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栄養指導のプロが指摘 減量目的の食事で「かえって太る」

6/7(水) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 肥満気味の人は、耳にタコができるほど「健康のために減量を」と言われていることだろう。しかし、2人の栄養指導のプロは「減量を目的にした食生活は、かえって肥満を招く」と口をそろえる。

「フーズアンドヘルス研究所」主宰の幕内秀夫氏(管理栄養士)は、ある事例を挙げる。

 知的障害者の施設を運営する人から、相談を受けた。肥満が多く困っており、医師、栄養士から減量を目的とした食事指導を受けたところ、指導を受けた人の精神状態が極めて不安定になり、体重も増えてしまった。どうすればいいか―――。

「私が勧めたのは、おやつをまんじゅうなどの和菓子にすることです。食事の内容や体重には触れず、まずはそれから始めてくださいと言いました。結果、ほぼ全員の精神状態が安定し、体重も落ちました」(幕内氏)

■カロリー制限は不要

 肥満大国・オーストラリアのクリニックなどで栄養指導を行う染原風生氏(管理栄養士)も、クライアント(患者)に対して「食事量を減らしなさい。カロリー制限をしなさい」とは言わない。指導の中心は「対策とマネジメント」だ。

 さまざまな人種が住んでいる国ということに加え、経済状況にも差があり、クライアントごとの食事情は異なる。たとえばイスラム教徒ならラマダン(断食)があり、キリスト教徒ならイースター(復活祭)の時に食べるものが決まっている。それを大前提に、血糖値を下げなくてはならない。ここで重要になるのは、患者の「できること」を引っ張り出し、それを実行に移すための具体的な方法だ。

「『体重を減らして健康に』というアドバイスは、健康をむしばみます。ダイエットや“体重をコントロールするための行動”は、むしろ体重増加につながることが、複数の研究で証明されています。食生活の改善や運動によって、減量しなくても健康効果を得られるのです」(染原氏)

 幕内氏、染原氏の2人が「減量」を目標に掲げた食生活を否定する理由は、カロリー量を減らせば必然的に食事量が減り、体に必要な栄養素が量的あるいは質的に不足するからだ。

「減量を第一に考えた食事を続けると、体のエネルギー量が足らなくなります。でも痩せていくので、本人は減量に成功しているように思う。しかし、そのうち食べたいという欲求が出てきます」(染原氏)

 ほとんどの人は欲求を抑えきれず、過食に走ってしまう。それが「減量に失敗した」というストレスにつながり、次のダイエット願望を生む。

■大切なのはライフスタイルに合った食生活

「ダイエットから食事制限をして最終的にリバウンドする『ダイエット・サイクル』を招き、続けるほど心身ともに不健康になっていきます。また、まれに食べたい欲求を極限まで無視する人もいますが、それは拒食症という別の問題を生じさせます」(染原氏)

 冒頭で幕内氏が「食べる量を減らさず、減量に触れず、和菓子を勧めた」のは、医師による減量のための食事指導で患者のストレスが高じ、精製した砂糖たっぷりの清涼飲料水を飲み過ぎるようになったことが体重増加につながっていると気付いたからだ。和菓子で清涼飲料水の飲み過ぎはなくなり、摂取カロリーが落ち、減量に至った。あくまでも体重は結果だ。

「質の高いライフスタイルに合った食生活を理解して身に付ければ自然と減量になる。リバウンドもありません」(幕内氏)

 減量しか見えておらず、自分にとってベターの食生活は何かを意識することが抜け落ちていれば、本末転倒だ。