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ヒップホップの大衆化、現役ラッパーはどう思う TKda黒ぶちに聞く

6/6(火) 12:30配信

MusicVoice

 現在、フリースタイルラップがブームだと言われている。アンダーグラウンドで人気を博していたヒップホップMCバトルは昨年、テレビ番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)が始まった頃から急速に浸透し、学校から職場でも話題になっているそうだ。テレビCMでもラッパーの顔を良く見る様になり、一頃の「B系」「チェケラッチョ」というネガティブなイメージは払しょくされつつある。そんな時代の分かれ目ともいえる今の現象を現役のラッパーはどう思っているのだろうか。今回は、実際に『フリースタイルダンジョン』にも出演した埼玉・春日部在住のラッパー、TKda黒ぶち(ティーケーダクロブチ)にインタビュー。ヒップホップの本場である米NYに住んでいたこともある彼が感じる日本と米国の違いとは。ヒップホップとの出会いからシーンの展望などを語ってもらうなかで、大衆とヒップホップの距離感が見えてきた。

失恋で狙った一発逆転、ヒップホップの始まり

――ヒップホップとの出会いは?

 ヒップホップと出会うまでは音楽は全く聴かなかったんですよ。CDなんて1枚か2枚くらいしか聴いた事がなくて。ヒップホップに出会ったのは13歳の時。学校の部活中に校庭でRIP SLYMEの「雑念エンタテインメント」が流れて、その時に「なんじゃこりゃ!?」と思って…それがきっかけでヒップホップを好きになっていきました。今でもその曲は好きです。

 当時、「RIP SLYMEはポップだぜ」という友達がいて、その人がBUDDHA BRANDの『人間発電所』とLAMP EYEの『証言』(どちらも日本語ラップのクラシック的作品)を持ってきてくれたんです。その2枚で完全にヒップホップを好きになりました。ラップしている内容がどうこうよりも、声とかリズムから入った感じです。そこから段々と、言葉の内容に「ヤバい」と感じる様になっていきました。

 当時はポップスがあまり好きじゃなかったんです。ベタなメロディが大嫌いで。なんか、胡散臭い印象だったんですね。でも自分の中で前衛的なリズムがヒップホップでした。

 ラップを始めたのは高校1年生の時です。当初はラップではなくてDJになりたかったんですけど。同じクラスにいた友達のお兄ちゃんがラップをやっていて、その友達が僕の事を話したら「会いたい」と。それで会ったらとてもイカツイ人で。出会い頭に「君の事、聞いてるよ。ラップやりたいんでしょ?」と言われて、つい「はい」と(笑)。それでその方にラップの作法を教わったんです。<韻>、<小節>、<言いたい事をラップする>、<嘘はついちゃいけない>とか。クラブとかに連れて行ってもらって、肌で感じて勉強しました。

 だけど、きっかけはそれだけじゃないんですよ。高校の時、本気で好きな子がいて、初恋ですね。その子に超裏切られて。その初恋に敗れて、(部活の)野球も中途半端に辞めて、どこかで一発逆転したいなというのがありました。それで「もう、これはラッパーになろう」と。人生をひっくり返してやろうと思ったんです。

 家が貧乏で…とかではないんですよ。ただ家が母子家庭だったというのはありました。でもヒップホップには<父親がいない>という事を歌った曲もあって。そういう生々しさを歌っても良い、という事にもやられていたんです。自分の中で言い出せずに抱えていた問題を、音楽にしてばらまいて良いんだと。

 そこからラップを書き始めました。ちょうど「ラップをやりたい」という奴に偶然出会って、一緒にステージに上がろうと約束したんです。当時、「春日部ing」というクラブがあって。そこで初めてラップをしました。オーガナイザーの人に頼み込んで出してもらったんです。2MCで1曲限定でしたけどね。既存のビート(ラップなしの曲)を使って、オリジナルの「感謝」というタイトルのラップをしました。今のスタイルとは正反対の感じで、相方は歌詞が飛んじゃいましたけど、僕は飛ばなかった。「あ、始まったな」という感じがありました。その“初ライブ”はいまだに忘れません。

 そのユニットは、もう1回ライブして、解散してしまいました。突然、相方が「もうやらない」と言い出して。それでソロ活動を始めました。最初は<TK>という名前でやって。でも当時、黒縁メガネをかけながらラップやっている人はいなかったんです。怖い人や、ヤンキーばかりで。馬鹿にされたりもしましたよ、「黒縁メガネかけながらラップしやがって」みたいな。でも僕は「同じ人間なんだから、言いたい事は共通にあるじゃん」と思っていて。

 あと、同じ<TK>というラッパーが関西にいると聞いていたので、「自分は黒縁メガネをかけて、言いたい事を言いたくてラップやってんだ>という事で<TKda黒ぶち>と付けました。ニューヨークのラッパーで名前の真ん中に<da>を付ける人がいたので、それへの憧れもありました。

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最終更新:6/6(火) 12:30
MusicVoice

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