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パターに職人技入魂 横須賀の町工場が手作業の逸品完成

6/5(月) 18:21配信

カナロコ by 神奈川新聞

 ◆ものづくりの神髄、全国から力結集
 横須賀の町工場を拠点に、全国各地の職人の力を結集させたゴルフパターが完成した。製造業を取り巻く厳しい環境下で生み出した高付加価値の新製品は全て手作業。造形美と機能美を兼ね備えた逸品には「日本伝統の、ものづくりの素晴らしさを伝えたい」という思いが込められている。

 企画から製造まで手掛けたのは、三貴(横須賀市内川)の新井宗徳さん(37)。同社は、創業者の父晴雄さん(69)を筆頭に腕利きの従業員7人が、鉄道車両部品や配管、アルミ特殊製作までを請け負う。

 5年前、自身もゴルフ経験のある新井さんは、ドライバーのシャフトの生産に目を付けた。自社ブランド「サンキプラナリアシャフト」を立ち上げ、社運を懸けた勝負に打って出た。

 ゴルフ業界を驚かす売りはオーダーメード。基本30色の中から好きな色を組み合わせられる。カーボン製で独自のしなりを加え、飛距離も追求。ほかでは手に入らない高級志向の商品に評判は広がり、今や海外からの問い合わせもある。

 今回、新たに自社製のゴルフパターが完成、限定30本を販売開始した。3年構想のプロジェクトは、新井さんが鳥取、和歌山、福島県など全国各地を訪ねて協力を得た10人以上の職人が携わった。パターのヘッド加工、本革のグリップ製作といった各分野のスペシャリストの技を結集させた。

 シャフトの柄は、ピンクゴールドを基調に金箔(きんぱく)をあしらった「和」のイメージに仕上げた。グリップは珍しい馬皮で、ヘッドは10個以上を試作。新井さん自身、金属加工の職人だ。試作段階から「日々けんかでしたね。(職人として)こだわる相手の気持ちも分かるし、こちらも妥協できない。とにかく良いものを追求した」と振り返る。

 時間と労力を惜しまず、各地の職人と力を合わせたのは「いま日本の製造業は衰退してきている。あらためて世界に『日本の技術はすごい』と評価してもらえるよう(パターの製造を通じ)いろんな職人に表舞台に出てほしかったから」。

 41万8千円(税込み)は決して手にしやすい価格ではない。それでも早速、新井さんの元へ香港の外国人男性から予約が入った。男性は現在、がんで闘病中という。過去にも購入歴があり、「私は大ファン。健康上の理由はあるが、(同社製品で)長くゴルフをプレーしたい」と、メールで伝えられた。

 「こういう声を聞けることが本当にうれしい」と新井さん。「横須賀から世界」を目指して始めた町工場の挑戦は、確かな手応えとともに続く。