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カシオ、デジカメ画像技術で人の能力補う 信州大と皮膚がん診断支援技術開発

6/5(月) 12:45配信

日刊工業新聞電子版

■“自撮りカメラ”に肌をきれいに見せる技術

 カシオ計算機が、人工知能(AI)を使い、皮膚がんの診断を支援する技術の開発に挑んでいる。同社はこれまで医療との関係は薄かったが、デジタルカメラで培った画像処理技術が新しい可能性を生み出した。画像技術とAIの組み合わせは、皮膚がん以外でも研究が進んでおり、専門知識の必要な高精度な診断の補助が期待されている。

 カシオは業界初の液晶モニター付きデジタルカメラを発売するなど、カメラ市場の成長を支えてきた。画像処理技術も得意で、例えば、中国で人気の“自撮りカメラ”には肌をきれいに見せる技術を組み込んでいる。

 近年、医療分野では、画像処理技術とAIを組み合わせた診断支援が注目され、カシオだけでなくキヤノンや富士フイルムも研究している。病変画像をコンピューターに学習させ、特徴を抽出して違いを見分ける。最終的な病気の診断は医師の領分だが、微妙な経時変化や、色の分布の細かな違いを見分けるのは、見たものを忘れないコンピューターの方が得意な場合もある。人の能力を補う狙いだ。

 カシオは、信州大学と共同で、皮膚がんの悪性黒色腫(メラノーマ)などほくろに似た病変の診断支援技術の開発に取り組む。皮膚を特殊な拡大鏡で拡大して撮影する「ダーモスコピー検査」の画像を機械学習でコンピューターに学習させ、判別精度を高める。

■国際コンテスト、自動判別部門で1位

 初期のメラノーマやほくろ、イボは非常に似ていて、見分けることは難しく、医師であっても技能の習熟が必要だ。メラノーマは2―3カ月で急激に肥大する。がん細胞はリンパ液に運ばれて他の臓器に転移するリスクも高いため、初期に診断する必要がある。以前は白人患者が多かったが、最近は日本人患者も増加傾向にある。海外にはダーモスコピー検査を義務化した国もあるほどで、AIによる早期診断のニーズは高い。

 カシオと信州大が開発中の皮膚疾患の画像診断システムは、国際コンテスト「ISBIチャレンジ2017」の皮膚疾患の自動判別部門で約30チームの中で1位となった。「1点満点中0・911点で、僅差の1位だった」(北條芳治DC企画推進部長)。判別精度の上での僅差は、重要な差になり得る。同コンテスト後は、企業や大学から問い合わせが増えている。

 同社は現在、診断支援に先行し、ダーモスコピー検査のノウハウを学習する医師向けクラウドサービス「D,z IMAGE」を行っている。医師の技能習熟を助けるためで、症例集や学習用の問題などを無料で提供している。

 例えば、ダーモスコピー検査の撮影画像に画像処理を施して構造を明瞭化するコンテンツや、病変時の皮膚構造を解説するコンテンツなどがある。この学習サービスで医師や大学と連携しており、これが発展して、AIによる診断支援技術の研究につながった。まだハードルはあるものの、早期診断への貢献が期待される。