ここから本文です

自動運転よりライドシェアが熱い? 特許からみるIT企業の自動車ビジネス

6/6(火) 11:25配信

MONOist

 自動車に関する最新技術を集めた「人とくるまのテクノロジー展2017」(2017年5月24~26日、パシフィコ横浜)の講演会に特許・商標調査や特許分析の専門会社であるランドンIP アナリティクスグループディレクターの中島顕一氏が登壇。「特許分析から読み解くIT企業が進める次世代自動車技術の動向」をテーマに、特許情報から分析した自動車分野でのIT企業の動向を紹介した。

【「CarPlay」や「Android Auto」などの画像】

 ソフトウェア技術との融合が加速する自動車業界で、新たなプレイヤーとしてIT企業各社が参入している。最近では「Googleから分社したWaymoが完全自動運転のテスト車を生産」、「Appleが自動運転実験の認可を得て、走行実験を開始」といった報道から分かるように動きが活発化してきた。

 中島氏はAppleとWaymoに加えて、Microsoft(マイクロソフト)やIBM、Google、Amazon、Baidu(百度)、Uber、ソフトバンクのグループ会社SBドライブ、DeNAといったIT企業の特許を分析。この10社が出願人となった自動車関連の特許件数は、2007年以降約1100件あるという。

 保有する全ての特許に対して自動車関連が占める比率は、Waymoが約9割、Uberが約6割となっているが、それ以外の企業では1%前後にとどまる。しかし、2012年以降はWaymo、IBM、Baidu、Uberを中心に出願件数が大幅に増えている。特許の内容は、自動運転や運転支援、物体検知、バッテリーの充放電、ナビゲーション、交通情報監視、ライドシェア、ロジスティクス、モバイル、車載部品など多岐にわたる。

●特許出願傾向から見える、自動車分野の取り組みの違い

 特許の出願傾向から、IT企業各社の自動車向けの技術開発に対する姿勢も見えてくる。Microsoftは「特許出願件数が減少傾向にあり、ここからは積極的に次世代自動車の開発に注力する姿勢は読み取れない」(中島氏)。技術内容については地図やナビゲーションシステム、ユーザーインタフェースとエンターテインメント向けが多いという。IBMは交通監視などのインフラに関連した特許が多く、車両自体の技術よりもITソリューションサービスを前提としている傾向がみられる。

 Appleは、スマートフォンの「iPhone」やウェアラブル端末の「アップルウォッチ」のユーザーがより快適になるコンテンツを提供することに注力しており、「自動車そのものの技術を開発している傾向はここからは見られない」(中島氏)。

 Googleも、スマートフォン向けOS「Android」と地図やナビゲーションなどのアプリケーションサービスを中心にした出願が中心。自動運転を強く意識したものは少ない模様だ。一方、Googleの関連会社であるWaymoは自動運転の制御系からブレーキ、ショックアブソーバ、エアバッグなど部品まで幅広く出願しており、独自の自動車開発を進めている傾向が伺われる。

 Amazonは配送ルートや配送車両の管理・最適化に関する技術が多い。基本的に物流の効率化を狙った倉庫や配送の管理に特化している。ロジスティクスの効率化を自社のサービスに生かすことが目的のようだ。

●ライドシェア関連の特許出願は活発

 Baiduは、出願が中国に集中する傾向がある。自動運転制御の研究開発を行っている他、車両制御のテスト方法も出願している。これらの動きから見て「市場としては中国を第一に考えており、その中国でデファクトスタンダードを創っていこうとしていることが予想される」(中島氏)。Baiduはライドシェアの特許も出し始めており、シェアリングビジネスも視野に入れている可能性が高い。

 自動運転の特許出願は減少傾向である一方、ライドシェアに関する特許は2014年あたりから増加傾向にある。ライドシェアの分野では、WaymoがLyftと協業したり、Googleが相乗りサービスの交通情報を提供していたWazeを買収したりとこのところ大きな動きが見られる。中島氏はその動向を加味して「Waymoは、自動運転技術とライドシェア、そしてGoogleのサービスプラットフォームの組み合わせによって自動車市場に参入してくることも予想される」と分析する。

 Uberは経路選択・課金方法などライドシェア向けの特許を出願してきたが、2015年以降、自動運転の制御系の特許が増加している。今後、ライドシェアと自動運転を組み合わせたビジネスを提供してくる可能性が高い。

 日系企業はソフトバンクが協業している先進モビリティが自動運転で4件の特許を出願。DeNAはヤマト運輸と「ロボネコヤマト」を設立し、日産自動車の小型商用電気自動車を使って実証実験を行っている。ただソフトバンク、DeNAともに出願数は少なく、全体的に国内IT企業はサービスプロバイダーの強みを生かして大手自動車メーカーなどと実用化に向けた連携を行う傾向にあると中島氏は見ている。

 今回取り上げた、10社のうち中島氏は「Waymo、Baidu、Uberの3社は自動運転とライドシェアの技術に加えて既に強力なサービスプラットフォームを持っている。おそらく無人運転車のライドシェアが実用化され、そのサービスが彼らのサービスプラットフォーム上に乗ることで一気に展開する時が、次の大きな変化点となる」と予測する。

 特許情報による見通しではあるが、サービス側の技術やプラットフォームに強みを持ったIT企業が新たな市場を開拓する時代が近づきつつある。

最終更新:6/6(火) 11:25
MONOist