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【千葉魂】祖父にささげた逆転2ラン 初観戦の試合で放った鈴木

6/6(火) 10:53配信

千葉日報オンライン

 打球はライトスタンドに吸い込まれていった。1点ビハインドの八回2死一塁。打席に入った鈴木大地内野手はカウント2ボール、1ストライクからイーグルス先発・岸のスライダーを振り抜いた。逆転の2ラン。ボールが大きな弧を描き、右翼に消えていくのを見届けるとチラッと三塁側内野席上に位置する個室に目を向けた。その姿を少しだけ確認するとうれしさが、またこみ上げてきた。

 「きょうは勝ててよかったです。実は88歳になる母方のおじいちゃんが初めてマリンに試合を見に来てくれていたんです。打てて、勝ててよかったです」

 試合後、スタンドのファンへの挨拶を済ませると何度も三塁側の個室で応援をしてくれた親族たちに手を振った。

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 祖父の見守る試合でどうしても打ちたかった。これまで中学、高校時代も何度か試合に応援に来てくれたが、打っている姿を見せたことはなかった。プロ入り後も高齢ということもあり、なかなか静岡から千葉まで足を運ぶことはなかった。それでも毎年、新年に顔を合わせるたびに誘った。が、なかなか首を縦に振ることはなかった。「もしかすると、観戦に来た試合に自分が打っていないことを気にしていた部分もあったのかもしれない」。ここまでの5年間は観戦に来ることなく迎えた2017年の正月。親族が集まった場で、いつも以上の強い気持ちで誘った。「今年こそ絶対に見に来てよ。個室を用意するから」。ゆっくりと観戦をできるようにスタンドの一般席ではなく、個室を準備。寒くもなく、まだ暑すぎない5月21日のデーゲームが設定された。鈴木の両親が運転をする車での日帰り旅行。祖父に頑張っている姿を見せようと試合前からいつも以上に気持ちを入れた。

 「今は年に1回ぐらいしか会えないけど、そのたびに誘ってきた。毎年、行くたびに家に飾られているマリーンズグッズが増えていた。元々はそんなに野球に興味がなかったのに、そうやって応援してくれている姿はうれしくて心にしみた。いつもテレビで見てくれていると聞いていたけど、どうしても自分が頑張っている姿を生で見てもらいたいと思っていた」

 祖父の家の前で野球をしていて窓ガラスを割って怒られた事は今となっては、いい思い出だ。88歳という年齢を考えると、毎年のように千葉まで野球観戦というのは肉体的になかなか難しい。だから、なんとかこの試合で勝ちをプレゼントし、できれば活躍をしている姿を見せたいと願い、グラウンドに向かった。

 「最高の結果が出て、うれしかった。打った瞬間に手応えがありました。なにか見えない力のようなものを感じました」

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 ヒーローインタビューを終えると、親族が待つロビーに向かった。そしてお立ち台に上がった選手しかもらえないヒーローマーくんの人形を祖父に手渡した。静岡から駆けつけてくれた祖父のうれしそうな顔を見て、こみ上げる想いがあった。これからはまたテレビでの観戦になるだろう。でも、一度だけ。目の前で試合を決める大きな一発を見せ、グラウンドとスタンドから大きく手を振り合うことができたことは二人にとって忘れられない思い出となったはずだ。鈴木大地の戦いの日々はまだまだ続く。ファンのため、チームのため、そして家族のために。勝利だけを追求する。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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