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千畝氏の決断、道徳教科書に 4社掲載

6/4(日) 9:25配信

岐阜新聞Web

 2018年度の小学校での道徳教科化に伴い初めて作られた教科書のうち、検定合格の8社中4社が、第2次大戦中に「命のビザ」で大勢のユダヤ人を救った元外交官、杉原千畝(ちうね)氏(1900~86年)を取り上げている。外務省の訓令に背いてビザを発給する決断が、教科化に合わせて文部科学省が掲げた「考え、議論する道徳」の教材として扱われることになった。
 教科化に伴い、道徳教育は従来の登場人物の心情理解から、「自分ならどうするか」を考えて議論する「問題解決的な学習」に転換される。
 文科省によると、4社はいずれも6年生用に掲載。「人物の選定は発行者の判断で、切り口はさまざま。副読本に続いて採用した社もある」(教科書課)という。
 このうち教育出版(東京)は、ビザ発給に至る決断や28年後のユダヤ人との再会を紹介し、「どうしてビザを出したのでしょう」「千畝の行動のすばらしいところはどこですか」と問い掛ける。
 同社の林功中部支社長(55)は「学習指導要領が求める『生命の尊さ』や、『よりよく生きる喜び』に照らし、杉原さんの功績こそ教材にふさわしいとなった」と説明する。
 光文書院(同)は「公正、公平、社会正義」を狙いに「ユダヤ人を見すてるか、意向にそむいてビザを発行するか」と悩む姿を記述。光村図書出版(同)は「感謝」を主眼に阪神淡路大震災の際に米国のユダヤ人団体が基金を設けた「55年目の恩返し」を掲載した。日本文教出版(大阪)は本文以外にもコラムで出身地の岐阜県加茂郡八百津町の人道の丘公園と杉原千畝記念館を取り上げている。
 道徳教育に詳しい岐阜大大学院教育学研究科の柳沼良太准教授は、「従来であれば、杉原氏の行動は職務違反で、道徳的ではないとみなされてきた。2000年に河野洋平外相(当時)が公式に名誉回復を行ってからは政府や文科省の見方も変わり、副読本にも登場するようになった」と背景を指摘。児童には「利害や国や時代を超え、信念を貫いて博愛精神を発揮したところを理解し、人間としての生き方や社会の在り方について考えを深めてほしい」と期待する。
 18年度用の道徳を含む全教科書は、16日から14日間、県図書館(岐阜市宇佐)など県内40カ所で展示され、8月末までに県内7地区ごとの協議会で選定される。

岐阜新聞社

最終更新:6/4(日) 10:09
岐阜新聞Web