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“街灯のスマート化”は何を変えるか、シスコの実証

6/5(月) 7:10配信

スマートジャパン

■4つのソリューションを導入

 京都府の南部に位置する木津川市で、省電力化や防犯対策を目的とした“街灯のスマート化”が2017年6月1日に始まった。シスコシステムズ(以下、シスコ)と晶和クリエイションによる実証で、同年9月30日まで実施される。

【スマートライティングの仕組み】

 シスコの担当者によると、実証で導入するソリューションは「スマートライティング」「ビデオサーベイランスマネジャー(VSM)」「コネクテッド デジタル プラットフォーム(CDP)」と今後追加される「通行状況分析システム」の4つで構成されている。

 スマートライティングでは、街灯のLED化とネットワーク化が行われた。LED化で電力利用量の削減を図るとともに、ネットワーク化することで遠隔で状態を監視し、従来は通報や見回りでしか発見できなかった故障の早期検知ができる。街灯1本1本における点灯の遠隔操作や日没、日の出の時間に合わせた点灯の設定なども可能だ。

 実証では水銀灯200W品を50WのLED、水銀灯100W品を30WのLEDに変更。計23台の街灯が対象で、それぞれに街灯の状態や点灯設定情報を送受信するノードを内蔵した。同社の担当者は「街灯の下部に形状を問わず、美観を損なわずに設置できる」と語る。万が一、ノードやゲートウェイが故障した場合は、照明が100%点灯する仕組みという。

 また撮影した映像をネットワークで送信可能な防犯カメラも設置。事件事故発生時に映像データをすぐに確認可能なため、状況確認の初動時間を短縮できる。

 映像を表示するVSMでは、同時に複数台の映像を一画面に表示することや、指定時間に一斉に巻き戻した視聴を可能とする。リアルタイムの映像確認もできるが、プライバシーの観点から条例で禁止されており、システムに組み込んでいないという。

 CDPはスマートライティングや通行情報分析システムを、一元表示可能なプラットフォームだ。街灯の位置や通行状況の分析結果を表示し、直感的な操作で制御できる。

 今後追加される通行状況分析システムにより、時間帯別の通行量データに基づく照明点灯時間や照度の設定など、ビッグデータを活用した検証も可能となっている。同システムでは、設置した防犯カメラの映像をソフトウェアで分析する。人や自転車などが、どの時間帯にどのくらい、どの方向に移動したかをデータ化してくれる。

■「京都をスマートシティーの先進地域に」

 シスコがこれまで携わってきたスマートシティープロジェクトは、世界30カ国以上にわたる。先進事例としてはスペインのバルセロナ、米国シカゴ、カンザスなどを挙げた。Wi-Fiを街中に張り巡らせ、ICTの共通基盤として活用するバルセロナでは、木津川市でも導入したスマートライティングの他、さまざまな取り組みが行われている。

 1つは「スマートバンキング」である。駐車場に設置したセンサーから空きスペースを感知し、空き状況を運転手のスマートフォンに送信する。駐車場を探す時間の短縮だけでなく、観光客の滞在時間増加による観光収入増加も狙いにある。

 2つ目は「スマートなゴミ収集管理」だ。ゴミ箱内の温度と重量を検知することで、ゴミ箱の空き状況を把握し、ゴミ収集車の運転手に送信される仕組みである。これにより、作業の効率化を図ることができ、ゴミ収集の経費削減につながったという。

 シカゴでのプロジェクトでは、街灯のLED化だけで約60%の電気料金削減を実現。ネットワーク化したことで、さらに約20%の削減につながったとしている。

 2015年5月には、京都府とシスコがICTなどを活用したスマートシティーづくりに関する連携・協力協定を締結。「日本初」のスマートシティー実現に向けた試みである。最初の試みは、京都ならではといえる「スマート観光」実証プロジェクトだ。

 2016年5月に京都府精華町と共同して、JR京都駅に「デジタルサイネージ」と「バーチャルコンシェルジュ」を整備し、2カ月間にわたる実証を行った。デジタルサイネージは京都の魅力やイベントの情報の紹介、検索機能をそろえている。京都府内の6つのエリアで、写真共有アプリ「Instagram(インスタグラム)」などのSNSに投稿された画像を人工知能で自動で収集し、リアルタイムに表示する機能も特徴的だ。

 バーチャルコンシェルジュは、多言語観光案内ができるツールという。外国語が喋れるスタッフと画面を通して、知りたい情報や観光地への行き方を聞くことができる。

 木津川市における「街灯のスマート化」プロジェクトも、京都府との取り組みの1つとなる。シスコの担当者は「スマートシティーの取り組みは、実証で終わることが多い。木津川市の実証は2017年9月末までだが、フィードバックを反映させて、実運用へのフェーズまでいけたらと思っている。また他の地域にもニーズがあるため、京都府全域をスマート化し、スマートシティーの先進地域となるよう進めていきたい」と語った。