ここから本文です

自動運転車の経済効果、2050年で7兆ドル 新たな移動サービス「MaaS」登場

6/5(月) 12:10配信

日刊工業新聞電子版

■米インテルなど試算

 自動運転車が将来生み出すモノやサービスへの経済効果は、2035年の8000億ドル(約88兆円)から、2050年には7兆ドル(約770兆円)規模にまで拡大するー。こうした「パッセンジャーエコノミー」(乗客経済)と名付けた新しい産業についての試算を米インテルと調査会社の米ストラテジー・アナリティクスが共同でまとめ、1日に発表した。

 それによれば、自動運転車による移動手段を事業者や個人に提供する「モビリティー・アズ・ア・サービス(MaaS)」という事業形態が登場。特に個人向けでは、かつての運転手が乗客となり、運転していた時間を別のことに費やしたり、移動中に提供する新しいサービスが生まれるとした。それらをひっくるめて「パッセンジャーエコノミー」と名付け、現在普及が進む「シェアリングエコノミー」の2倍以上の経済規模になると予測している。

 一方で、パッセンジャーエコノミーは車の所有やメンテナンス、運用手法、使い方を一変させ、既存の産業やその事業モデルにも大きな影響を及ぼす。調査を共同で行ったストラテジー・アナリティクスのハーベイ・コーエン社長によれば、中でも一番最初に変革が及ぶ産業は宅配や長距離輸送の分野。世界的な運転手不足の解決策になるとともに、当初はこうした運輸向けが全体の3分の2を占めるとみている。また、自動車メーカーは車内サービスを含めた自動車関連のサービス事業にビジネスモデルをシフトするという。

 パッセンジャーエコノミーで予測される経済規模の内訳は、事業者向けのMaaSが3兆ドル(全体の約43%)、一般消費者向けMaaSが3.7兆ドル(同約55%)。それに加えて、乗客向けに登場する新しいアプリやサービスなどで2000億ドルの市場が生まれるとした。

 新たに登場する車内サービスとして想定されるのは、髪やネイルを手入れするビューティーサロンから、タッチスクリーン型のテーブルを使った遠隔会議、レストラン、販売店舗、健康クリニック、ホテル、移動映画館、移動中の地理的位置に合わせたロケーション・ベース広告など。企業やオフィスビル、マンション、大学、公営住宅などが特典や差別化のために、社員や居住者にMaaSによる移動サービスを提供するケースなども考えられるという。

 また、車通勤者が運転から解放されるのと併せ、自動運転による道路渋滞の緩和により、年間で延べ2億5000万時間を超える時間が自由に過ごせるようになるとした。交通事故も減少し、2035~2045年の10年間に、控えめに見積もって58万5000人の人命が失われずに済むと試算している。

 実は半導体メーカーのインテルが、このような自動運転車関連の将来予測を出したのには理由がある。パソコン向け半導体の覇者だった同社も、スマートフォンをはじめとするモバイル向けでは振るわず、来るべき自動運転車での覇権奪取に勝機を見出しているためだ。

 今回の発表でも、同社のブライアン・クルザニッチCEOが「数年前までは誰しも、シェアリングエコノミーがこれほど急速に広がるとは思っていなかった。自動運転車についても同様で、企業は今から戦略を練っておくべきだ」と声明で述べ、自動運転車の普及を後押しする発言をしている。

 実際、インテルは2016年11月のロサンゼルスオートショーで、自動運転車の開発に向こう2年間で2億5000万ドルを投資すると同CEOが表明したのに続き、今年3月には、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転車向けのビジョンシステムで注目されるイスラエルのモービルアイを153億ドルで買収。インテルはモービルアイ、BMWと完全自動運転車の共同開発にも乗り出していて、年内には公道でのテスト走行を始める計画でいる。