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トランプ大統領が離脱表明「パリ協定」とは 坂東太郎のよく分かる時事用語

6/7(水) 8:30配信

THE PAGE

 アメリカのトランプ大統領が「パリ協定」からの離脱を表明しました。パリ協定とは、「京都議定書」に代わる温暖化対策の新たな国際的枠組みで、2020年以降の取り組みを定めたものです。2015年12月の「COP21」と呼ばれる国際会議で採択され、6月6日現在、148か国・地域が締結しています。しかし「画期的」と評されたこの協定は、波乱含みの展開となってしまいました。パリ協定の内容と、それに至る温暖化対策の歴史を振り返ります。

【写真】米国はなぜパリ協定から離脱するの? その影響は?

米中や途上国も参加した新しい枠組み

《パリ協定の主なポイント》
(1)途上国を含むすべての国が参加する
(2)産業革命(18~19世紀)前からの気温上昇を2度未満に抑制し、さらに1.5度までに抑える努力にも言及
(3)21世紀後半には二酸化炭素などの温室効果ガスの排出と森林などによる吸収を均衡させ、排出量を実質ゼロにする

 先進国だけではなく途上国も参加したことが最大の成果です。2016年9月には米国と中国もそろって批准しました。2012年の二酸化炭素排出量(317億トン)は、途上国にカウントされている中国が26%(世界一)、インドが6%(同4位)と2カ国だけで約32%。先進国のアメリカ(16%)、欧州連合(EU)11%、日本4%の合計を上回っています。大気に国境はないので途上国が何らかの抑止策を講じないと削減効果が極めて怪しくなるという現実が存在します。

 途上国の排出量増の主因は経済発展です。過去に多くの温室効果ガスを排出し、成長を実現してきたのが先進国。「排出量が増えている途上国も応分の負担を」という主張に対して、途上国の「温暖化は先進国の責任だ。自ら豊かさを実現させておいて後を追おうとする我々にかせをはめるのはおかしい」という反発がぶつかり合って、にっちもさっちもいかなかったのが過去の議論でした。

 そこで「パリ協定」では「それぞれの国情と能力にあわせて」努力せよとの文言で参加国がそれぞれ目標を定めて報告し、5年ごとに状況を点検すると決めました。明確な削減目標の数値義務化は見送られ、「実効性はあるのか」という不安はあるものの、国際社会が注視している中での点検があるので補えると評価する声も挙がっています。

 合意の背中を大きく押したのが、水没の危機に瀕する小さな島しょ部の国々が中心になった「野心連合」の登場でした。島しょ国にとっては先進国も途上国もなく、温室効果ガスの削減がないと国家存亡の危地に陥ってしまいます。相変わらずの「先進国vs.途上国」の言い合いで会議が停滞しかねないところに「我々にとって必要なのは2度未満どころか1.5度未満だ」と野心的な提案をし、温暖化阻止に積極的なEUと連携。最後はアメリカまで乗っかって旋風を巻き起こしました。

 先進国のうちアメリカは「2025年に05年度比26%から28%減らす」、EUは「2030年に1990年比40%以上削減」、日本は「2030年に13年比26%減」です。途上国では中国が「2030年までに国内総生産あたり05年比60%から65%減らす」、インドは「2030年に国内総生産あたり05年と比べ33%から35%削減」など。他の国の削減目標を合わせても2度未満に抑えるのは厳しいとみられていて、5年ごとの検証でどこまで近づけるかが今後の焦点となりそうです。

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最終更新:6/12(月) 6:03
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