34
レスポンス