ここから本文です

大阪市の人工島「咲洲」、条例改正で「負の遺産」解消なるか

6/6(火) 6:30配信

ZUU online

大阪市住之江区の人工島・咲洲(さきしま)の建築制限を緩和する条例が、市議会で改正され、施行された。ホテルやマンションの建築を条件付きで認めるもので、訪日外国人観光客の急増で不足が続く宿泊施設を確保するのが最大の目的だ。

咲洲はバブル期に大型施設を建設したものの、第三セクターのワールドトレードセンター(現・大阪府咲洲庁舎)やアジア太平洋トレードセンターが経営破たんし、市に多額の負債を残した。今も草の茂る遊休地が広がるだけに、市はホテルやマンション誘致で一気に開発を進めたい考えだ。

■業務エリアでホテルやマンションの建設が可能に

規制が緩和されたのは、市が1989年の都市計画決定で副都心を目指すと位置づけていた咲洲の業務限定エリア・コスモスクエア1期地区約70ヘクタールの一部で、ホテルやマンションを組み合わせた複合施設の建築が可能になった。

コスモスクエア地区は市の誘致に応じ、スポーツ用品のミズノ <8022> 、日立造船 <7004> が進出したものの、バブル崩壊後はオフィスの立地が滞っている。大阪府咲洲庁舎となったワールドトレードセンターの付近には、広大な遊休地が広がり、草が生い茂ったまま。人通りは少なく、かつて想定した臨海副都心に程遠いのが現状だ。

北側のコスモスクエア2期地区は2004年に都市計画を見直し、一部にマンションが立地したが、1期地区は建築規制でホテルやマンションが建てられず、開発が遅れてきた。地区内では総合商社の住友商事 <8053> 、伊藤忠商事 <8001> が、それぞれ2ヘクタールを超す土地を所有する。ともに今後、市と連携して対応を検討するもようだ。

さらに、市はコスモスクエア駅近くの遊休地を売却したい考え。3年前に開発事業者を募ったものの、応募がなかった場所で、7月まで事業者からの提案について話し合いを進める事前確認を実施し、複数の応募があればプロポーザル入札、単独の応募しかなければ土地売却の審査に入る方針。

大阪観光局によると、2016年に大阪府内を訪れた外国人観光客は対前年比3割増の941万人。宿泊施設の稼働率は東京を上回る混雑ぶりで、予約の取りにくい状況が続いている。市都市計画課は「市内の宿泊施設不足に対応するのが最大の狙い」と説明したが、規制緩和を遊休地開発の好機とも受け止めている。

■開発の遅れはニュータウンの人口減少にも影響

咲洲は市が埋め立てたベイエリア3島の1つで、広さ約1000ヘクタール。北部に大型施設が集まるコスモスクエア、中央部にニュータウンの南港ポートタウン、外縁部にふ頭など港湾施設が置かれている。

バブル全盛期の1988年に策定したテクノポート大阪計画により、市主導で数々の大型施設が建設された。しかし、バブル崩壊で計画がとん挫し、第三セクター方式で運営した大規模複合施設のワールドトレードセンターとアジア太平洋トレードセンターが経営破たんしている。

ワールドトレードセンターは1193億円、アジア太平洋トレードセンターは3065億円の総事業費がかけられたが、ともに市の財政を困窮させる負の遺産となった。このうち、ワールドトレードセンターは2010年、わずか86億円で大阪府に譲渡され、府咲洲庁舎に生まれ変わっている。

一方、南港ポートタウンは広さ約100ヘクタールで、1977年から入居が始まった。緑豊かな街並みを整備し、ピーク時の1990年には3万2000人の人口を抱えたが、建物の老朽化や副都心開発の遅れが響くなどして人口減少に転じている。

市が推計する2015年の人口は2万1000人。高齢化も深刻で、65歳以上のお年寄りが占める割合は市平均を5ポイントも上回る31.7%に達した。空き家が増加する一方で、外国人の入居が増えている。

■市は舞洲、夢洲と合わせ、ベイエリア副都心化に全力

市は財政上の重荷となってきたベイエリア3島の開発を進め、関西経済復興の起爆剤にしようと考えている。最も北にある此花区の舞洲(まいしま)はプロ野球のオリックスやサッカーのセレッソ大阪などプロスポーツの拠点と大型物流施設を誘致した。

真ん中にある此花区の夢洲(ゆめしま)は大型コンテナ船を係留できるコンテナバースが立地しているほか、国が立候補した大阪万博の会場、府と市が誘致を進めるカジノを核とした統合型リゾートの候補地になっている。

市はこれらの開発計画と並行し、咲洲の規制緩和で湾岸エリアの開発を一気に進めたい考え。吉村洋文市長は記者会見で「湾岸エリアがその都市の一等地になるのが世界の常識。民間の力を活用し、コスモスクエア地区を多くの人でにぎわう場所に変えたい」と意欲的に語った。

市は阿倍野再開発の失敗やうめきた再開発2期事業など大型事業の影響などから、今後10年間収支不足が続く見通し。咲洲の遊休地をこれ以上遊ばせておく余裕はない。

高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

ZUU online

最終更新:6/6(火) 6:30
ZUU online

チャート

ミズノ8022
644円、前日比-11円 - 8/18(金) 15:00

チャート

日立造船7004
520円、前日比-3円 - 8/18(金) 15:00

チャート

住友商事8053
1518円、前日比-16円 - 8/18(金) 15:00