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【のびやかに・浜木綿子】(1)初めて語る“波乱”芸道65年

6/6(火) 15:03配信

スポーツ報知

 女優・浜木綿子(81)は、今年芸能生活65年目を迎えた。戦後の宝塚歌劇で娘役スターとして活躍。退団後も舞台や、ドラマで代表作を生み、第一線を走り続ける。私生活では結婚、離婚を経験。俳優・香川照之(51)の母としても知られるが、女優、母親、女性として何を思い、考えてきたのか。初めての長期連載で語ります。

 浜木綿子です。今回、連載のお話にありがたいと思う反面、何度もお断りしようと思いました。正直に申しますが、私は昔から相当な「断り魔」なのです。「何もそこまで無理しなくても」という、もう一人の冷めた自分がいつも心の隅にいます。迷いを抱えると相手にも失礼なのでお断りするのです。そんな性格のため、仕事でもプロデューサー泣かせ、宣伝泣かせと言われているようです。

 ずっと「今」と向き合ってきました。芸能生活が65年目というのも初めて知りました。これまで数え切れないほど「波乱万丈の人生ですね」と言われてきました。自叙伝のお話をいただいても、遠慮してきました。

 なぜなら私自身、波乱万丈と思ったことが一度もないからです。1965年に結婚した市川猿翁さん(当時・市川猿之助)と別れたのは、照之が3歳のとき。いまもはっきり覚えています。20年以上の年月が過ぎ、息子から突然「おやじに会ってきた」と知らされたとき。歌舞伎界に入る決意を聞かされたとき…。確かに、腰が抜けるほど驚くこともずいぶんありました。

 でも波乱の人生、人生の波乱とは何でしょう。信じていただけないかもしれませんが、宝塚に入っても私の夢は、専業主婦になることでした。子供を産み、育て、お弁当を作って学校に送り出して。だんな様の帰宅を待ち、「お帰りなさい」と迎えて。戦中、戦後のどんなにつらいときも前向きで明るさを失わなかった母が、私の憧れ。いまも、白のかっぽう着姿で家事をする母の夢を見ることがあります。

 思いもしなかった離婚(68年)をしたとき、息子には申し訳ないと思いました。自分の生きてきた道は間違いだったのではないか、とも悩みました。「波乱」と言われることは、決して誇れるものでなく、恥ずべきことで、振り返るべきではない、と思い続けてきました。

 今年10月で82歳です。7、8月に舞台を控えていますが、ここ数年は「この仕事が幕引き(引退)になるかも」と覚悟して舞台に立ちます。たまにかかってくる息子からの電話の声にも、生きる力をもらいながら。「老い」にあらがいながら、静かに受け入れることも必要でしょう。

 この年齢になり、今のような穏やかで幸せな生活が送れることも、予想していませんでした。「人生はシナリオのないメロドラマ」とはよく言ったものです。これまでの感謝の気持ちを込めながら、恐る恐るではありますが、来し方をゆっくり振り返ってみようと思います。おそらく、照之の知らない話も出てくるのではないでしょうか。(構成 編集委員・内野 小百美)

 ◆浜 木綿子(はま・ゆうこ)本名・香川阿都子。1935年10月31日、東京都生まれ。81歳。53年宝塚歌劇団で初舞台。歴史に残る娘役トップのひとり。61年退団。東宝現代劇と契約。「人生は、ガタゴト列車に乗って…」(89年)で菊田一夫演劇賞大賞。ドラマ「おふくろ」「監察医・室生亜季子」シリーズなど。7月に博多、8月に東京で代表作「売らいでか!」に主演する。

最終更新:6/6(火) 15:05
スポーツ報知