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スルメイカ漁、回復なるか 専門家シンポから探る

6/4(日) 10:16配信

デーリー東北新聞社

 青森県内では早ければ今月上旬からスルメイカ漁が本格的に始まる。昨季は太平洋側を中心に全国的な不漁に見舞われ、価格高騰も招いた。来年2月ごろまで続く今季の見通しはどうか―。5月30日に函館市内で開かれた専門家のシンポジウムから探る。

 ▼大不漁

 八戸港の2016年の水揚げ数量を見ると、スルメイカが主体の「イカ」は2万2120トンで、不漁とされた前年からさらに2割強の減少。それでも、北海道各港の前年比数%という“大不漁”に比べれば健闘した。八戸は日本海側で操業する中型イカ釣り船の存在が大きかったようだ。

 スルメイカには太平洋側に来遊する「冬生まれ群」と日本海側の「秋生まれ群」がある。昨年の不漁は冬生まれ群が生まれる東シナ海の海水温が2年連続で低く、産卵域が縮小したのが要因との見方が強い。

 八戸港では近海の小型イカ釣りを皮切りに、中型イカ釣り、巻き網、底引き網と水揚げが順次始まる。「今年はイカがいるのか、いないのか」―。漁期を目前に控えた関係者は気をもんでいる。

 ▼太平洋・冬生まれ

 「豊漁ではないが、昨年のような大不漁は避けられるのではないか」。函館市内で開かれた資源予測に関するシンポジウムで、函館頭足類科学研究所の桜井泰憲所長が見通しを示した。根拠はやはり東シナ海の水温。昨年ほどの低下が見られず、産卵域も縮小していないという。

 ただ、近年の不漁で親イカが減っており、産卵域の状況がすぐに資源回復につながるとは限らない。水産研究教育機構・北海道区水産研究所の山下紀生グループ長は「昨年12月時点では今年の資源量は前年並みかやや下回る程度と評価しており、現時点でも見方は変わっていない」として今後の調査データを慎重に見極める必要性を強調した。

 ▼日本海・秋生まれ

 秋生まれ群の日本海は比較的に資源量が安定しているものの、中長期的には減少傾向をたどっているという。冬生まれ群とは逆に、産卵域の水温上昇が要因とみられている。さらに桜井所長は「科学的なデータはない」としつつ、北朝鮮海域での漁獲増が影響している可能性を示唆した。

 同機構・日本海区水産研究所の久保田洋グループ長は資源水準を「中位」、漁模様は「不漁の前年並み」と予測。現在は石川県沖を中心に漁場が形成されており、5月上旬までの漁獲量は5年平均よりも低く、魚体も小さいという。

 ▼魚種交代

 近年のスルメイカ不漁は、1970~80年代の長期不漁と類似性が指摘されている。寒冷期に入った当時は、スルメイカやカタクチイワシが減る半面で、マイワシやサバが増える「魚種交代」が起こった。マイワシは水温が下がると増えるのに加え、餌を巡ってスルメイカと競合関係にあり、スルメイカの資源量に間接的な影響を与える。

 桜井所長は「しばらくマイワシ全盛が続くのでは」と見る。スルメイカの資源量が早期に回復する条件として、産卵域の状況回復とマイワシの減少を挙げる。

 現在のような状況が一時的なものか、中長期的な傾向かについては「相当慎重に検討する必要がある」として判断を避けた。

 ただ、地球温暖化の影響で寒冷期が短くなる可能性も指摘し、「魚種交代の兆候はあるが、(十数年に及んだ)70~80年代のように大規模になる可能性は低い」としている。

デーリー東北新聞社