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青木繁の「海の幸」緞帳、廃棄決定に孫「一部だけでも残して」 「健康被害の恐れ」市は難色 福岡県久留米市

6/6(火) 11:16配信

西日本新聞

 福岡県久留米市が、同市出身の洋画家、青木繁(1882~1911)の代表作「海の幸」を再現した緞帳(どんちょう)の廃棄処分を決めたことについて、青木の孫で、東京で九州郷土料理店を営む松永洋子さん(72)が「一部だけでも残せないか」と市側に申し出ている。市は難色を示している。

 「海の幸」は、青木が千葉県館山市を写生旅行で訪れた際に描いたもので、同郷の坂本繁二郎や恋人の福田たねも同行していた。諸説あるが、海の幸には、青木自身やたねの顔をモデルにした人物も描かれているとされる。松永さんの父親で、作曲家の福田蘭童さんは、青木とたねの間に生まれた。

遺族にとって心のよりどころに

 緞帳は1969年開館の旧市民会館(同市城南町)のステージに掛かっていた。松永さんは開館当時、蘭童さんに誘われ、東京から一緒に緞帳を見に行ったことがある。「その立派さに本当にびっくりした。構図も幕にぴったりで、こんな緞帳は日本にはないね、と話をして、父も感動していた」と振り返る。その後も、遺族にとって心のよりどころになっていたという。

 旧市民会館の閉館に伴い、久留米市が緞帳の譲渡先を探していることは知っていたが、5月下旬に知人を通じ、裁断して廃棄する市の決定を知った。「身を切り刻まれるような気持ちになった。せめて青木とたねの顔の部分をいただけないか。費用は持つので、額に入れて飾りたい」。市の担当者に電話したが色よい返事はなかった。

市民文化部は「今の状況では難しい」

 市によると、2013年に緞帳を専門業者にみてもらったところ、繊維の劣化が激しく、寿命を迎えていた。さらに、カビやダニ、ほこりがたまっていて、仮に一部を裁断して取り出す場合、作業時や再利用先で、健康被害を招きかねないという。松永さんの申し出について、市民文化部は「今の状況では難しい」としている。

 「緞帳を何とかしたいという気持ちは、多分私だけじゃないと思う」と松永さん。久留米を訪れ、楢原利則市長に直訴することも考えているという。

西日本新聞社

最終更新:6/6(火) 11:16
西日本新聞