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清水建、ベトナムインフラで実績 斜張橋・地下鉄 “日本しかできない”工法で優位に

6/4(日) 18:22配信

日刊工業新聞電子版

■中韓との受注競争激化

 清水建設がベトナム・ホーチミンで、主要幹線の一部となる橋や、ベトナム初となる地下鉄の工事を手がけている。高度な技術力を武器に、日本政府が進める「質の高いインフラ輸出」の一翼を担う。だが、低コストで攻勢をかける韓国・中国企業との受注競争は激化し、厳しい状況にある。日本はどのように対応していくべきか。清水建設のベトナムでの取り組みからインフラ輸出のあり方を展望する。

 「南部でやるのは初めてだ」。ベトナム・ホーチミンでビンカイン橋の施工を担当する清水建設の中村智樹建設所長は、ベトナムでの橋工事の実績を説明する。清水建設はこれまでに、北部のハノイ周辺で二つの橋を建設。

 その一つであるバイチャイ橋は、橋脚と橋脚の間(支間長)が最大435メートル。圧縮力を加えて強度を増すプレストレストコンクリート(PC)橋で、最大支間長は「PCの1面づりの斜張橋では世界一」(中村所長)の長さを誇る。

 現在、中村所長が現場の指揮を執るビンカイン橋は、橋の両側の2本の柱でケーブルをつるPC斜張橋だ。長さ2763メートルで最大支間長は375メートル。橋脚は33基。ベトナムを南北に縦断する南北高速道路1811キロメートルの一部を構成する。交通渋滞の緩和や物流促進などが目的だ。清水建設と現地企業のビナコネックスE&Cが共同企業体(JV)を組む。

 現在の工事の出来高は44%。地盤への杭打ちが終わり、橋脚をつくっている段階だ。2018年夏以降、支柱から両側に橋桁を建設する“やじろべえ”のような様子が見られる。

 ビンカイン橋の工事では、現地企業が川の水が流れていない部分に杭を打ち込み、橋脚をつくる作業を担当。清水建設が水深約20メートル弱の川に橋脚をつくる難しい作業を担当した。そのため日本の技術力を象徴する「鋼管矢板井筒基礎」と呼ばれる工法を採用した。日本で設計手法が確立され施工実績がある。中村所長は「日本しかできない」と強調する。

 同工法は川の中に、鋼管を楕円(だえん)状に並べて打ち込み壁を築く。楕円の空間の水を抜き、コンクリート打設などの作業を行う。地盤は軟弱で豆腐のように軟らかいため鋼管の長さは63メートルに達する。作業が終われば水中部分の約20メートル分を切断し、残りは杭として生かす。水深があり軟弱地盤で基礎を築くのに有効な工法だ。

 鋼管矢板井筒基礎が採用された背景には、日本の技術を積極的に活用しようという日本政府の意向もある。ビンカイン橋の工事は円借款で行われており、「本邦技術活用条件(STEP)」という制度を適用している。契約額の30%以上は、日本企業から資機材を調達することが条件だ。

 一方、ビンカイン橋に隣接する工区はアジア開発銀行(ADB)が資金提供する。発注された6工区中、5工区は韓国企業、1工区は地元企業が受注。インフラ受注競争の激しさが垣間見える。日本が打ち勝つには官民連携し、技術力を生かす仕組みが重要となる。

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