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米政権 農業予算大幅削減 輸出増で農家配慮

6/6(火) 7:01配信

日本農業新聞

 米国のトランプ政権は、政府の歳出を10年間で3兆6000億ドル(約400兆円)削る大胆な提案を示した。中でも農務省予算は、主力である農業保険分野や低所得者向けの食料支援で大なたを振るった。政権は農産物輸出拡大を進めることで、支持基盤の農家への配慮を見せる。対日協議にも影響する恐れがある。

 パーデュー農務長官は2日、モンタナ州の会合で演説し、「(低所得者に)ひもじい思いをさせたくないが、予算削減は必要なもの。限られたお金の中で全力を尽くす」と強調して理解を求めた。さらに、「大統領はとても貿易収支の改善に熱心だ。中国はもっと米国産を買う必要がある。今年度、中国は223億ドルの米国産農産物を買う最大の海外顧客になる見込みだ」と胸を張り、輸出促進に熱心な姿勢を示した。

 貿易赤字を理由にした農産物購入圧力の「論理」は、中国だけではなく、日本に向かう可能性もありそうだ。

収入保険 食料支援 2本柱に大なた

 農務省予算は、主に都市向けの食料支援と、穀物農家らを対象にした農業支援の2本柱で、双方とも大幅削減に見舞われた。特に農業支援の分野では、現在の2014年農業法の中核となる農家経営単位の収入保険予算も36%削減する方針。1戸当たりの支払額に上限を設けたり、保険料の負担割合を見直したりして農家側にしわ寄せが来る内容だ。

 内容を分析した米国の専門家は地元メディアに対して「農家にとって保険制度の魅力が大幅に低下する」と説明している。

 米国の保険は、日本でも収入保険制度導入に際し参考にした。農家に対する補助金を整理して、経営を丸ごと安定させる農政の切り札として登場したが、減税、防衛強化に熱心なトランプ大統領は容赦なく切り込んだ。

保守系財団関与 言い分丸のみか

 「今回の低所得者向け食料支援と農業予算削減の背景には、保守系シンクタンクのヘリテージ財団の関与がある」と分析するのは農林中金総合研究所の平澤明彦氏だ。米共和党系団体で、政府の保護を徹底的に排除する茶会運動に大きな影響力を与えてきた。農政にほとんど関心がないトランプ氏が財団の言い分を丸のみした可能性がある。

 農業者の間には、昨年11月の選挙でトランプ大統領を支援したにもかかわらず、農業予算を削減しようとしていることへの不満が出ている。USAライス連合会などは厳しく批判したが、その他の主要な農業団体などは、農業予算の大幅カットに対して、声高の反発をしていない。米国の農業ジャーナリスト、ポール・クエック氏が、その理由を説明する。

 「米国憲法で予算を決めるのは議会。トランプ大統領が出した教書の数字は、これから議会で始まる農業政策の長い議論のたたき台にすぎない。彼はビジネスマンだから、取引材料として極端な高めの球を投げたのだろう」

 日本のように政府が提出する予算案が、ほぼそのまま決定される仕組みと米国の仕組みは大きく異なる。農業団体側は、トランプ政権や農務省ではなく、予算確保に向け議会への働き掛けに本腰を入れることになるだろう。(特別編集委員・山田優)

日本農業新聞

最終更新:6/6(火) 7:01
日本農業新聞