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音楽の楽しみを再発明する「HomePod」とiPadの魅力を再発明する新「iPad Pro」を林信行が解説

6/7(水) 18:47配信

ITmedia PC USER

 毎年恒例の世界開発者会議「WWDC」。2017年の最年少参加者はオーストラリアから参加した10歳のYuma Soeriantoくん、最高齢は82歳で日本から参加した若宮正子さん、そしてその間を埋める5300人のアプリ開発者、周辺機器開発者、システムインテグレーターが世界中から一堂に会し、MacやiPhone、iPad、Apple TVやApple Watchなど、Apple製品に関する今後の動向について学ぶイベントだ。今回は2時間強の基調講演で新カテゴリーの製品である「HomePod」を含む、膨大な数の発表が行われた。

【HomePodとは】

 すべてを紹介しては長大になるので、まずは開発者でなくても楽しめる最新の傾向を筆者の視点でピックアップする。

●HomePodで家での音楽の楽しみを再発明

 WWDCの基調講演は毎回笑いを取るビデオで始まる。WWDC 2017ではApp Storeのサーバーを管理する人が、うっかり電源を落としてしまったことで世界中のiOS機器からアプリが消え、世界が大混乱に陥るというコミカルな内容だ。この映像はわずか9年前に誕生したApp Storeが世界中の人々にどれだけ多くの新しい習慣を作り出してきたのかうまく表している。

 ビデオ上映後、登壇したティム・クックCEOは「今日は6つの発表がある」と語ったが、実はその6つの項目のいくつかは、その中に何十もの発表が詰まっており2間強の基調講演は情報に溢れていた。

 すべてを1本の原稿にまとめると読み切れない人も多そうなので、基調講演とは逆の時間軸で、まずは今回発表されたハードウェア製品の話題から振り返りたい。1つ目は基調講演でトリを務めた新ジャンル製品、HomePodだ。

 HomePodは「家庭での音楽の楽しみ方を再発明する」新しいスピーカーである。2017年12月に米英豪の3カ国で販売が始まり、米国での価格は349ドル。本体には6個のマイクが内蔵され、Siriを使って音声操作ができる。

 すでに米国ではいくつかのIT企業が販売しているスマートスピーカーのようだが、これらと異なるのは第1の用途をリビングルームで音楽を楽しむ習慣を蘇らせることに重点を置いたことだろう。このためHomePodは徹底して音質にこだわったようだ。

 7個のビームフォーミングツイーター、上向きのウーファーなどAppleが新たに取り組んだ音響部分の設計もさることながら、部屋のどんな場所に置かれたかを検知して、耳に直接届く音、壁に反射して届く音などを、搭載された強力なプロセッサ、カスタムA8チップで計算して没入感のあるサウンドを生み出すという。さらに2台設置すればそれらを連携させてより立体感のある音を作り出すこともできる。

 「Hey Siri」と呼びかけると、上部にSiriが聞き耳を立てていることが分かる波のアニメーションがふんわりと現れる。声の命令で4000万曲以上が登録されたApple Musicの音楽を再生できるほか、メッセージを送信したり、スポーツを含む最新のニュースや天気予報を聞いたりすることもできるし、HomeKitに対応した照明や空調ならSiriに話しかけて制御できる。

 HomePodを紹介したフィル・シラー氏は「ホームスピーカーのブレイクスルー製品」と話し、その重要ポイントを3つ挙げた。1つ目は「家全体をノリノリにさせる」くらいの良質なスピーカーであること、2つ目は空間を認識していること、そして3つ目はMusicologist、つまり音楽のソムリエのように聴きたい音楽をうまく選んで再生してくれる存在であることだ。

 HomePodでは、利用者のプレイリストなどを参考に曲を再生できるほか、「Hey Siri、この曲いいね」と語りかけると、好みを学習してユーザーが喜びそうな曲選びの参考にする。

 残念ながら発売がまだ先の製品ということもあり、自慢の音を試聴することはできなかったが、誰でも輪郭の絵を描けそうなシンプルな形状なのに、凛とした存在感とディテールに注目すればするほど、細かな作り込みが浮かび上がる外観はなんともAppleらしい。内側から光が透けているかのようにフワっと浮かび上がって表示される上面のSiriの波模様の表示も美しかった。

 HomePodは今のところ日本での発売が未定であり、日本語の公式Webページも存在しないが、より細かい情報は米国のWebサイトでなどで確認できる。

●新型iPad ProとiOS 11はiOSの使いやすさとパソコンの使い勝手を融合

 基調講演では、10.5インチおよび12.9インチの新しいiPad Proも発表された。10.5インチはこれまでの9.7インチのiPad Proを置き換える新サイズだ。画面の大きさは20%も広くなっているが額縁部分が狭くなっているため本体の大きさは約7%増えただけ。重さは9.7インチのiPadよりモデルによって少し軽いくらいだ。

 この新型iPad Proの最大の特徴は高精細なRetina DisplayにProMotionという技術を採用したことだ。これは映画を観ているとき、メールを読んでいるときなど、画面に表示されている情報の種類などに応じて、画面の描画速度を自動的に調整する機能のこと。最大毎秒120コマで画面表示を動かすことができる。

