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錦織がベルダスコとの一戦で躍動、勝利と同時に〈感覚〉つかむ [全仏テニス]

6/6(火) 15:00配信

THE TENNIS DAILY

 フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコーと)は大会9日目、男子トップハーフの4回戦と女子ボトムハーフの4回戦が行われ、それぞれベスト8が出揃った。第8シードの錦織圭(日清食品)はノーシードのフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)に0-6 6-4 6-4 6-0で逆転勝ち。全仏オープンでは2年ぶり2度目の準々決勝進出を決めた。

錦織がベルダスコを倒して2年ぶりの8強入り [全仏オープン]

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 スタンドが割れるような、錦織へのあんな拍手と歓声を久しぶりに聞いたような気がした。もちろん、スーパーショットはほかにもいくらでもあるだろう。しかし、場所や人、あらゆる環境が、そのショットをより記憶に残る一球にする。

 第3セット第7ゲームの一場面だった。

 1回戦で若手注目株のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を破り、3回戦では第22シードのクレー巧者パブロ・クエバス(ウルグアイ)にストレートセットで圧勝してきたベルダスコは、元世界7位の33歳。ランキングこそ今や37位だが、重いスピンのかかったフォアハンドは健在で、30歳になってますますベテランの妙味を増す数々のプレーヤーの一人である。

 そのベルダスコが第1セットを6-0と圧倒。カラリとした晴天の下、ボールがよく弾み、ベルダスコのスピンがより強力に錦織を襲った。

「ほとんど何もできなかった」と振り返った錦織だが、第2セットはラブゲームでのブレークでスタートすると、すぐにブレークバックを許すものの、第4、第6ゲームをデュースにもち込まれながら耐えてキープ。勝機につながった。

「なるべく深いボールを返して、単調にならないようにした。少しずつ自信がついていって、攻略法が見えてきた」

 耐えた末に第9ゲームでブレークに成功。このゲーム、10打を越える長いラリーはすべて錦織がものにした。ベルダスコはそのしぶとさやスポーツマンシップでも〈魅せる〉選手で、錦織との試合はいつも接戦で見応えのあるラリーも多い。

「コートに入ったら周りの声は聞こえない。まあ聞こえなくはないですけど、周りのことを気にしている場合ではない」と言う錦織だが、観客のボルテージが上がるにつれてプレーのレベルが上がっていった。ケガのせいなのか、今ひとつ上がらない調子のせいなのか、この数ヵ月、控えめだった錦織らしい躍動感やキレのあるスーパーショットが頻繁に飛び出すようになる。

 その口火を切ったのが、冒頭に触れた第3セット第7ゲームだった。第3ゲームでブレークに成功したものの第6ゲームでブレークバックされ、その直後のゲームだ。4度目のデュースで20本の息詰まるラリーの最後は、ベルダスコのスマッシュを弾き返したバックハンドのアングルショット。ベルダスコの足が止まる鮮やかなウィナーになった。

「あのゲームは今日一番大きかったゲームで、スマッシュを返したポイントは今日一番よかったというか、思い出に残っているポイントです」

 試合後は少しはにかむように振り返ったが、このセットを6-4でものにすると、第4セットは第1セットのお返しとばかりに6-0のスコアをつけ、最後はラブゲームで締めくくった。

 準々決勝の相手は第1シードのアンディ・マレー(イギリス)。最近では、昨年の全米オープンの準々決勝で錦織が勝ち、トップ8によるツアーファイナルズのラウンドロビン(グループ総当たり戦)でマレーが勝っている。

 イギリス人の記者に、全米オープンでの試合ではどんなことを覚えているかと聞かれると、「実は僕は記憶力がすごく悪くて...。勝ったか負けたかすら覚えてないです。勝ったんですか?」と答えた。〈因縁〉だの〈リベンジ〉だのといった重い概念を、のんびり気質でひと吹きし、ほのぼのとした笑いを誘った。ムードは上々だ。手首、肩、腰、と連鎖していたケガや痛みのことなどすっかり忘れてしまうほどに。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)

最終更新:6/6(火) 15:00
THE TENNIS DAILY