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1億円当選メール詐欺に「洗脳」 長崎の51歳 カード購入費 母に無心

6/6(火) 10:13配信

長崎新聞

 「あなたに1億円が当たりました」

 昨年4月下旬、ある日の朝。長崎市の会社員、大森克典(51)はスマートフォンに届いたメールに気付いた。大森は「世の中にはいいこともあるもんだ」と胸を躍らせた。

 送り主は「カスタマーサービス」。文面を読むと、「資産1兆円の大金持ち」が人々に成功のチャンスを与えるため現金を分け与えていて、抽選で大森が選ばれた-のだという。

 1億円を受け取るための手続きも記されていた。まず、コンビニで3千円分の「アマゾンギフト券」を買う。次に、カード番号や領収書などの写真を指定したメールアドレスに送る。大森はその日のうちに指示された通りにした。

 「こんな少額で1億円もらえるならお得だ」と大森は思った。

 落とし穴があった。「ギフト券」のようなプリペイド式カードはインターネット決済で使用される。カードに記載されている番号は「暗証番号」のようなもので、他人に教えると、購入額を勝手にネット上で使われる危険性がある。大森はそれを知らなかった。

 送り主から返信が来た。「不足しています。5千円分送ってください」。大森は再びコンビニに走った。すると、またメールが届いた。追加購入を指示する内容だった。1万、2万、5万...。要求金額は次第に大きくなっていった。

 大森は仕事中、暇な時間を見計らって1日に何回もコンビニに行った。10店舗以上をバラバラに回った。送り主の指示だった。店員に大森の行動が不審だと思わせないためだ。巧妙だった。購入額は多い日で30万円に上った。それが6日間続いた。

 3日目ぐらいに「おかしいな」と気付いた。でも、1億円あれば買ったばかりの新車のローンもすぐに払える。すでに多額の金をつぎ込んでいる。後には引けなかった。「早く写真を送らないと今まで払った分を返せず、1億円も渡せません」。そんなメールが大森を焦らせた。

 貯金が尽きると、同居する70代の母親に金を無心した。理由は言わなかった。だが、何回かに分けて20万円近く借りたところで、「あんた、何に使いよるとね」と母親に問い詰められた。母親が家族に相談し、警察に通報。その時もまだ、大森は1億円もらえると信じていた。

 結局、詐欺だった。被害額は計127万3千円。「言ってしまえば、『1億円』という言葉に洗脳されていた。気持ちも高ぶっていたんでしょう」と大森。残ったのは後悔と、何の価値もない50枚以上のカードだけだった。

  =文中仮名、敬称略=

   ◆   ◆

 メールや電話などを使い、不特定多数の人に対してアダルトサイト利用料や未公開株の購入など架空の話を持ち掛け、金銭を請求する「架空請求詐欺」。県内では2016年までの5年間に、計193件(総額約7億7400万円)の被害が確認されている。

長崎新聞社

最終更新:6/6(火) 10:13
長崎新聞