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逆流性食道炎を確実に防止 新しい食道胃吻合法とは

6/5(月) 10:59配信

山陽新聞デジタル

 逆流性食道炎を確実に防止する新しい食道胃吻合法について、天和会松田病院(岡山県倉敷市)の上川康明顧問に寄稿してもらった。

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 以前、ネット上に医療に関して次のような質問がありました。胃の上部に小さな初期のがんが見つかり、医師から発生した場所が悪いので胃の全摘しかないと言われたそうです。そこで、胃全摘以外に方法はないのかという質問でした。

 胃の上部の進行したがんに対しては、根治のために胃全摘をするというのが外科医の一般的な考えですが、これが早期がんとなると外科医の意見も分かれます。早期がんであれば、がんを治すという観点からは、胃の上部だけを切除して中下部(胃の3分の2程度)を残す手術=図1=が可能な場合が少なくありません。しかし、幾つかの理由によって、あえて胃全摘を選択する外科医もいます。

 胃上部の早期がんに対して全摘が行われることは以前に比べて少なくなりましたが、大学病院を中心に117の施設について2015年に行われた調査(※)でも、胃上部の早期がんに対して胃全摘を選択する施設が28%であったと報告されています。この調査で、胃上部だけの切除、すなわち噴門側胃切除(以下、噴切と略)を選択しない理由の中で最も多かったのが、「逆流性食道炎を危惧」でした。

 噴切を行った後の再建術には、小腸を用いるなど幾つかの方法がありますが、約70%の施設では食道断端と残胃をつなぐ食道胃吻合(ふんごう)が行われています。従来行われていた食道胃吻合では、ある程度の頻度で胃から食道への逆流が起こります。食道の粘膜は消化液によって障害されやすい性質であるため、逆流性食道炎を引き起こします。その結果、術後長期にわたって不快な胸焼けや痛みによって、患者さんが苦しめられることになるので、それを避けるためにあえて胃全摘を選択する施設もあるのです。

 もともと、食道と胃はつながっているのに、簡単に逆流が起こらないのは、食道と胃の移行部(噴門)にその秘密があります。ここには逆流防止のための三大要素が存在し、効率良く逆流を防止しています。三大要素についての詳しい説明は割愛しますが、噴切を行うことによって三要素の一部、あるいはすべてが失われるために、逆流が起こりやすくなるのです。

 本稿では、噴切後の胃から食道への逆流を効果的に防止し、逆流性食道炎を起こさない新しい食道胃吻合法を紹介します。この方法の要点は、逆流防止弁を作成する手術ということになります。

 噴切後に従来行われていた方法は多くの場合、図2のように残胃の前壁で食道と吻合していました。この形で吻合することで、ある程度逆流が防止できますが、その効果は十分ではありませんでした。

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