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なぜ?銅像に帽子やシャツ次々 岡山県内、悪ふざけか優しさか

6/7(水) 8:10配信

山陽新聞デジタル

 帽子やシャツをまとう彫像が今年、岡山県内の街頭で相次ぎ目撃されている。悪ふざけか、それとも寒さや日差しを気遣う優しさか。管理者らがイベントや地域のPRで活用されるケースもある一方、識者らからは「制作の意図に反する恐れがある」と、静かに見守るよう求める声が上がる。“景観論争”の渦中にいる「街角のアート」を取り巻く人たちの思いとは―。

 1日のJR岡山駅東口広場。岡山ゆかりのキャラクターとして観光客らを迎える桃太郎像(高さ約1・7メートル)が、サッカー・J2ファジアーノ岡山のえんじ色のTシャツ姿でお披露目された。

 お供の犬は首にタオルマフラーを巻き、猿は手にフラッグと“ファジグッズ”で彩られた。「写真を撮ってSNSに投稿すると話題になりそう」と、像を眺めていた岡山市東区の会社員男性(20)。

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 この桃太郎像の所有者は岡山市。1日の「岡山市民の日」と3日の市主催ホームゲームのアピールが目的だったが、彫像に無断で手が加えられるケースは後を絶たない。

 岡山駅から東に延びる桃太郎大通り。列島を寒波が襲った1月、沿道に立つ高さ約80センチのブロンズ像「ももたろう」2体の頭に、それぞれピンクのニット帽と、黒いタイツがかぶせられているのが相次ぎ見つかった。

 JR備中高梁駅前では1月末、建立され、数日後の除幕式を控えた儒学者山田方谷の銅像(高さ約1・6メートル)に陣笠(じんがさ)が載せられた。顎ひもも締めてあったとされる。

 管理者の対応は異なった。

 ももたろう像のニット帽は岡山市が「作者の思いが込められた作風を勝手に変えるべきではない」(北区維持管理課)として撤去。ところが、方谷像の陣笠は高梁市が「市民の温かい気持ちの表れ」(秘書政策課)と受け止め、除幕式の日まで撤去を見合わせた。

 当の制作者の思いは複雑だ。ももたろう像の作者は日本芸術院会員の彫刻家蛭田二郎氏。裸の小さなその像の首にはかつてマフラーが巻かれ、自ら取り外した経験がある。「時代を超え、感受性に響いてほしいとの願いを込めて像を裸にした。服を着ると『特定の時代』から抜け出せない」と述べ、こうした行為に異を唱える。

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 街角の彫像を巡っては岡山駅の桃太郎像と同様の活用例がある。滋賀県の信楽高原鉄道信楽駅前に立つ巨大タヌキ(高さ5・3メートル)は2年前から衣装をまとうようになり、4月には桜の絵柄入りセーラー服姿に。「狙いはタヌキの置物で有名な信楽焼の魅力発信」と地元観光協会。

 公共スペースの作品について都市の景観に詳しい岡山大大学院教育学研究科の橋ケ谷佳正教授は「制作者の意図をまずは大切にすべきであり、制作者と管理者が作品をどう扱うか『決まり』を明確にしておく必要もある」と指摘する。

 「作品の一つ一つには『○○のような街にしたい』との思いが込められているはずだ。衣類などを無断でまとわせる行為が相次ぐのは、市民の理解が十分に得られていない証しかもしれない」と教授は言う。