 これは通常の液晶ディスプレイの約2倍で、その分、画面上の動きも滑らかになる。またApple Pencilでもより滑らかな描き心地を実現できる。実際、その反応速度は業界最高水準の20ミリ秒になり、これまでよりさらに自然で滑らかな描き心地を実現するという。

 もっとも、秒間の画面描き換えが多ければ多いほどバッテリーの消費も激しくなる。そこでProMotion技術では、例えばメールを読んでいるときなどは毎秒24回ほどに、映画などを観ているときは映画のコマ数(毎秒24コマ)の倍にあたる毎秒48回程度にまで落としてバッテリーを節約する。

 カメラはiPhone 7と同様に背面に12メガピクセルの光学式手ブレ補正機能付きカメラ、前面に7メガピクセルのFaceTime HDカメラを搭載。4つのスピーカーを内蔵し、迫力の大音量を実現するのに加え、持つ向きに合わせて左右スピーカーが自動的に切り替わるなどの特徴はこれまでのiPad Pro通りだ。

 搭載プロセッサは6コアのCPUと12コアのGPUを内蔵するA10Xで、従来のiPad Proと比べてCPU性能で30%、GPU性能で40%高速になっている。このほか、付属品やアクセサリもよくなっている点が目を引く。付属の電源アダプタがUSB-C仕様になり、充電時間が従来の半分になった。さらにカメラアダプタやSDメモリーカードリーダーといった周辺機器も転送速度が大幅に向上している。さらには新色も登場したスマートカバーにApple Pencilのホルダーが用意された。

 しかし、何と言っても大きいのはiPad Pro用の純正キーボード、Smart Keyboardに「英数」や「かな」キーがついたJIS仕様の日本語キーボードが用意されたことだろう。これにより日本語と欧文が混じる文章の執筆が大幅に快適になりそうだ。これだけでも十分に魅力的なiPad Proだが、この秋にリリースされる予定の新OS、「iOS 11」を使うことで、さらに魅力が大きく開花する。

●iOS 11に詰め込まれた充実のiPad機能

 iPhoneでも恩恵が受けられるiOS 11の進化の詳細については別の記事で触れるが、実はiOS 11はiPad専用の機能も多数盛り込まれていることに注目したい。ここではiOS 11でiPadの利用がどれだけ快適になるのか動画を交えながら紹介しよう。

 まずはアプリの操作中でも画面の下から上に指をはじくと現れるようになった新「ドック」だ。ドックにはよく使うアプリのアイコンを登録しておき簡単に切り替えることができる。iPadの画面の大きさを生かして、これまでよりもたくさん項目を追加できるようになっている。

 このドックをさらに上にドラッグしていくとSpacesというモードになる。作業中の画面が縮小表示されて、他の起動中アプリの縮小画面の一覧表示が現れ、簡単に1つのアプリからほかのアプリへと切り替えができる。

 iPadでは、スプリットビューといって画面の左右を分割して、メールとメモ帳など2つのアプリを同時に表示させておくことができるが、このアプリの組み合わせ表示の状態もセットのまま切り替えできる。

 さらには選択した文字や画像、インターネットのリンクなどを指でドラッグして別のアプリに複製するドラッグ&ドロップ操作にも対応。Spacesを介して異なるアプリ間でも情報の複製移動が可能になって、まるでパソコン並みに情報編集の使い勝手が上がっている。このドラッグ&ドロップ操作はマルチタッチドラッグ&ドロップと呼ばれており、左右両手の2本の指を使って、ドラッグ移動する項目を簡単に追加したり、アプリをさらに手早くドックから切り替えたりもできる。

 メモアプリでは、手書きした英語を文字認識して、手書き状態のまま検索できるようになる(日本語への対応は現時点で不明)。メモ中に手書きの絵などを挿入する操作も簡単だ。

 さらにメモアプリには、こんな機能も追加された。紙の書類を撮影すると、少し歪んでいてもスキャンした書類のようにきちんと形状を補正してくれる機能がつき、紙の契約書などを簡単にiPadに取り込んでApple Pencilでサインしてメールすることが可能なのだ。

 同様に画面のスクリーンショットを撮ると、それが一瞬画面左下に表示されるので、それをタップして拡大表示してメモを書き込んだりもできるようになる。

 iCloud上の書類をフォルダ仕分けやラベルをつけて管理できる「Files」というアプリもiOS 11の登場を待たずにApp Storeで提供が始まっている。iCloudだけでなくDropboxなど他社のクラウドストレージにも対応しており、サービスをまたいでラベルづけなども可能だ。こうしたアプリやiOS 11を組み合わせれば、この秋以降のiPadでは、マルチタッチやApple Pencilによる操作という従来のiPadらしい操作方法と、パソコンに負けない効率的なファイル操作や編集作業が両立できるかもしれない。

 なお、詳しくは以下の動画を参照してほしい。

最終更新:6/7(水) 18:47
ITmedia PC USER