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遺伝子変異の有無で予防策が 卵巣がん治癒率アップのカギ

6/6(火) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーは、遺伝子検査を受けて乳がん、卵巣がんのリスクが高いことを知り、両方の乳房、卵巣・卵管の切除を行った。今後、日本でも特に卵巣がんの治療が大きく変わるかもしれない。

 アンジーのニュースで話題になったのが「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」だった。主にBRCA1、BRCA2の2つの遺伝子変異ががん発症に関係しており、遺伝子変異がない人よりがんになるリスクが高い場合を指す。

 卵巣がんの治療で注目されているのが、このHBOCだ。卵巣がんは早期発見が困難で、進行がんで見つかる人が多く、2人に1人が亡くなる。しかし、HBOCに対する治療が卵巣がん患者の寿命を延ばすことにつながるかもしれないのだ。慶応義塾大学医学部産婦人科・青木大輔教授(婦人科腫瘍専門医)によれば、卵巣がんの約10%に遺伝子変異が関係しているという。遺伝子変異の卵巣がんの90%を占めるのが、前出のBRCA1.2だ。

 遺伝子変異をチェックするには、家族歴がひとつの重要な指標になる。青木教授は、卵巣がんの患者から家族歴を聞き、本人の発症と家族の発症との関係を調べた。

 対象者は2009年から11年の間に受診した卵巣がん患者102人。すると、家族に卵巣がんがいる人は10人に1人、乳がん患者がいる人は約5人に1人、卵巣がんと乳がんの両方がいる人は25人に1人だった。

「遺伝子変異が疑われる人は二十数人。この中から6人が遺伝子検査を受けてくれたのですが、6人ともBRCA1あるいはBRCA2の遺伝子変異が判明しました」

 国内外の研究から、「卵巣がん・乳がんの家族歴があるとBRCA1.2遺伝子変異が約40%で陽性」「BRCA1.2遺伝子変異があると卵巣がんのリスクが20~40倍に上昇」といったことが明らかになっている。言い換えれば、遺伝子変異があることが事前に分かれば、予防策を講じられるということだ。

 今の段階で私たちが知っておくべきことは、次の3点になる。

■HBOC診療

 HBOCかどうかを調べる。家族に卵巣がん・乳がんの患者がいる、卵巣がん患者、若年性乳がん患者、両側性乳がん患者、男性乳がん患者などいくつかの項目があり、該当する場合は遺伝カウンセリングを受ける。その上で、BRCA1.2遺伝学的検査が必要かどうかが検討される。

「すでに発症している卵巣がん患者も対象に含まれます。また、若年性・両側性乳がん、男性乳がんは、そのものが遺伝的リスクが高いと評価されます」

■リスク低減卵巣卵管摘出術(RRSO)

 卵巣・卵管を摘出する手術だ。

「卵巣がんを発症していない人でBRCA1.2の遺伝子変異が見つかれば、RRSOが推奨されます。海外の研究では、RRSOを行うと、行わない人に比べて卵巣がん発症リスクが80~90%低減、乳がんが50%低減、総死亡率が60%低減といった報告があります」

 ただし、生殖能力を失う、自然閉経により心血管疾患リスク上昇、保険適用外による医療費の負担などいくつかの問題もある。たとえRRSOを選択しなくても、そのまま“放置”とはならない。経口避妊薬の服用など、利益・不利益を十分に話し合い、ベターな道を探っていく。

■PARP阻害剤

 遺伝子変異を修復する作用のある新薬の開発が進められている。

「BRCA1.2の遺伝子変異がある卵巣がんに対し、高い効果を発揮します」

 承認はまだだが、治験参加ということでPARP阻害薬の治療を受ける手はある。