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[インタビュー]研究所長のハラスメント報告後、解雇に…「学問の自由なくなる」

6/5(月) 6:58配信

ハンギョレ新聞

日本で定年が保障された教授職を解雇されたキム・ミギョン教授

 キム・ミギョン元広島市立大平和研究所教授(54)は、この1カ月間、ソウル光化門(クァンファムン)のあるオフィステル(オフィスと住居が合わさった空間)に滞在している。3月17日に懲戒解雇され5月2日に帰国した。「解雇で日本滞留資格を失い、これ以上留まることはできませんでした。12年間に集めた韓日関係資料と数百冊の本を捨てて帰国しました」。大学は退職金の5千万ウォン(約500万円)も払わなかった。2005年に講師としてこの大学に来て、3年後に定年が保障された教授になった。「日本ではたびたび体調を崩しました。復職訴訟で勝つまで戦うために、体調を管理しなければとこの頃痛切に思います」。今月2日、ハンギョレ新聞社で彼女に会った。

 警察に逮捕され12日間留置場の独房に拘禁された後に不起訴処分を受け解放された当日、解雇通知書が彼女に伝えられた。「どんな手段を使ってでも私を追い出したかったのでしょう。私を追い出してこそ彼らが生きるからです」。何があったのだろうか?大学は、彼女がロンドン行きの飛行機代34万円を不当に受領したとして詐欺の疑いで告訴した。彼女は2014年、韓国国際交流財団基金で韓国においてサバティカル(長期休暇)を過ごした。「最初は英国のケンブリッジ大に行こうと研修計画書を大学に出しました。その後、財団の支援が遅れて確定したために、上級者の吉川元・平和研究所長に報告し、所長推薦書を受けて韓国に行きました」。大学は、彼女が韓国で研修をしていた2014年12月、突然に英国に行かなかったことを問題にして帰って来いと指示した。サバティカルの終了日より2カ月操り上げて広島に行った。ロンドン行きの飛行機代は、大学に復帰して2カ月後の2015年4月に受け取った。「所長と事務室の職員が度々(飛行機代を)申請するように言いました。私が英国に行かなかったことを知っていながら申請しろと言うので、しなければならないのかと思いました」。彼女を無嫌疑処分した警察も、この点を不思議に思ったという。「大学が、自分が予約した“1年オープンの往復チケット”という粗末な証明資料で金を支払ったことがおかしいと、警察がそう言いました」。彼女は「飛行機代を受け取る意図がないのに、大学がそのような状況を作って私を追い詰めたのではないかと思う」と話した。

広島市立大「飛行機代不当受領」で告訴
警察が無嫌疑釈放すると即刻解雇
「大学が罠にはめたという心証」
吉川平和研究所長「いじめ報告書」
昨年3月に出したが特別な措置なく
「所長と市長が生きるために私を追い出した
勝つまで戦い続ける」

 彼女は釜山大の英文科を卒業し、米国ジョージア大で修・博士学位を受けた。博士論文は「70年代の韓国の女性労働運動」を主題に書いた。息子ブッシュの1期大統領時代の2000~2004年には、米国務部公共外交専門委員として仕事をした。米国政府の対外広報を担当するポジションだ。ブッシュの再選が確定した後に辞表を出したと話した。「4年間ブッシュが掲げた“悪の枢軸”広報ばかりしていました。もうその仕事をしたいとは思いませんでした」。1年後の2005年10月、公募を通じて広島市立大に行った。

 彼女は、大学の解雇措置には安倍晋三首相の政策を批判するなど、自身の所信発言が影響を及ぼしたようだと話した。「2006年から韓国、米国、オーストラリア、シンガポールの新聞への寄稿を通じて、日本の右傾化を批判しました」。 4年前「安倍が過去の歴史には口を閉ざして被害者のフリばかりをしている」という内容の寄稿(金正恩<キム・ジョンウン>と安倍の“危険なタンゴ”)が韓国の新聞に掲載された。「2006年に韓国のある地方紙に自分の寄稿が載った日、右翼が当日午前にその文を訳して広島市長や市議会側に送り抗議をしたのです」。2011年には、研究のために泥棒の汚名を着せられもした。「私が韓国の東北アジア歴史財団のプロジェクトである『日本人たちの領有権紛争認識』調査を引き受けると、大学が個人の研究だとして大学の郵便受けやコピー機も使ってはならないと言いました。後には私が研究所の建物の鍵を盗んだとして泥棒呼ばわりしました」。

 彼女は、今回の事態の核心人物として2013年4月に平和研究所所長として赴任した吉川元氏を挙げた。「吉川氏が日本最大の右翼組織である日本会議人脈の推薦で所長に任用されたという話を最近聞きました」。

 吉川氏は赴任後、時をわきまえず彼女を呼び出した。「電話を受ければ、たった一言です。ぞんざいな口調で『来い』といいます。私を座らせて『韓国の国民は未開だ』と悪口を言います。一度などは週刊新潮に載った低級な『慰安婦記事』を見せ、『コピーしてちゃんと勉強しろ』と言ったのです。『男が戦場に出て行く前に女を抱いてみるのが何で悪いのか』とも言いました。韓国女性の代表として下級者である私を呼んで、侮辱して羞恥心を与えるという意図が目に見えました」。彼女は悩んだ末に昨年3月、大学の「ハラスメント(権力を悪用したいじめ)委員会」に所長の行動を指摘した報告書を提出した。「報告書を出した後、委員会の人と一度だけ相談しました。解雇され帰国した後に、大学の事務局長が「報告書を撤回する心境の変化があるか」という内容のメールを送って来ました。私の腹を探るつもりだったのでしょう」。彼女はこの報告書が解雇措置と関係あるのではと考えている。「報告書の内容だけ見れば、所長は解雇されて当然です。そうなれば彼を任命したり推薦した人々も、ぞろぞろと問題になります。報告書を提出した後、ある同僚教授が『所長は日本会議ラインだ。触れれば大変なことになる』と耳打ちしたりもしました」

 「私が先例になれば学問の自由はなくなります。同僚教授がこう言いました。『あなたのような目に遭わないと言える教授はいない。誰もがあなたのようになりうる』と」。彼女は現在、世界政治学会人権文科会長を受け持っている。イルテル・ツーラン世界政治学会会長と米国際学会人権文科会長、米政治学会会長などの学者が解雇措置の不当さを指摘する意見書を送ったと話した。「解雇が人権の侵害であり、学問の自由を剥奪する行為であり、手続きも無視したとのことが共通した指摘です」。日本の国際キリスト教大の稲正樹教授など、日本の多くの教授も支援の意思を明らかにしたと話した。

カン・ソンマン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:6/5(月) 17:47
ハンギョレ新聞