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「レクサス」が陸海空へブランド展開する理由

6/6(火) 8:11配信

ニュースイッチ

先行する高級車メーカーの歴史と戦う 「トヨタではなくレクサス」

 トヨタ自動車が陸・海・空・宇宙を舞台に、高級車「レクサス」のブランド価値向上の施策を積極展開している。クルマ自体の魅力向上はもちろん、プレジャーボートの商品化や空中を移動するホバーボードの試作、映画製作会社とタイアップした宇宙船のデザインなどと幅広い。1989年に米国で産声を上げたレクサスは、高級車としてはまだ若いブランド。100年以上の歴史を誇るメルセデス・ベンツなどの競合メーカーに挑む。

 「我々の新しい時代の始まりを象徴するモデルです」。トヨタの福市得雄専務役員は、3月に発売したレクサスの旗艦クーペ「LC」を、こう表現する。LCの基となるスケッチは「到底実現できない」と社内で言われたほどとがっていたが、社内外の強い思いが商品化に導いた。

 陸を駆けるレクサスは海にも船出する。5月下旬に友山茂樹専務役員がレクサスブランドのプレジャーボートを商品化する意向を表明した。1月に米国で世界初披露したレクサススポーツヨットコンセプトを改良し、東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年までに発売する。

 さらに15年には磁気浮上技術で低空走行するホバーボードを試作。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の2作目の舞台が15年で、そこに描かれるホバーボードを連想させると話題になった。

磁気浮上技術で低空走行するホバーボード

 トヨタの社内カンパニー、レクサスインターナショナルでプレジデントを務める澤良宏常務役員は「ものすごい反響で(ウェブへの)書き込みも大変ポジティブ」と言い切る。

 宇宙では、17年に米国で公開予定のリュック・ベッソン監督のSF映画に登場する1人乗り宇宙船「SKYJET」のデザインで協力した。船体にレクサスのスピンドルグリルを使用するなど、ブランドの存在感を示している。

「ラグジュアリーブランドは『物語』が大切」

 レクサスの世界販売台数は16年(暦年)に67万7615台と4年連続で過去最高を更新した。順調にブランドは成長している。ただ、ベンチマークするのはジャーマン3と呼ばれるドイツの高級車メーカーのメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ。この3社は1社当たり年間200万台規模を売り切る。レクサスとの差は歴然だ。

 「フォルクスワーゲン(VW)のアウディとは紹介されない」。トヨタ首脳はVW傘下のアウディを引き合いに、トヨタのレクサスではなく、レクサスとしてのブランド確立を一段と進める強い思いをにじませる。

  レクサスがさまざまな分野でブランドを訴求するのは、先行する高級車メーカーの歴史と戦うため。澤常務役員は「ラグジュアリー(高級)ブランドは『物語』が大切」と説明する。

 うんちくが多いほどブランドに深みが増すことから、レクサスは特に欧州では若いブランドという認識に、はね返されてきたという。その若さを逆手にとって、積極的なブランド戦略を進めているのが今のレクサスだ。ブランドイメージが定着しているライバルと違い「新しいことをすることがレクサスらしさとなる」(澤常務役員)と、独自の物語を紡ぐ。

日刊工業新聞名古屋支社・今村博之

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