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三菱UFJのAWS活用、6つのポイントとは

6/5(月) 12:16配信

ITmedia エンタープライズ

 米Amazon Web Services(AWS)の日本法人であるアマゾンウェブサービスジャパンが先週、東京都内のホテルで「AWS Summit Tokyo 2017」を開催した。本稿では、その基調講演で語られた三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のAWSクラウド活用事例を取り上げたい。

【画像】三菱UFJフィナンシャル・グループのIT活用の全貌

 というのは、2017年1月、MUFGが社内システムの一部にAWSクラウドを採用し、勘定系システムのクラウド化も検討しているとの報道が流れ、それを機に他の企業でも基幹システムのクラウド化を進める話が持ち上がるケースが増えたとの声も聞かれるからだ。業界関係者の中には、「MUFGをめぐる報道で、基幹システムにパブリッククラウドを利用できるのではないかと見るユーザーが増えて、明らかに潮目が変わった」と見る向きもある。

 ゲストスピーカーとして登壇したのは、三菱東京UFJ銀行専務取締役の村林聡氏。実は村林氏の現職はこの5月15日付けの異動で就任したばかりで、それまではMUFGのCIOとして長らくらつ腕を振るっていた人物である。そんな同氏がどんな話をするのか、注目してみた。

 まず、村林氏がMUFGのIT戦略として掲げたのは、オープンイノベーションの進展である。具体的にはAPI、ブロックチェーン、AI(深層学習)といった分野で、それぞれの先進企業と手を組んでいる。例えばAPIでは、MUFGグループの企業が自社機能をAPIとして外部に開放、外部企業と連携して革新的サービスの提供を目指している。

 また、AIについては、銀行業務がどれくらいAIに取って代わられるのかを分析。「7年後、本部業務の4割はAIに置き換え可能」との結果が得られたという。AI分野ではIBMやAlpacaなどと取り組んでいく構えだ。

 その上で村林氏は、「これらのサービスをいち早く提供するためには、AWSのようなクラウドが必要だ。今後もクラウドの進化とともに、既存システムのコスト削減、開発スピードの向上、イノベーティブなサービスの継続的リリースなどの観点から、われわれとしてはAWSクラウドをコアプラットフォームの1つとして育成していきたい」と語った。

●銀行の役割や業務内容が変化する可能性あり

 村林氏はまた、MUFGのクラウド活用におけるポイントについて、次の6つを挙げた。


1. ガバナンス:ポリシーガイドを策定し、組織横断による緩やかな統治を実施。
2. サービス企画:クラウドサービスの検証・導入コントロールを実施。
3. 設計・アーキテクチャ:クラウド特性を生かした、単一サービス単一設計をグループ・グローバルに浸透。
4. 運用保守:課金コントロールスキームなど、オンプレにはない運用スキームの検討。
5. 人材開発:全社的に人材開発を行い、インフラサービスを自律的に利用できる体制へ。
6. 移行:社内で移行基準を制定、オンプレからの移行計画を策定。

 では、MUFGは今、AWSクラウドをどれくらい使っているのか。村林氏によると、「AWS本格活用から約1年半が経過し、利用可能サービスは10以上。本番稼働5システム、開発中および検討案件を合わせると100超」だという。

 村林氏は最後に、「そうは言っても活用はまだまだスタートしたばかり。この活用をさらに進化させていくために、サービスの拡充、あるいはスキル要因の拡大をしながら、実現機能を拡大し、移行対象エリアを拡大することで、イノベーションの促進や開発スピードの向上、コスト削減、そして自律的なインフラサービスを目指していきたい」と説明。

 その上で、「AWSはIT業界のシェアリングエコノミーだと思っているので、みんなで活用して、みんなで進化させていきたい」とも語った。

 ただ、村林氏の話の中では、既存システムに触れた部分はあったものの、具体的なクラウド化の流れを示した説明はなかった。ましてや、勘定系システムのクラウド化への言及はなかった。

 果たして、勘定系にパブリッククラウドが適用される日が来ることはないのか。30数年来、折りに触れて銀行システムの取材をしてきた経験から、当面はありえないと考えるが、今後10年も経てばどうなっているか分からない。

 キーワードは「移行」ではなく「刷新」ではないか。なぜかといえば、今後、経済社会における銀行の役割や業務内容が変化する可能性があるからだ。それに伴ってシステムのあり方も変わる。この話はそうした視点で捉えなければいけないだろう。